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"コンサルタント" をやめてみたら、逆に社長と話しやすくなった

ーー”コンサルタント” の看板を下ろしたい。

そう思って、休職してみることにしました。
1年ほど前の話です。

私はいま、コーポレイトディレクション(CDI)というコンサルティング会社で働きながら、編集者集団WORDSで副業をしています。

副業という働き方になる前に、コンサルティング会社を半年ほど休職して休息と考える期間をつくりました。今日はそのときの話を書いてみようと思います。

正しいことを正しく言っても伝わらない

休みたいと思った背景には、コンサルタントという職業の将来性への懸念など様々な想いがありましたが、結局のところ、少し疲れてしまったというのがメインの理由です。
(念のためですが、体やメンタルの不調は全くなく、病気のような深刻なものでは全くありません)

コンサルタントという仕事は、企業の課題を解決していく仕事です。経営者と直接コミュニケーションを取ることも多いです。

若手の頃は、チームリーダーやクライアントから与えられる課題に対処していけば、それがそのまま成果につながることも多かったです。ですが、自分の責任の範囲が広がり、扱う問題も複雑になる中で、正しいことを言っても相手に伝わっていないと感じる場面が出てきました。

おそらく、それまでは課題に対して「正しい(と思われる)答え」を出せばよかったのが、それを相手に腹落ちさせることまでを求められるようになったのです。そこに対して自分の限界を感じることがありました。

正しいことを正しく言うだけでは伝わらない。

普段の生活で考えればものすごく当たり前のことですが、「正しい答え」を出すことを仕事としてやってきた自分とっては、それを頭では理解できていても、心からは理解できていなかったのだと思います。「正しい答え」の伝え方の問題もあれば、答え以前に「問い」を共有するというプロセスの問題もあります。いずれにせよ、自分の力不足が原因です。

そんな中で、正しいことを言い続けることに対して、少しエネルギーが切れしまったのです。


見切り発車で休職してみた

私は元々あまり計画をしないタイプなのですが、その当時は少し消耗していたこともあり、ますます将来について考える余裕がなくなっていました。

そんな中で会社の先輩になんとなく退職の相談をしたら、


先輩「それは別にいいけど次にやることは決まってるの?」

私「いや何も決まってないですとりあえず休みたいです」

先輩「やめるならさすがに次が決まってからにしたら?汗」

私「たしかに!超正しい!」


という感じで、次に何をやるか全く決まっていないならわざわざ退職する必要もないと思い(保険などの手続きも面倒ですし)、まずは一旦休職することにしました。

といっても、会話の中で3分くらいで決めたことですし、すでにコロナが広まっていたので世界一周自分探しの旅に行けるわけでもなく、全く無計画でスタートした休職でした。まあ、転職活動でもするんだろうな、くらいに思っていました。


からっぽになると、何かやりたくなってくる

休職に入ったのはちょうどコロナの緊急事態宣言の頃だったので、何もできず、かえっていい休息になりました。テレビやSNSをみて疲れてしまうこともありましたが、静かに世の中の動きを観察するにはとてもいい機会でした。

からっぽの期間を数週間、数ヵ月と過ごしていると、さすがに何かを始めたくなってきます。主なものとしては、次のことをやりました。


①コピーライターの勉強をした

元々好きだった文章の勉強をしたいと思い、それなら言葉の勉強だろうと考え、これまた思いつきでコピーライター養成講座を受講しました。

せっかくなら本格的な方がいいと思い、現役のコピーライターの方も通う講座に応募したら素人はほぼ私のみ。かなりの時間を割くことになり、付いていくのが本当に大変でした・・・。

その甲斐あって、学びの内容は本当に濃かったです。今まで会ったことのないタイプの才能あふれる人たちに囲まれて、今までと全然違う頭の使い方ができ、すべてが新鮮でした。世界旅行ができなくても、初めての世界にどっぷりつかる経験はできるんだなぁと思ったり。ここでの学びは、またどこかで文章にまとめるかもしれません。


②アシュタンガヨガの練習を始めた

アシュタンガヨガとは、ヨガの流派の一つです。運動量が多めなのと、最初から最後までポーズの順番が決まっていることが特徴です。ちょっとトレーニングっぽい感じもあります。

見ていただいた方が早いかもしれません。
(これは練習用動画ではないので決して真似されないように・・・)

私の場合、休職中はほぼ毎日1時間強やることを習慣にしてみました。そうすると、体にも心にも様々な変化がありました。この話も別途まとめてみようと思います。


③「顧問編集者」をやってみた

今日の話は、これがメインです。前置きが長くてすみません。

「顧問編集者」というのは、いま私が副業でかかわらせていただいているWORDSの竹村俊介さんがやられている仕事です。企業に顧問弁護士が付くかのように、編集者が顧問として付き、経営者の思考を整理しアウトプットしていきます。

Twitterでこの活動を知った私は、大きな可能性を感じ、竹村さんとたまにお話ししていました。ですが、自分の会社の仕事もあったので、本格的にかかわることは考えていませんでした。文章を書くことは好きでしたが、編集の経験は全くなかったので、自分にできるかもわかりませんでした。

休職して時間ができて、少し落ち着いて先のことを考えたとき、やはり「顧問編集者」に何かしら関わりたいと思い始めました。そしてふと、自分にできるかな?ともやもや考えているくらいなら、せっかく時間もあるしやってみたらいいじゃないか、と思いました。(一応、竹村さんに許可を求めたら快くOKしてくださいました)

