見出し画像

2023ファジアーノ岡山にフォーカス37『 交錯する思惑~流儀~ 』J2 第26節(H)vsV・ファーレン長崎


ビックフラッグを贈呈して下さったオーエムグループ様に感謝の気持ちを伝える岡山サポーター。

  岡山に携わるファジアーノ岡山ファミリー一帯となって戦っている。それでも一度も届いたことのない「頂」のリーグへの挑戦。可能性を信じて戦っていても、結果がでていない以上は、厳しい声が一定数でてしまう事は、仕方ない。ただ、そこと向き合いつつも、オーエムグループさんのように、最後はサポーターと共に前を向いていくしかないという結論に至ってしまうのもまた事実。それでも、筆者もレビュアーとして、これからもファジアーノ岡山と共に喜怒哀楽を経験しながら歩み続けたい、後押ししていきたい。

マウンテン丼(トルコライス)
チーズグリルチキン
スムージー(パイナップル)

 暑い中調理して下さっているファジフーズのスタッフの皆様には、本当に感謝の気持ちしかない。多くのスタッフの頑張りにより、ファジアーノ岡山の試合は、成り立っている。美味しいファジフーズを食べた後や暑い気候での観戦を通じての水分補給の徹底で、熱中症には、注意しつつ、最高の試合に、チームに期待して、試合の時を迎える。

雲がほとんどない久々の快晴、暑い夏がやってきた。

 日本の夏は、気温以上に湿度が高く、非常に危険である。世界的な流れもあり、日程を巡るカレンダーからJリーグの開幕時期を巡る議論が活発となり、日程の変更が現実を帯びつつある。簡単な問題でないことだけは確かであり、実際に議題が上がっては平行線を辿る問題であるが、この暑さを目にすると、早く秋が来て欲しいと願う。それだけ、この試合からより暑くなったのである。

 そして、試合結果も、またしても平行線となってしまった。試合数だけがどんどん進んでしまう事で、伸びない勝ち点に対して、膨らむ不満や失望。残り試合で、岡山が底力を発揮して、階段を登ることができるのか。長崎戦で見えた課題と岡山が進んでいる道について、今回のフォーカスで言及していきたい。



2023 J2 第26節 ファジアーノ岡山vsV・ファーレン長崎
2023/07/16/18:00kick off シティライトスタジアム

 全文無料公開。スキーやフォローや、購読などをして頂ける記事を目指しています。一人でも多くの方に読んでいただけると嬉しいです。


1、「活用」と「誘引」~中央~

両チームの選手が並ぶいつもの試合前の光景とセレモニーに関係した選手の家族の方やセレモニー関係している方の姿も見える。

 基本的に立ち上がりというのは、両チームのスタイルと対策の意図というのが、読み取り易い。この試合では、ある「エリア」を巡る「攻防」というのが、観ていて面白かった。

 その渦中にいたのが、41田部井 涼である。それは、どういうことかを説明する上で、岡山と長崎の狙いをまずは、説明していきたい。

 まずは、長崎であるが、誰の目でも明らかであったのが、長崎の選手は、岡山の選手と比べて、フィジカルで岡山を大きく上回っていることである。岡山もフィジカルを売りにしている選手もいるが、この面だけみれば、長崎の選手が、岡山を圧倒していた。

 ゆえに長崎としては、シンプルにフィジカルを活かすシーンを作っていきたい。逆に、パスを繋いで崩すという面では、岡山の方に分があったので、そこが活きる展開を避けたいという意向が、長崎の戦い方からは見て取れた。

 それは、長崎が中央を固め、岡山の中央を経由する攻撃を封じ、サイドに誘導していくことで、クロスやドリブルを選択させて、岡山の攻撃をフィジカルを武器にした守備で跳ね返して、長崎がカウンター気味に素早くクリアとも言えるロングパスや前方へのパスで、中央では強さで起点を作り、サイドではスピードで抉っていくという攻撃を主体に、岡山の守備の攻略していくという狙いが明確であった。

