6月 「ありがとうございました。」 マリコは軽く会釈をしながらドアを閉めた。 「そうだ、エレベーターのボタンを押すときは第二関節で指の腹は使わないんだっけ?コロナの名残りだろうけど、なかなか良いアイデアだな。」マリコは右手をグーにして人差し指の第二関節を1階のボタンに当てた。 小雨が降り出していた、小豆が茹で上がった独特な香りが梅雨空と混ざり合う、小豆を茹でるとお湯は灰色になるのをマリコは思い出していた。 なんともスッキリしないのは空だけではなくマリコも同じだった。 「ふ