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ラーメン-3 日本のラーメンがものすごい進化を遂げている件(後編)

前回はラーメンのスープに着目して、ここ20~30年の進化の実際を書きましたが。今回は同様に進化しているラーメンの麺について考えてみましょう。 

大きく変化しているラーメンの麺

 一般的にラーメンは麺とスープで構成されています。プラスとしての具材もありますが、主役はあくまでも麺とスープですね。
 ラーメンの進化の初期段階では、麺にはあまり関心がなかったようで、スープでの新たな展開が中心でした。
 しかし私はそば好きということもあり、かねがねラーメンもそばと同様、麺にもこだわってほしいものだと思っていました。
 
  それが、つけ麺ブームの頃からでしょうか、麺が新たな進化を遂げるようになってきたのですね。つけ麺ではメニューの特性上麺が主役になるので、これまでとは違う、それ自体がおいしいと思えるような麺の開発がなされていきました。
 同時に先んじて進化していたスープに引っ張られるようにして、麺が次なる進化(差別化)の対象になったという側面もあるでしょう。
 

自家製麺の店の台頭

 ラーメンブームに拍車がかかってゆく中で店のこだわりが麺に向かうと、自家製麺をする店が徐々に増えてきました。
 それまでは、製麺所が作っているラインナップの中から選んで使うのが一般的でしたが、それに飽き足らず、より理想の麺を求めて自分で製麺する人たちが各地に現れてきたのです。
 それに呼応するように、製麺所側でも既製品(レディメイド)のラインナップを増やすとともに、店の細かな注文に応じる特注品(オーダーメイド)にも積極的に対応するようになりました。
 そして流通の発達により、ラーメン店は全国どこからでも麺を仕入れられるようになり、製麺業者もしのぎを削って、よりうまい麺の開発に力を入れるようになったのです。ですから今では全国に名を馳せる製麺所もたくさん存在します。
 

質の良い中華麺用国産小麦

 ラーメンが多種多彩になると、麺は太さや加水率に幅が出て、使う粉も違えるなど、バリエーションが広がっていきました。そしてスープとの相性を考慮しながら、麺の使い分けがなされていきます。
 
 近年のトレンドは、加水率が低くて歯切れのいい「ぱつぱつ」の中細麺でしょうか。低加水麺の場合、小麦の味や香りがより楽しめるのが大きな特徴です。
 ラーメンの麺は小麦粉を材料とし、かん水を使うことでうどんとは違う独特の食感が作られます。しかしかん水は時代とともにあまり好まれなくなったようで、その使用量は以前よりは控えるようになっています。
 
 ラーメンの麺がおいしくなった最大の要因は、より良質の粉を使うようになったことでしょう。
 日本で作っている小麦は、日本の食文化上うどんに使う中力粉用の中間質小麦がほとんどだったこともあり、以前の中華麺は安価な輸入小麦が中心でした。
 しかし近年はラーメンやパンに向いている強力粉(準強力粉)用の硬質小麦も栽培されるようになり、店でも積極的に使うようになりました。そして今ではそばと同じように、小麦の品種や産地を掲示している店もあるほどです。
 
 船の長旅で高温にさらされながら日本に入ってくる外国産小麦と違い、国産小麦は米やそばと同様、温度管理のなされた倉庫で保管されて、劣化することなく品質が保持されています。
 このあたりの事情は、そばによく似ていると私は思っています。手打ちそば店では国産は当たり前で、その中でも選りすぐって産地を選んでいることを考えると、ラーメンの麺はまだまだおいしくなる余地があると思いますね。
 

昔ながらのラーメンって何?

 さてラーメンの進化についてですが、よく醤油のラーメンを指して「昔ながらのラーメン」と表現する人がいますが、私はその言葉に違和感を覚えます。
 確かに見た目はそうかもしれませんが、味に関しては大抵の場合、まるで違うものであるはずです。これまで話したように、今はスープに大量の材料を使い、麺も以前とは違うものが主流になっているからです。
 昔ながらのラーメンという場合、ある種のノスタルジーにより、当時おいしいと思った記憶も付加されていますが、実際には今のラーメンのほうがはるかにうまいものでしょう。
 ついでに話をすれば「あっさりとした」と表現される醤油系のラーメンでも実際には、だしが濃厚でくどさを伴っている場合が結構ありますね。

(#009 2023.10)

 

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