 一方で、岡山がどうであったかであるが、「繋ぐ」という事を主体としたメンバーである。守備が武器の選手がほぼ不在という事からもボールを保持していく中で、主導権を握っていく。試合を岡山ペースで進めて、最後は「個人技」で打開していくという狙いである。

 今季の岡山は、ここまで観てきて、思う事はメンバーを観れば、岡山がどういったサッカーで勝利を目指しているかというのが、明確に見て取れることだ。

「ポジション別の攻撃の主な狙い」
・2トップ(18櫻川 ソロモンと48坂本 一彩)の狙い
「間(空間やDFとMFの間のスペース)」で受ける事で、長崎の守備組織の攻略を図る。
・中盤(IH:44仙波 大志、14田中 雄大、AN:41田部井 涼)の狙い
「パス・キープ・ドリブル」を軸に、前を向く・前に運ぶことで、決定機を演出する。
・左サイド(WB:22佐野 航大、左CB:43鈴木 喜丈)の狙い
「パス」と「ドリブル」で前進し、ゴールに迫る。
・右サイド(WB:16河野 諒祐、23ヨルディ・バイス)の狙い
「クロスやロングパス」といった精度の高い右足で得点に繋げる。

 個性豊かな選手を効果的に起用する事で、多彩な攻撃ができる。ただ、自由な攻撃である分、ロングパスも少なく、サイドから徹底することがないことから、岡山としては、やはり「中央」を有効に「活用」していきたい。このように、「サイド」攻撃に「誘引」して、「フィジカル勝負」に持ち込みたい長崎と「中央」を有効に「活用」していきたい「岡山vs長崎」の構図ができあがる。

 この長崎のアバウトな前方へのパスが収まったり、セカンドボールを長崎が回収したシーンの多くで、そのままドリブル→クロス→シュートという流れに持ち込まれていた。その守備対応で、41田部井 涼が中央を離れて対応するというシーンが多く、実は、2失点ともセカンドボールを回収できる形に持ち込めず、41田部井 涼がクロスや突破を防ぐために、長崎のフィジカル勝負のドリブルの対応に回っていた。

 逆に先制点のシーンでは、41田部井 涼が、ボールを落ち着かせて、CBの攻撃参加を促すバックパスで、23ヨルディ・バイスの攻撃参加の流れから先制点を生み出した。同点に追いついた14田中 雄大のゴールもゴール前に走っていて、シューこそがミートしなかったが、軌道が変わった先にいた14田中 雄大のゴールとなり、結果的にアシストとなっている。

 その4得点と41田部井 涼との関与の仕方を簡単ではあるが、そのシーンから始まる状態で張り付けている公式動画とコメントで紹介していく。

 123秒からのハイライトの公式動画は、先制点のシーンから始まります。映像にこそ41田部井 涼は、映っていないですが、この23ヨルディ・バイスの攻撃参加の流れは、41田部井 涼がセカンドボールを回収したところから始まっている。

 182秒からのハイライトの公式動画。22佐野 航大のボールロスト後に「中央」にボールを入れられた時に、岡山が巧く対応できず、毀れ球を回収の流れではなく、ドリブルを止める対応になってしまった。41田部井 涼も不得意な守備対応で、32ジョップ・セリンサリウのクロス(ラストパス)を防ぐことができなかった。

 233秒からのハイライトの公式動画。高さで起点を作られて、そのままサイドを抉られる。ここでも41田部井 涼がフォローに行くもクロスを防ぐことができなかった。遅くて弱くても、粘り強い対応で守備は改善する。引退された関戸 健二 元選手のように、こういった所で粘り強く対応できるかどうか。まずは、献身的に守備する事から、守備は始まる。

