見出し画像

ラーメン-1 縮れ麺はスープがよく絡むだなんて、誰が言ったの?

これまでラーメンの縮れ麺は、スープの持ち上げがいいなどと、さも世間の常識のようにいわれてきましたが、本当のところは全く根拠のない俗説でしかありません。そして縮れ麺よりも「細いストレート麺」の方が、はるかにスープ絡みがいいというのが真相、というお話です。
 

麺とスープ絡みの本当の関係

 ラーメンの縮れ麺は「スープがよく絡む」あるいは「スープの持ち上げがいい」といったことが、今でもSNSやネット記事で当たり前のように語られています。いつからそんな話になったのでしょうか。誰が言い出したのかはわかりませんが、縮れ麺がスープ絡みがいいというのは全くの俗説であり、実際には「細いストレート麺」の方がスープをよく持ち上げてくれるのです。
 
 このことに関してはエビデンスがあり、10年以上前にNHKBSで放送した「アインシュタインの眼」という番組で実証実験をしていました。またネットで調べると日本テレビの「所さんの目がテン!」でも同様の検証をやっており、縮れ麺ではそれほどスープは絡まないという結論を出していました。
 
 麺がスープを持ち上げるためには、麺と麺の間に「狭い空間」がなければなりません。そしてスープが表面張力の働きで麺の間に張り付いた状態となり、重力に逆らってスープが麺と一緒に持ち上がるのです。これは「毛細管現象」の原理によるものと考えられ、麺が細いストレートのものでこそ起きるのです。
 問題の縮れ麺の場合、麺の間に大きな隙間ができてしまうので、麺を持ち上げてもスープは重力で簡単に落下してしまうのが実際なのです。
   
 つまり縮れ麺がスープによく絡むというのは根拠のない俗説なわけですが、そもそも麺にスープが絡むとか絡まないとかって、何のメリットデメリットがあるのでしょう? 仮にスープが絡まないとしたところで、私は不都合を感じたことがありません。ラーメンにはレンゲがついているわけですから、味が足りなければスープを飲めばいいだけのことですね。
 

 私は日本そばも好きなので、細いストレート麺がスープを持ち上げるという話はよく分かります。冷たいざるそばでは、つけ汁を麺が一緒に持ち上げてくれなければ味の調和が成り立たないわけですが、細い麺の間につけ汁が絡んでいるので問題ないわけです。そしてそばの場合、100%ストレート麺ですね。
 同じことはラーメンのつけ麺にもいえます。つけ麺もそば同様スープを持ち上げなければならない食べ物であるはずなのに、縮れ麺はほとんど見たことがないでしょう。縮らせる必然性がないからです。
 ただし、大抵のつけ麺は太麺であるため、毛細管現象があまり働かないので、スープの粘度を高めることによって麺に絡めるようにしているのです。
 

麺がすでにスープを吸っているという現実

 さて「アインシュタインの眼」では、さらに続きの話がありました。それは、ラーメンではそもそも「麺がスープを吸っている」という事実です。これも実証実験をしていました。
 ラーメンの麺は、温かいスープに入れられた時点からスープを吸ってゆきます。それは時間がたてば麺が伸びてふやけてしまうことを考えればよくわかるでしょう。
 実はラーメンが提供されたとき、すでに麺がスープを吸っています。特に醤油の色が濃いスープでは、麺が茶色っぽく染まっているのでよくわかると思います。麺がスープを吸っているということは、麺に味がついているということを意味します。ですから、スープの絡みがいいとか悪いとかは、ほとんど意味をなさないのです。
 ちなみに加水率の低い麺ではスープを吸いやすく、加水率の高い麺は吸いにくい、つまり伸びにくい性質があります。

 こうしてみると麺とスープの持ち上げに関しては、通常のラーメンではなく、つけ麺でこそ論じられるべき話のようです。

 つけ麺は最後まで麺が伸びていない状態で食べることを目的に、麺とスープが別々に提供されます。そして先ほど話したラーメンのように、麺がスープを吸っていないので、麺がスープを持ち上げる必要があります。そして食べた時の味がちょうどよくなるように、麺の太さに合わせてスープの濃さと粘度を調整しなければならないので、その点がなかなか難しいようです。
 ですからつけ麺では麺に軽く味をつけて製麺したらどうなのだろうなどと考えたりしますが、これは単なる素人の思い付きなどで、どなたか検証してみてくださいませ。

 このようなラーメンに関する俗説はまだまだありますが、それらはまた機会をとらえて話したいと思っています。
 いずれにせよ、巷でいわれていることや、人から聞いた話を鵜呑みになどしないで、自分の頭でも考えてみることが大事だとは思います。ラーメンに限った話ではありませんが。

(#002 2023.07)
 


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?