そこで、知人を伝手に会社を経営している方々にご連絡し、数名の方のお手伝いをさせていただきました。

今も個人的にご支援している方をご紹介します。

1人目は、朝田浩暉さん。タンザニアでエアコンのサブスクリプションサービスの立ち上げをされている、若きリーダーです。勢いとパワーを持ちつつも、大企業の論理を深く理解されていたり、古典への造詣が深かったりと、思考のバランスと深さにいつも驚かされます。

noteのほか、人事の考え方に関する社内向けの文章などもお手伝いさせていただいており、経営におけることばの大切さを実感させてもらっています。

2人目は、落合文四郎さん。人材育成の会社alueの代表をされています。企業のマネジメント層に向けた教育研修コンテンツ制作の一環として、noteでのアウトプットをご支援しています。

ビジネス的な思考に加えて、人材育成の理論や哲学などを深く織り交ぜた独自の理論は、非常に学ぶところが多いです。多くのリーダーの背中を押す内容ですし、私自身もコンサルティングの仕事やチームマネジメントの中で実践しています。

ほんとうの「答え」は相手の中にしかない

「顧問編集者をやってみた」ことによって、想いをことばで表現することの効果や難しさなど、様々な発見がありました。やはり実際にやってみると、当初の想定とは全く異なる意外な発見がたくさんあります。

その中で一番想定外だったことがあります。
それは、コンサルタントのときよりも自然に社長と話せたことです。

編集者の仕事は、相手から出てくるものをブラッシュアップすることです。編集者が自分の主張を文章に書くことはありません。対話の中で自分の主張をぶつけることはありますが、それは相手が本当に言いたいことを探ったり、深まっていない点を投げかけたり、より多くの人に伝わる方法を探ったりするためです。

相手から出てくるのを待つしかない。

このスタンスになれたことで、普通の会話をするように、肩の力を抜いて経営者の方々と対話ができたように感じました。

コンサルタントも同じく経営者と対話する仕事です。しかしながら、実は私はコンサルタントをやっていてこのような感覚になったことがありませんでした。

それはたぶん、答えは相手から出てくるのではなく「自分が答えを言わなければならない」という想いが強すぎたからだと思います。


コンサルタントは、企業の課題を解決する存在です。ですから、基本的にはコンサルタント側がいい提案(=答え)を出す存在です。

しかし一方で、人は本当に腹落ちしたことしか実行できません。いくら正しくても、ぽっと外から来た人に言われたら納得できないかもしれません。それどころか、その指摘が正しければ正しいほど、図星を突かれた気持ちになって反発したくなるかもしれません。それを時間を掛けながら腹落ちさせるのが、コンサルタントの腕の見せ所です。

そう、私が正しいことを正しく言ってもうまくいかなかったのは、心から納得してもらうことの難しさから逃げていたからでした。

顧問編集者が紡ぐのは相手の思考であり、それは相手から出てくるのを待つしかありません。コンサルティングも、基本は同じはずです。人は自分で見つけた答えしか実行できません。コンサルタントのような第三者ができるのは、それを見つける手伝いをすることだけです。

自分が思う答えを真正面から伝えることすら、相手が答えを見つけるための手段の一つでしかない。それ以外にも多くの有効なアプローチがあるはずです。むしろ、答えを「投げつける」ようなことがあれば、逆効果かもしれません。

もちろん、コンサルタントの基礎力として答えを出せる力は必要です。「答えを出さなくていいや」と諦めていいと言っているわけではありません。

ただ、私の場合は経験を重ねる中で「答えを言わなければ」という想いが行き過ぎて、もっと大事なものが見えなくなっていたのです。「"コンサルティング会社の社員" として成果を出さなければ」という気持ちも悪影響を及ぼしていたかもしれません。

要はバランスの問題で、「答えを伝える」「答えを待つ」の両方できる前提で、場面と相手に応じて行ったり来たりする力が肝なのだと思います。

「答えを言わなければならない」から解放されて以上のようなことに気付いた私は、このスタンスでもう一度コンサルティングに向き合ってみたいと思うようになりました。今度は "コンサルティング会社の社員" としてではなく、素の・生身の人間として、相手と対話ができる気がしてきたのです。まだまだ実績はこれからですが、コンサルティングの中での自分の心持ちは相当変わったと感じています。

以上の発見を通して、経営者のようにパワーのある人に対して、対話とアウトプットを通じて力になりたい。そのための手段として、コンサルティングと顧問編集者を両方やりたい。その気持ちがはっきりしたことで、コンサルティングを復職し、WORDSでも副業することを決め、今に至ります。


最後に、この話を書こうと思ったのは、「何となく今の仕事にもやもやしているけど行動を起こせない人の背中を押せるんじゃない?」と言ってくださった人がいたからです。

ぱっと休職できたのは、勤めている会社に多大な理解と余裕があったからです。そのような職業/会社の方がめずらしいかもしれません。また、しばらく生活できるくらいの貯金があったことも大きいです。要は、恵まれた人に与えられた選択肢だということです。

「いいご身分ですね」と言われて終わりかもしれない。それでも、一旦止まるのも意外といいものですよ、とお伝えすることでラクになる人がいたら嬉しいから、書いてみました。

休職なんかじゃなくて、もっと思い切った行動をバンバン起こせるタイプの人もいます。でも、そこまでするエネルギーが切れていたり、本当は何がしたいのかわからなくて、もやもやだけがある人もいるかもしれません。過去の私みたいに。

そんなときは、「一旦やめてみる」という戦略的撤退も有効な場合がある。これが、今回一番お伝えしたかったことです。やめてみることで見えてくるものもあるし、また何かを始めるエネルギーが自然にわいてくるかもしれません。今の私みたいに。


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