 321秒からのハイライトの公式動画。岡山の攻撃からの毀れ球をどちらが拾うかというシーンで、41田部井 涼が、回収して自ら前にいき、後ろに逸らしたパスに反応すると、シュート(もしくはパス)で14田中 雄大のゴールのアシストを記録。セカンドボール回収後に思い切って、前に行けるのが、41田部井 涼の魅力。

 両チームの全得点の場面を意識して観て見ると、41田部井 涼が、重要な役割を担っていたことが良く分かる。怪我などのアクシデントもあって巡って来たチャンスでもあるが、攻守でのバランスの良さや運動量で、ここに来て、実力で掴んだ出場機会とも言える。

 以前、41田部井 涼の武器が欲しいと言及したことがあるが、「ゴール前に飛び込める積極性」「決断良く守備対応できる」「豊富な運動量」などは、41田部井 涼の成長と共に手にした武器となった。

 後は、本来ケアをすべき中央での壁となれるか、そして、サイドに流れた時の守備対応で奪い切ったり、クロスをブロックできるようになるかだ。41田部井 涼の守備によって防げたというシーンも増えてくれば、もう一段上のステージでプレーできる選手になれる可能性を秘めている。

ファビオ・カリーレ 監督(長崎)
「相手の特徴から想像していたとおり、やはり競り合いの多い試合になりました。」

J.LEAGUE jp (Jリーグ公式HP)
J2 第26節 岡山 vs 長崎(23/07/16)試合後コメント(監督)
より一部引用。
URL:https://www.jleague.jp/match/j2/2023/071612/coach/

2、チームの方針~長崎編~

2023 J2 第26節 V・ファーレン長崎イレブン

 長崎の指針は、戦い方からも内容からもチームの進んでいる道というのは明確だ。速さ・高さ・強さといったフィジカルの強い選手を揃えて、サッカーの個の力で勝っていく。J2でも増えたフィジカルの強さを全面に出して戦うチームに対して強く戦えるチームとなった。

 中でも特に印象的であるのが、秋田に対しての4得点の試合だ。あの秋田のスタイルでさえ、J2のチームによっては、完敗のような試合に持ち込まれるという驚きの結果であった。ただ、その長崎でも町田に対しては、苦しんだ。

 個人技やフィジカル勝負に持ち込んだ時に、個で勝てなかった時にどう勝利への道筋を作っていくのか。そこが、長崎が「頂」に到達するために、現方針での唯一足りないことかもしれない。

 この試合で、得点を決めた32ジョップ・セリンサリウは、まだ20歳ながら、195cmの長身を活かした高さは、大きな武器になっていて、岡山の屈強なDF陣に対して負けていなかった。日本人ということで、将来の日本代表の可能性も十分ある。

 守備が安定しない理由としては、ボールを落ち着かせることができない事にあるだろう。リードされている時に一番嫌なことは、相手にボールを保持されて、ボールを奪いに行って、カウンターで失点してしまうことだ。

 そこに特徴のある選手が、長崎には少なく、どうしてもクリアが第一選択肢となる。ボール保持できるチームでもパワープレーや攻撃に人数をかけた状態でのボール保持は、難しくなってオープンな展開となることが多いが、クリアが巧くいかなかった時に、事故的に失点してしまうシーンが生まれる可能性は、ボール保持できるチームに比べて、どうしてもパスの選択肢が少ない事で、ボールロストの機会が増える事で、危険性は高くなってしまう。

 どこのチームでもそうであるが、90分間通して、フィジカル面でアドバンテージをどう保つかというテーマは重要であり、難しい課題だ。また、長崎のサッカーの狙い通りにフィジカルで勝てている時に、どう結果に確実に繋げていくのか。そこのディティールの部分を詰めていっている(試行錯誤を繰り返している)チームに感じた。

 夏場の補強で、総合力の高さのある選手を獲得することで、チームの安定感を高めるのか。それともチームカラーに則した選手を獲得することで、チームとしての武器を強化するのか。その辺りは、ライバルチームとして気になるところだ。

