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コンサル1年目でいちばんうれしかった仕事が私の原点だった

そのプロジェクトは科学技術のリサーチでした。

すごくざっくりいうと、情報系の先端技術を分野ごとに調べて取りまとめるというもの。

その数、ざっと40分野。

バリバリ文系の私は気がくるいそうでした。。

まず専門用語がわからなくて苦労しました。その上、まだ実用化されていない技術分野も含めてリサーチの対象になっていたので、調べても情報自体がかぎられていたりします。

なんとか基礎知識を自力で学び、研究者の方にお話を聞いて、調査を取りまとめました。

当時の私は社会人1年目が終わるころ。自分のつくったスライドや報告書が少しずつお客さんの前に出るようになっていた時期でした。

そんな私の状況をみて、上司が報告書の大部分をまかせてくれたんです。

いま思えばそこまで大きなプロジェクトではなかったですし、お客さんとは信頼関係ができていたので、まかせても問題はなかったのだと思います。

でも私はすごくプレッシャーを感じていました。自分が責任を持ってデリバリーするなんてまだまだ早いと思っていた。その上、テーマはまったくなじみのない科学技術なわけです。

でもとにかくやるしかないと思い、当時の自分なりに必死にやりました。

結果的に、上司に突っ込まれながらもなんとか取りまとめ、お客さんにも無事報告ができました。

最後にお客さんからお礼を言われたときのこと。

「佐藤さんって文系だったんですね!」とすごく驚かれたんです。

お客さんは、私のことをずっと理系だと思っていたのだそうです。どこかでプロフィールをみて文系だったことを知って、とても驚いたとおっしゃっていました。

このひと言が、もうめちゃくちゃうれしくて。

キャッチアップするのに必死だったけど、お客さんからみたらもともと技術に詳しい理系の人にみえていた。

もちろん私が調査したレベルなんて、専門家の方からしたらめちゃくちゃ浅いです。そもそもこのプロジェクトでは「広く浅く」調査して、「詳しくない人にもわかるように」説明することが求められていました。だからべつに大したことはしていません。

でもとにかく、お客さんが求めることに応えることができて、ある程度専門性のある人として信頼してもらうことができた。

こんなにうれしいことはなかったし、ものすごく自信になりました。

仕事のやりがいってなんだろう?

この調査のプロジェクトが世の中にどんな影響を与えたかと言われたら、たぶん特に影響は与えていないと思います。

お客さんの売上が直接伸びたわけではないし、なにか新規事業が生まれたわけでもない。もしかしたらその後、内部で何か効果的に使われた可能性はあります。でも私がそれを知ることはできません。

そういう仕事には意味がないのかもしれません。実際に私もコンサルティングを続ける中で「このプロジェクトをやって世の中にどんな影響があるんだろう」と悩むこともありました。

でもそんなとき「文系だったんですね!」の一言を思い出すんです。

それで「私にはこれで十分なんじゃないかな」って。

それなりに本気でがんばって、目の前の人の役に立つこどができて、個人名で感謝してもらえる。がんばるのはもちろんストレスもある。「寝食も忘れるくらい好き!」なんてことはぜんぜんない。

だけど、けっして嫌々やってるわけでもない。

私にとっての「やりがいがある仕事」って、そんな感じなんです。

すごく内向きで、自分本位だと思います。志も低いです。

でも、何にやりがいを感じるかは人それぞれでいいんじゃないかな。

あのとき「文系だったんですね!」と驚いてくださったお客さんの言葉を思い出すと、私は仕事をする上での初心を思い出します。

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