杉岡 秀紀

地方公立大学教員。専門は公共政策、地方自治。内閣官房行政改革推進本部事務局、地域公共人…

杉岡 秀紀

地方公立大学教員。専門は公共政策、地方自治。内閣官房行政改革推進本部事務局、地域公共人材開発機構、京都府立大学等を経て2016年から現職。二児の父。日刊建設工業新聞、北近畿経済新聞で連載中。https://sugiokahidenori.jimdofree.com

最近の記事

【オススメ本】島田正樹『公務員の働き方デザイン』学陽書房、2021

4月30日の報道(総務省調査)で2022年度において、自己都合で仕事を辞めたのは地方公務員が1万2501人で2013年度(5727人)に比べ、この10年で2.2倍となったことが分かりました。 そんな状態を少しでも改善するために参考になりそうなのが本書のような「公務員×キャリアデザイン」の観点。 より正確に言うと、キャリアだけでなく、ワーク×デザイン、人間関係×デザイン、こころ×デザイン、プライベート×デザイン、キャリアデザインと5つのデザイン軸で本書は展開(収録)されます。

    • 【オススメ本】清水克彦『2025年大学入試大改革-求められる「学力」をどう身につけるか-』平凡社、2024

      2025年から入試が大きく変わります。とりわけ大学共通入学テストにおいては、「情報Ⅰ」が追加されるだけでなく、数学では「数学C」が復活、「地歴・公民」の科目再編、国語の試験時間延長など、名称が変わった数年前とは段違いの変化が起きます。 加えて、総合型選抜や学校推薦型選抜、前期後期試験の内容のあり方もどんどんと変わっています。また、今後もずっと変わりゆくでしょう。 背景にあるのが新学習指導要領で謳われる「学力の3要素」。すなわち、①知識・技能、②思考力・判断力・表現力、③学

      • 鈴木忠平『アンビシャス 北海道にボールパークを創った男たち』文藝春秋、2023

        アンビシャスと聞けば、Boys be ambitious。すなわちクラーク博士がいた北海道を思い起こす人が多いだろう。その通り、この本の舞台は北海道である。 しかし、札幌ではない。舞台は人口約6.5万人の北広島市である。 そして表紙やタイトルにある通り、この本はプロ野球団日本ハムファイターズの新球場をめぐる誘致合戦がテーマであり、ノンフィクションの作品となっている。 この構想が発案のは2010年。その構想から2018年に実際の誘致が決まるまでの日本ハム側、誘致合戦を繰り

        • 【オススメ本】針貝有佳『デンマーク人はなぜ4時に帰っても成果を出せるのか』PHPビジネス文庫、2023

          幸福度調査でトップ3常連国。2022年・2023年と2年連続で「国際競争力1位」に選ばれた国。それでいて千葉県よりも人口の少ない国。 これが本書のテーマであるデンマークである。 何より気になるのは「16時に帰る」この一文であろう。 その答えはシンプルで、ワーク(仕事)の目的は「ライフ(人生・生活)」を充実させることにあると合理的に考えるから。言い換えると、「ワーク」のために「ライフ」が犠牲になっては本末転倒との考え方がデンマークでは当たり前のようになっているからである。

        【オススメ本】島田正樹『公務員の働き方デザイン』学陽書房、2021

        • 【オススメ本】清水克彦『2025年大学入試大改革-求められる「学力」をどう身につけるか-』平凡社、2024

        • 鈴木忠平『アンビシャス 北海道にボールパークを創った男たち』文藝春秋、2023

        • 【オススメ本】針貝有佳『デンマーク人はなぜ4時に帰っても成果を出せるのか』PHPビジネス文庫、2023

          【おすすめ本山本隆司『この人生は、日本一たい!』鴨ブックス、2024 。

          「福知山の9号線沿いにある美味しいたい焼き屋さん」 といえば、京都北部の方には通じるでしょう。 あの鯛焼き屋さんのオーナー、山本隆司さんの処女作。 最初からたい焼き屋さんを営んでいた訳ではなく、最初のキャリアは高校の先生。そして、その次は営業勤務を挟んで、吉野家の様々なお店の立ち上げ店長を経て、福岡発の日本一たい焼きと出逢われたというご経歴。 高校時代に野球部の補欠のキャプテンとして福岡で2位まで上り詰めているというキャリアも面白いですよね。 福知山野花店を皮切りに