 少なくともサイドをスピード勝負な岡山であっても、中央で抑えることができれば、まだ対応できる。しかし、岡山が前ががかりになってボールロストした時に、長崎にクリアやロングパスによって、素早く背後の中央で、起点を作られてから、サイド攻撃という流れで攻められると、難しい対応(スペースが空いた状態での守備対応)を迫られてしまう。この狙いによって、岡山としては、非常に嫌な形での攻撃に苦しめられた。守備で、岡山の強みを出し切れなかった試合。それが、この長崎戦となった。

 また、同時に、J2というリーグは、様々なタイプのサッカースタイルを高いレベルまで高めたチームが増えて、同じチームが、勝ち続ける事の難しさを特に感じるリーグになりつつある。三竦み(さんすくみ)の関係(じゃんけのような関係)のように、大きな連勝が難しくなっている。

 1チームだけ、元日本代表の獲得に動いているニュースが出たり、開幕前に現役のオーストラリア代表の選手を獲得するなど、規格外のチームを作ってきている1チームは、例外としてもJ2は難しいリーグだ。

 この試合で、長崎は、フィジカルで間違いなく、岡山に勝り、夏場の補強に動いたとしても岡山がこの部分で上回れることは、難しいのではないかな。GKですら長身の21波多野 豪。22佐野 航大のミドルシュートのセーブは、特に凄くて、結構余裕があったようにも見えた。良いコースに飛んでただけに、余計に凄かった。

8増山 朝陽 選手(長崎)
「ジョップ(セリンサリウ)が1トップに入ってボールをしっかりと収めてくれたので、そこから攻撃できたシーンが多かったと思う。」

J.LEAGUE jp (Jリーグ公式HP)
J2 第26節 岡山 vs 長崎(23/07/16)試合後コメント(選手)
より一部引用。
URL:https://www.jleague.jp/match/j2/2023/071612/player/


3、チームの方針~岡山編~

2023 J2 第26節 ファジアーノ岡山イレブン

 岡山のスローインにかなり不満を持っている方は多いのではないだろうか?実際にSNSでもそういった声を目にする。しかし、天皇杯の湘南戦で、27河井 陽介が素早くスローインを入れるシーンを観て、選手というかチームの意識の問題ではないかと考えるようになった。

 スローインを早く入れる理由としては、相手陣地が整っていない状態で、その隙を突きたいという事にある。逆に、遅く入れる理由としては、出した後に「ボール保持」で、良い形にできるようにしたいという事が考えられる。

 相手を意識してのスローインであれば、そこに見つけて素早く入れて行くことができるが、ボールをマイボールにして落ち着かせることが目的であれば、受け手がフリーの選手を探す必要があり、相手のマークを剥がせるタイミングや比較的に安全な選手を探すために時間がかかっている。

 そもそも岡山には、素早く前線にロングパスを蹴っていくという回数が少ない通り、流れからボールを落ち着かせて、後半から自分達の攻撃に入る様に、スローインでも、ボールを落ち着かせて、ボールを運んで、ゴールに迫っていく意識が高い。

 そのため岡山の「繋ぐ」意識が高すぎる事で、サッカー全体のスピーディーな展開が減り、どこか盛り上がり欠ける試合(シュートシーンが少ない試合)が多くなってしまっている。スローインは、そういった意識が、如実に現れた事象の1つと言える。

 今季は「遅攻」が、劇的に改善こそしたが、その反面「速攻」の色はより薄くなった。「遅攻」を志向する上で、DFラインの攻撃参加を増やしていきたい所であり、先制点のシーンのように、中央を巧く使った上で、前線に良い距離感で崩しに関与できるかが、今後問われて行くこととなる。

 その上で、41田部井 涼の成長は、大きな前進で、天皇杯でみせた42高橋 諒の左CBの攻撃参加も、とても魅力的に映った。この試合でも、長崎が中央を引き締める中で、岡山の選手達は、中央で受けて前線の選手に縦に足下にピッタリ楔形のパスを付けるシーンは、岡山の成長であり、今季の武器の1つであり、自信を持ってい良い点であるだろう。

