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【オススメ本】高島宗一郎『日本を最速で変える方法』日経BP、2021

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・政令市で唯一、7年連続税収過去最高

・国に先駆けて行政のハンコレスを完了

・日本初、市民の介護データ×AIによるケアプラン作成支援システム

・スタートアップを推進し、開業率日本一

・休業要請を受けた事業者へ家賃8割補助を実施

・日本で初めてオンライン診療&服薬指導の一気通貫サービスを構築

これを政令市の規模、かつ、このコロナ禍の中でやってのけたのが福岡市の高島宗一郎市長です。

高島市長は大学卒業後はアナウンサーを経て、36歳で福岡市長選挙に当選。その後、2014年、2018年といずれも史上最多得票で再選し、現在3期目の首長です。

3年前の前著『福岡市を経営する』はどちらかと言えば、市長として奮闘記をまとめた「名刺がわりの一冊」でしたが、今回はこのコロナ禍を受け、思い通りに行かない政府政策に対するある種の「怒りの書」。それを福岡ではどのように工夫してきたのか、国レベルでどのように展開すべきなのか、という提言も含めた一冊となっています。

私が特にビビッと気になったのは以下の言及です。

・弱い力でも重いものを動かせるようになります。仕組みを知り、「支店」「力点」「作用点」を的確に見極め、「どこにどのように働きかけると、できるだけで無駄なく目的を達成できるか」が分かるようになれば、ビジネスを成功させることも、社会を変えることも、はるかにスムーズに実現できるようになるでしょう(P.32)。

・行政組織を動かしていくには指示の仕方など独特なノウハウが必要です。(中略)政治の都合で、いつ大臣でなくなるかもしれませんんし、その省庁の長になるために選挙を戦ったわけでもないのですから、職員の目には厳しいものがあるでしょう。国の改革が進まないのは、そうして制度的、構造的な問題もあるのではないかと思います(p.79)。

・我々一人ひとりも情報を管理されることに対し、賛成か反対かという両極端で考えるのではなく、国民の利便にかなう部分については、個人がデータ提供およびデータ連携を受け入れ、ICTを最大限に活用していくとか、その活用していくとか、その活用の条件を、今回の特別定額給付金のような有事などにある程度限定して了承するといったことも考えられるでしょう(p.93)。

・これまで「日本の行政システムは弱者に冷たい」と言われることが少なくありませんでした。それは、日本の行政が「申請主義」に基づいているからです(p.98)。

・日本政策決定は、データを用いた「エビデンス」ベースというより、局所的な事例や体験談を基にして「エピソード」ベースが主流でした。アートからデータへ。より確実なアウトカムを得るためにも、データを利用することで、限られた税金をより効率的に使うことができるようになると思うのです(p.110)

・行政には規制をする権限がありますが、規制を緩和する権限もあります(p.145)。

・日本を変えるうえで大きな障壁となるのが既得権です(p.157)。

・人は往々にして、利益につられたときよりも恐怖にかられたときに、大きな力を発揮するものです。自分たちの利権を脅かそうな新しいビジネス、参入者が現れると、既得権者はあらゆる手段を使って、必死で抵抗してきます(p.159)。

・本当の意味で政治家の役に立ち、かつ自分の理想の実現につながるのは、「選挙運動」です。選挙運動とは、家族や友人など、自分以外の人に投票行動を呼びかけていくこと、つまり「清き二票以上」を投じることです(p.174)。

・私は、政令指定都市こそ、これから日本にとっての希望であり、そこには日本が変わるためのヒント、成長していくためのヒントがたくさん詰まっていると思います(p.181)。

・国家緊急権の規定は、明治憲法にはありましたが、戦後に作られた日本国憲法には存在しません。憲法を制定する段階で「日本は、戦争を前提としない国になったのであり、国家緊急権は必要ない」ということになってしまったのでしょう(p.212)。

・複数の教科書が存在すれば、出版社の間で競争が働き、良い教科書が生まれるという利点はあるでしょう。しかし、転送生は教科書が変わると困るでしょうし、そもそも、日本の義務教育において、全国の教科書がバラバラである必要性があるのでしょうか?(p.226)

・今の日本の閉塞感の原因の一つは、地域格差と世代間格差にあると、私は思っています(p.234)。私は「地方」と「若者」こそが、この国の未来を作る、重要なプレーヤーであるべきだと考えています(p.235)。

・リーダーシップと責任の所在が曖昧であり、共同責任のような形になっていることが、結局みんなを無責任にさせているのではないかと、私は思います(p.251)。

以上です。いずれにしてもこのコロナ禍を日本の弱点に気づくだけの機会にするのか、これからの社会を変えるための好機に繋げるのかは、リーダーとそれを支える一人ひとりの国民の意識にかかっていますね。

他市の首長さんはもとより、日本の未来を憂い、「最速」で変えたいと思う一人ひとりに読んでいただきたい一冊です。

(参考1)目次
はじめに
  第一章   なぜ日本は変化に弱いのか?-コロナが浮き彫りにした日本のボトルネック-
  第二章   データ連携、DXが日本の全国民を救う-日本復活の糸口-
  第三章   感染症×少子高齢時代の福岡式街づくり-国際競争力を持つ尖りの一手-
  第四章   テクノロジーを社会に実装するための力学を知ろう-スタートアップ支援から見えたノウハウ-
  第五章   未来を創れる国に-目を背けていた問題に立ち向かう-
  おわりに

(参考2)日経BP

https://www.nikkeibp.co.jp/atclpubmkt/book/21/282720/

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