          【おすすめ本山本隆司『この人生は、日本一たい!』鴨ブックス、2024 。

          【オススメ本】NPO法人Mielka監修『もう迷わない どの政党に投票すればいいか決められる本』ワニブックス、2023

          投票に迷った際には、4P、すなわち ・Party(支持政党) ・Policy(政策争点) ・Personality(人柄等候補者の属性) ・Performance(過去の業績) を注目すること、というメッセージは分かりやすくて良いですね。 一方で、OECDの調査によれば、日本の閣僚の平均年齢は62.4歳でOECDの中で最高齢であることが指摘されている「政治家の高齢化」も著しい。 もとより閣僚は能力や資質よりも基本的に当選回数や派閥の力学(推薦)で選ばれることがそ

          【オススメ本】NPO法人Mielka監修『もう迷わない どの政党に投票すればいいか決められる本』ワニブックス、2023

          【オススメ本】斎藤幸平『人新世の「資本論」』集英社新書、2020

          少しブームは去った感はあるが、気になりながらも読む機会を逸していた1冊。 タイトルにもあるが、最大の貢献は「人新世」という言葉を日本中に浸透させたことにあるのではと思う(最後は「資本新世」という言葉も登場)。とはいえ、この言葉は斎藤氏のオリジナルな造語ではない。ノーベル化学賞受賞者のパウル・クルッツェン氏の言葉で、【人間たちの活動の痕跡が、地球の表面を覆い尽くした年代】という意味である。 本書は50万部を超えるベストセラーになっているので、本の内容の紹介は割愛する。アプロ

          【オススメ本】斎藤幸平『人新世の「資本論」』集英社新書、2020

          2023年my10大ニュース【後編】

          (前編はこちら) https://note.com/sugioka0617/n/nc27d51fd3cff 第5位 現場重視の行政委員 2023年も様々な自治体の委員として政策づくりの支援をさせてもらいました。全て書くと冗長になるので、新規案件だけ以下、記します。 ・京都府明るい選挙推進協議会委員 ・京都府令和5年度「ALL KYOTO FES」企画・運営・広報業務に係る公募型プロポーザル外部有識者 ・大阪・関西万博きょうと推進委員会若手部会(仮称)委員 ・一般社団法人

          2023年my10大ニュース【後編】

          2023年my10大ニュース【前編】

          師走は大晦日ですね。 今年も記録に残すために2023年の1年間の振り返りをここ(note)に記しておこうと思います。 第10位 相次ぐ親戚の入院 今年は親族の入院・手術が相次いだ1年でした(私は幸い人間ドックでほぼ何も引っかからずですみましたが)。 一件は脳梗塞入院。幸い初期で見つかり入院できたので、大きな後遺症も残らずに済みましたが、発見が遅れれば言語障害が残るところでした。 もう一件は内臓出血による入院。家族で緊急帰省しました。ただ、大きな病院に転院後の検査で癌の

          2023年my10大ニュース【前編】

          【オススメ本】SHOWKO『私らしい言葉で話す』CCC、2023

          陶芸家であり、経営者であり、コンサルでもあるSHOWKO ショウコさんによるコミュニケーション論本。 ・言葉を磨くとは感性を磨くこと。 ・言葉で考え、言葉で分かち合う。 ・言葉を丁寧に扱えば、自分も世界も幸せになる。 ・私らしい言葉を身につける。 ・他者を認め、自分の軸を持ち、豊かに生きる。 職業や業界は違うが、私も日々言葉を商売道具にしているからだろうか。 表紙や帯から入ってくるこれらの言葉だけでも共感するところが多い。 また、自分らしく話すための手法として紹介されて

          【オススメ本】SHOWKO『私らしい言葉で話す』CCC、2023

          【オススメ本】大崎麻子・秋山基『豊岡メソッドー人口減少を乗り越える本気の地域再生手法ー』日本経済新聞出版社、2023

          中貝宗治氏が上梓した『なぜ豊岡は世界から注目されるのか』、平田オリザ氏が上梓した『但馬日記』。先行するこの2冊と本書を合わせて 『豊岡三部作』 ときっと後世呼ばれることになるだろう。 中貝宗治氏の『なぜ豊岡は世界から注目されるのか』が豊岡全般、平田オリザ氏の『但馬日記』が演劇やアートから見た豊岡論とするのであれば、本書はジェンダーギャップ解消から見た豊岡論という位置付け(ポジション)である。 ただ、先の2冊と決定的に違う点がある。 それは今回の主たる執筆者である大崎麻