14田中 雄大 選手(岡山)
「自分自身ああいう形のゴールは常に狙って足を止めずに動かしているので、それが1つ形になったゴールかなと思います。」

J.LEAGUE jp (Jリーグ公式HP)
J2 第26節 岡山 vs 長崎(23/07/16)試合後コメント(選手)
より一部引用。
URL:https://www.jleague.jp/match/j2/2023/071612/player/

4、強化部への不信~矛盾~

チームとしてもフラストレーション溜める試合が多く、過剰に熱くなっての抗議が目立つ岡山。

 私は、直接記事を読んでいないが、ファジゲートの記事を読んだ方が、強化部が「来季もいることを前提とした選手の獲得を目指している」方針で、補強を進めていると解釈されていた方がいたが、確かに、ここ数シーズンに比べて動きが少ない事もあって、主観的ではあるが、あぁ、最初から強化部は、今季の編成や監督の方針に不満を持っていて、本気で「頂」を目指していなかった(目標は「頂」と表現していただけで、実際は数年計画で考えていた)という認識で間違いないと感じた。

 これは「頂」を目指していなければ、その路線でも良いが、「来季もいること」が確定する選手の獲得に動いたとしても来季にいる保証もなく、来季も主軸選手が残っていることも保証されていない。そう考えると、「頂」を本気で目指すという目標を掲げていたのであれば、99ルカオに続く補強があっても良かったのではないかという想いも個人的には強い。

 とすれば、長い目では、年齢構成こそ気にする必要はあるかもしれないが、そのシーズンで、常にベストを目指せる様に、現場(選手や監督)と強化部が、密に連携した上で、積極的に動いて行く必要があるが、ここ数年であった育成型期限付き移籍での獲得もなく、チームの路線変更や足りない部分を補うサポートとしては、繰り返しになるが、強化部のサポートは物足りない。

 やはり、42試合で考えるべきで、夏場に移籍市場が開くからとそこに待ってからの補強まで待つという考え方もあるが、それは、結果を残せているチームの話であって、目標に対して数字が出ていないチームとしては、動きがなく、実際に、その間の勝ち点の伸び悩みは、明らかであった。

 残念ながらもう赤信号が、灯るレベルであり、夏場に補強出来ても・・・という段階に入っている。やはり、強化部の見込みの甘さであり、木山 隆之 監督の采配やJ2のレベルの高さ、代表や怪我の離脱という問題があったとしても、そこに対する部分での強化部のアシスト(手薄なポジションの補強)とゴール(結果に繋がる補強)は、ここ数年で最低レベルと言っても良いだろう。

 この強化部で、来季を戦うのであれば、ここ数年は、中位を彷徨う可能性どころか、下手をすれば、観客低迷や成績低迷からの残留争いの可能性もでてくる。少なくとも1年目に、これだけ(前任の方と比べて)消極的な補強の動きから見ても、強化部の方が、どれだけ実績あるのか分からないが、「頂」を目指せる強化部の体勢を構築するためには、経験を積んで行く中で、5年~10年のスパンで見守る事も覚悟しないといけない。

 それだけ我慢していけば、強化部好みの監督と選手が揃って、初めて勝負という事に持ち込めるだろう。果たしてその時に、岡山がJ2にいて、周りのクラブのレベルがどれだけ高くなっているかは分からない。もちろん、私の見込み違いで、長い目でみた選手編成や計画が当たり、「頂」に届く可能性もあるが、少なくとも今季の動きを観ていると、厳しいのではないかと感じる。

 できれば、残りの夏場の補強可能な期間に強化部が本気をみせて、結果に繋げる事で、岡山の「奇跡の昇格」で謝罪するという未来であって欲しいと信じたい。しかし、申し訳ないが、「内容」は印象が良くなっても、評価されるのは「結果」であり、厳しい論調になってしまったが、これが、「現実」である。

