彼とわたしのー9ー

彼と私は結婚する事に決めました。
慣れ親しんだ家を出て、親、姉妹の元を去って行く。
望んでいた事なのに、私はマリッジブルーなるものに
とらわれていました。

「これでいいのか?後戻りできないぞ!
 後悔しないのか?決めていいのか?」・・・

彼の両親は喜んで、「早く結婚しなさい」の一言。
私の両親はと云えば、不安要素一杯の渋々の承諾でした。

そんな中で、ばたばたと確実に日は経ち、結婚式当日となり、
彼と私は「結婚の契約」にめでたく印を押したのでした。

そうして始まった新生活。
求人広告から急遽選んだ「型染友禅」と云う、法律家とは180°かけ離れた技術職に落ち着き、社宅住まい。
彼は9時から5時までのサラリーマン生活に突入していったのでした。

私はと云えば、慣れない見知らぬ土地に一人取り残され、
あちこち当てもなく見歩いて回るにも疲れて、
区切られた四角い部屋の四角い窓から、切り取られたみたいな空を眺めて
彼の帰りを待つ生活を繰り返していました。

けれどもそれも続く間もなく、身体に変化が起き始め、
私は”つわり”なるものを経験し始めたのでした。

日増しに大きくなるお腹を抱えて、まあこれ程までに膨らむ事の出来る
我がお腹に驚嘆し、日毎に重くなるお腹を支える肉の強靭さを尊敬しつつ
頻繁に襲ってくる不安をなだめながら、出産の日を迎えたのでした。

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