          【オススメ本】大崎麻子・秋山基『豊岡メソッドー人口減少を乗り越える本気の地域再生手法ー』日本経済新聞出版社、2023

          【オススメ本】小宮位之『無料塾という生き方〜教えているのは、希望〜』ソシム、2023

          数年前に視察させて頂いた無料塾「八王子つばめ塾」を10年以上運営する小宮位之さんによる待望の書。 なぜ無料塾でなければならないのか? どうすれば無料塾が続くのか? 無料塾という言葉を見れば、誰もがこの2つの疑問が浮かぶでしょう。 無料塾とはその名の通り、子どもたちは一切お金を払わず学ぶことができます。加えて、食糧やちょっとした生活費の支援もしてくれます。高校生には資格試験の受験料の肩代わりや大学合格者への教科書代支援もしてくれます。 一方、教える教師側の給料や家賃は0

          【オススメ本】小宮位之『無料塾という生き方〜教えているのは、希望〜』ソシム、2023

          【オススメ本】高田朝子『手間ひまをかける経営-日本一コミュニケーション豊かな会社の「関わる力」-』生産者出版、2023

          サブタイトルだけでどの企業を取り上げているかが分かる人は、通の人ですね。 結論から言えば、この本で取り上げられる企業は京都信用金庫一社です。 日本で初めてコミュニティバンクを標榜し、業界初でノルマを撤廃し、お客様視点と対話を軸に経営。そして、理事長が変わるごとにおせっかいバンカーとして深みに磨きがかかる京信。 私も榊田理事長はじめお世話になっている方が何と多いことか。 本書は、そんな京信のネットワーク、コミュニティ、ネガティブ・ケイパビリティ、リーダーシップをキーワー

          【オススメ本】高田朝子『手間ひまをかける経営-日本一コミュニケーション豊かな会社の「関わる力」-』生産者出版、2023

          【オススメ本】平田オリザ『但馬日記』岩波書店、2023

          男もすなる日記というものを…の「土佐日記」の現代版と言えば、やや表現が大袈裟かもしれないが、「人の日記は手を加えれば作品になる」ということがよく分かる一冊であった。 作書は劇作家、演出家の平田オリザさん。 東京都生まれ東京育ちなのに、ひょんなご縁で隣町・豊岡に移住し、3年前にできた芸術文化観光専門職大学学長に就かれている。 平田さんと言えば、劇団「青年団」を結成し、戯曲と演出を担当するほかこまばアゴラ劇場の経営者、日本各地の学校におけるコミュニケーション教育でも有名。しか

          【オススメ本】平田オリザ『但馬日記』岩波書店、2023

          【オススメ本】石山恒貴『定年前と定年後の働き方』光文社新書、2023

          年齢と幸福感を示すU字カーブをご存知だろうか。 いわく個人の幸福感は20、30代は高いが、40代後半で底を打つ。しかし、50代後半からはまた年齢の上昇に伴い、再び上昇するという。したがって、この現象は「エイジング・パラドックス」とも言われる。 そして、最大のポイントはこの50代後半から上昇傾向にある最中に迎えるのが、定年であり、この定年前後から(サードエイジ)働き方について研究面と実例で迫ろうというのが、本書である。 まずは著者のプロフィールは以下の通り。 石山常貴。

          【オススメ本】石山恒貴『定年前と定年後の働き方』光文社新書、2023

          【オススメ本】中貝宗治『なぜ豊岡は世界に注目されるのか』集英社新書、2023

          前豊岡市長で、小職の勤務先(福知山公立大学)の客員教授も務めていただいている中貝宗治氏による待望の書である。 結論から言うと、まずタイトルがいい。「なぜ〜なのか?」というシンプルな問いに対し、中貝氏が16年(旧豊岡市も入れれば20年)の市長生活を振り返り、淡々と答えていく感じで、非常に分かりやすい。 中貝氏の講演(講義)を何回も傍で聞いてきた立場から1点補足すると、中貝氏の講演をそのまま講演録にしたようなイメージである。それくらい氏の講演は冷静(ロジカル。理)でいてその中

          【オススメ本】中貝宗治『なぜ豊岡は世界に注目されるのか』集英社新書、2023