木山 隆之 監督(岡山)
「良い試合だけじゃダメなので。自分たちの甘さも見えた部分があるし、積み上げている良さが出た部分もあるし、それをやっぱり勝ちにつなげないとなかなか浮上はしていけないと思う」

J.LEAGUE jp (Jリーグ公式HP)
J2 第26節 岡山 vs 長崎(23/07/16)試合後コメント(監督)
より一部引用。
URL:https://www.jleague.jp/match/j2/2023/071612/coach/

5、成長と躍動の活躍~代表~

22佐野と48坂本のホットラインでの得点を喜ぶシーン。

 やはり、22佐野 航大、48坂本 一彩の個の力というのは、抜けたものがある。41田部井 涼の成長や44仙波 大志の覚醒こそあったが、世代別代表コンビの二人は別格である。特に、特筆すべき点は、そのメンタルの強さである。

 序盤に無双していた18櫻川 ソロモンが、自信を失ったのか、チームの勢いと共にどこか物足りなさが目立つようになってきた。実力以上にメンタルの弱さの方が大きいように映る。対して、22佐野 航大や48坂本 一彩は、自分の武器を理解し、大胆なプレーを選択できる。そして、その成功率が高く、そのプレーの効果も大きい。

 そして、この両選手が、相手選手が警戒しているところをその上でプレーで、上回っていくことができる。一時的に良い選手がいても対策されて行く中で、持ち味が目立たくなってくる選手がいるが、この両選手にはこれは当てはまらない(パフォーマンスの悪い試合もあるが、長期間に渡って、現在進行形で持ち味を発揮できている)。

 ここにもう一人、攻撃でスペシャルな選手が加われば、岡山ももう一皮向けれそうな気がする。長崎の嫌がるボール保持や中央を使った攻撃で、中央で主導権を握り、こういった試合でも勝ちに繋げられるようなチームになれる可能性は秘めていることは、間違いない。

 厳しく言及こそしたが、夏場の補強の内容は、今後数年を占う可能性すらある。それだけ重要で、ここ最近のレビューで繰り返し述べているが、今季での昇格のラストチャンス。「頂」を目指して臨んだシーズンであり、監督の言葉である「我々は死んでいない(公式では「我々は終わっていない」と変更して掲載された)こと」を、「的確な補強→内容の向上→結果を出す」という流れで、岡山は掴み取る(姿勢をみせる)必要があるだろう。

 そして、これは、新スタジアムの機運や観客動員にも繋がる最も重要なことだ。この部分を気持ちで体現できている19木村 太哉と冷静さで良いプレーに繋げている48坂本 一彩。彼らのように、気持ちの籠ったプレーで「魂」を体現する選手がもっともっと出て来て欲しい。

48坂本 一彩 選手(岡山)
「こんなに暑い中であんなに多くのサポーターに来ていただくと、やっぱり選手として熱くなってやってやろうという気持ちになる。」

J.LEAGUE jp (Jリーグ公式HP)
J2 第26節 岡山 vs 長崎(23/07/16)試合後コメント(選手)
より一部引用。
URL:https://www.jleague.jp/match/j2/2023/071612/player/

6、期待の3選手~祈願~

17末吉 塁(ジェフユナイテッド千葉か期限付き移籍加入)

 15本山 遥が、右SBや右WBから遠ざかった事で、16河野 諒祐の負担が大きくなっていた厳しい競争と負担分散での右サイドの活性化に期待したい。強化部への不信を言葉にしたが、岡山が好きそうなタイプの選手ではないかと楽しみにしている。

 私のように前体制まではあった強化部の補強の動き、それが現体制に少ない事に対して、不信に思っている方も勝利の試合をみれば、どんなに苦しい時でも嬉しい。不満を打ち消すには、結果を出すしかない。そこばかりになっても(勝利ばかり追求し過ぎても)良くないかもしれないが、選手や監督の試合後コメントからその部分(勝利や昇格への気持ち)は伝わってくる。そういったチームを蘇らせる(強化部を再び信じられるぐらいの)活躍に期待したい。


Jリーグ通算100試合出場のソロモン。

 実は、最も期待している選手の1人だ。それだけの活躍を序盤戦にはできていた。もっと強引にエゴになっても良い。パスが読まれているのは、ゴールに迫る強引なドリブルや思い切りの良いシュートが足りないからだ。だからこそ、積極的にドリブルを仕掛けてシュートを打っていって欲しい。

 前線の選手の怪我が目立っている通り、彼の活躍(復調)は、夏場以降の最大の補強になる。48坂本 一彩や22佐野 航大といった代表組が、コンディションを上げて行く中で、再び開幕の頃の輝きを取り戻して欲しい。

Jリーグ通算100試合出場の試合で怪我してしまった7チアゴ・アウベス。

 岡山のエースは、私の中では、7チアゴ・アウベスだ。ゴールに逆算された攻守でのポジション取りやドリブルからシュートに持っていく判断の基準は、他のストライカーも参考にして欲しい選手だ。

 彼自身の活躍は、チームを救うだけではなく、彼と一緒に練習する選手の成長を促す影響の大きく、彼のプレーをみた子どもたちが、将来和製チアゴ・アウベスとして、岡山の選手として活躍する選手が出てくるからもしれない。

 彼に期待することは多くある。熱くなってしまって良くないプレーをすることもあるが、良くも悪くも多くの人達に影響力がある選手だ。

 「頂」を目指す上で、欠かせない選手。「昇格」への可能性を残した状態で復帰して、エースとして、岡山を「昇格」に導いて欲しい。

セレモニー後にブラジル国籍の方とコミュニケーションを取る7チアゴ・アウベス。

 タイトル画像に採用。両チーム合わせて、ブラジル国籍の選手は、岡山は99ルカオ、7チアゴ・アウベス。長崎は、ファビオ・カリーレ監督、7クリスティアーノ、10カイオ、4ヴァウド、2マルコス・ギリェルメ、39カイケ、11エジカル・ジュニオ、もしかすると、32ジョップ・セリンサリウもブラジルにルーツがあるかもしれない。実に、9人も関係している(帯同するメンバーには限りがあるが)こともあり、両チームのブラジル国籍の選手にとっては、楽しみなカードであったはずだ。

 それだけに7チアゴ・アウベスや99ルカオが、この試合で、出場できなかったのは、残念に感じていた筈である。毎回、こういったブラジル国籍選手の交流を見る中で、異国の地でサッカーを仕事にすることの大変さや寂しさというのを見て取れる。岡山の地でプレーすることは、そういった面では辛い面もあるかもしれないが、後で振り返った時に、良い挑戦であった、良い期間であった。そう感じて貰えたら嬉しく思う。また、多くの国の選手が、Jリーグにいて、こういったサッカー文化やその国の文化に少し触れられるのもサッカーならではの光景に感じる。

ファジステージ(空気階段)

 実は、今季の最大の補強(ファジステージの場所移転によりキャパシティや環境面の補強)かもしれない。フーズゾーンから離れている事で、多くの方が落ち着いて、ステージを見る事ができる。TVで見た事ある芸人の方が、来岡することが増えてきたことも、本当にうれしい。

 今季は、成績が伸び悩んでいることもあるが、その中でもファジステージは、以前以上の人数が集まっているような気がする。上記の3選手だけではなく、多くの選手が、活躍することで、成績で、「頂」に近づけて、試合も盛り上げてほしい。

文章・画像=杉野 雅昭
text・photo=Masaaki Sugino


ここから先は

0字

¥ 100

この記事が参加している募集

サッカーを語ろう

自分の感じた事を大事にしつつ、サッカーを中心に記事を投稿しています。今後とも、よろしくお願いいたします。