杉岡昌明

小説家です。すべて有料という傲慢っぷりの売れない小説家でしたが、考えを改め、無料でも投…

杉岡昌明

小説家です。すべて有料という傲慢っぷりの売れない小説家でしたが、考えを改め、無料でも投稿開始。noteはルーキーであり新参者。おもに、ショートショートや超短編小説を投稿していきます。ホラー、サスペンス、そういった読者が読んでいてしんどくなってくるようなジャンルが得意。

最近の記事

短編小説「青春のおじさん」

 この社会に37歳フリーターおじさんの居場所はない。  若くもないし、シニアでもない。  中途半端な年齢、それがアラフォー。  何か成し遂げたいと思い続け、読書と労働ばかりの若かりし時代。  気付けば、楽しい思い出は何もなく、真性の童貞になってしまった。  ニートをしていたわけではない。引きこもっていたわけでもない。  しっかり労働していたのに、誰かと恋愛に発展したことがない。  誰かと遊んだ思い出もなく、家に帰って、ひたすら読書していた。  2年前、身体を壊して退職。少しば

    • 超短編小説「僕が出した答え」

       死んでも喜ばれるだけで、誰も悲しまない。  だから、僕は生きている節がある。  僕の不幸は中学時代からだ。そして、その不幸が37歳になっても続いている。  病気、貧困、差別、いじめ。  これくらいの不幸が、ざっと20年間続いている。  僕は今、浴槽の中でシャワーを浴びながらリスカ直前なのだが、刃が錆びていることに気付いて、カッターを放り投げ、いつものように思う。 「生かすか殺すか、どっちなんだよ」  生かさず殺さずの苦しさを20年間受けているのだが、その意味はなんなのだろう

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      • 超短編小説「非道な世界」

         お菓子に付いているオマケは、必要のない人にとってはゴミだ。  この世界に生きている僕も、必要がないのならゴミなのだろう。  歳も40に近くなると仕事がなくなる。  フリーターならアルバイトすらなくなる。  その崖すれすれの今際の際を歩いているのが僕だ。  若者たちがどんどんアルバイトで入ってくる。  シフトにはもちろん限りがあるから、削られていくのはおじさんの僕。 「この世界は非道だ。優しさなんてこれっぽっちもない」  来週のシフトを見て絶望する。  食っていけない。アルバ

        • 超短編小説「笑い声」

           コンビニでアルバイトをしていると、店内が笑い声でいっぱいになる瞬間がごく普通にあるが、最近、おかしなことに気付いた。  どこにいても笑い声が聞こえるのだ。  歩いていても笑っている声が響く。家の中にいてもたくさんの笑い声が聞こえる。  しかし、家の中にたくさんの人がいるわけがない。  それに、夜勤明けの朝なんて、電車に乗る人々は、これから職場に向かう人ばかりで、大声で笑っている者などいるわけがないのだ。  だが、僕の耳には大声で笑い合うたくさんの人々の声が常に聞こえる。  

        短編小説「青春のおじさん」

          20字小説「地球最後の日」

          地球最後の日。海を眺めて涙を流している。

          20字小説「地球最後の日」

          20字小説「最後の日」

          地球最後の日。無意味に祈りを捧げている。

          20字小説「最後の日」

          詩「死のような苦しみ」

          呼吸ができない 生きがいとは何なのか わたしが生きる価値とは わたしの中に在る生命 あらゆる物事を苦と感じる生命 いつも問うている 幸福とは何だろうかと どれが不幸とは言い難い だが、歴としてわたしを苦しめる 表しようのない大きな不安 わたしの生命は何を叫ぶ これが道だと言えるものは見つからず どこに向かえばいいのだろうか 漠然とした怖れに包まれる その中でじっと、ただじっと身動きも取れぬまま いつかこの生命の中にある躍動が教えてくれる これがわたしの道なのだと でも

          詩「死のような苦しみ」

          詩「夜遊び」

          遊び果てて日が暮れて 帰る子どもの影が伸びる ああ、今日も終わる人の命 夜が来て皆が眠る 誰も知らない夜遊びに踊り狂う 誰が遊ぶか人は知らない 何が居るのか誰も知らない 知るものが居ない夜の遊びをただひたすら待っていた これが子どもの寝顔か 昨日も見たよと隣が言う ふふふっと笑うよその者 さあさあ時が満ちたとよその大人が言う 彼らが笑顔で満ちる 何しようか何して遊ぼうか ひしめく笑いどよめくこの世 あーあ。起きちゃった。 食われた者の横顔が布団の上で転がり続け それ

          詩「夜遊び」

          超短編小説「消える」

           教室に入ると、いつもはしゃいでいる浩介が見当たらない。 「美樹、浩介は?」  美樹は眉根を寄せている。 「浩介って、二組の陰キャの? 沙樹ってそんな趣味?」 「はあ? うちらのクラスの浩介だよ」 「はあ? 頭でも打ったか? 居ないよ、うちらのクラスにそんな奴」  頭を打ったの美樹だろ。それに、浩介の机も無いし。  担任が入ってきて、出席を取る。適当に返事をしていくクラスの連中。  だが、浩介の名前は呼ばれなかった。 「先生、浩介は? まさか夜逃げとか?」  私がでかい声で訊

          超短編小説「消える」

          詩「卵」

          ひよこが育つからの中 風雨にさらされ 育つからの中 何も知らない見えず聞こえない とぎ澄まし 芯から震え そのときをただ ただ 割ってしまってはもったいない 命あるもの、いや、全てのもの。 外界のものができること つがいをくっつけさせること         それが善きこと         それが全て ひよこはからの内 割ってしまってはもったいない すくすく育つからの中         それが全て         じゃまだてするな 外界のものは辛抱だ やること成すこと

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          超短編小説「キメラ」

           自衛隊基地の地下深くにある極秘研究所に出勤すると、アラーム音が鳴り響き、 『緊急事態発生。ただちに避難してください。これは訓練ではありません。緊急事態発生。ただちに……』  と機械音声が流れた。職員たちはぞろぞろと小走りで出口に向かっていく。  突然、階下で爆発音がする。冗談半分で避難していた人々は、血相を変えて出口に突っ走っていく。  私は嫌な予感がした。携帯を取り出し、所長の番号をタップする。 『ああ、ミズキ君か。大変だ。レベル4のキメラが逃げた』  嫌な予感は的中した

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          超短編小説「キメラ」

          超短編ホラー「スリープ」

           起きたら部屋がめちゃくちゃに荒らされていた。  混乱している頭で盗られたものがないか確認する。 「盗られたものは、無いのか。よかった」  僕は警察を呼んだ。事情を話して部屋を調べてもらった結果、警察が放った一言は、 「誰かが侵入した形跡はありません」  とのことだった。  事件性が無いと警察は判断を下して帰って行ってしまった。 「マジかよ。じゃあ、夢遊病か何かか?」  大学は今日は行かないことにして、ひとまず荒らされた部屋を片付けることにした。  片付けが終わると、もう夕方

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          超短編ホラー「スリープ」

          超短編ファンタジー「魔法のノート」

           帰る家がない。パパの会社の倒産に加えて、家庭崩壊。ママに引き取られたけど、ママの彼氏はクソ野郎。漫画ではありがちな設定だけど、現実に自分の人生がそうなっちゃうとマジでキツい。  ママの彼氏は、初めこそ優しかったけど、仕事が上手くいかなくなって退職してから、表情が厳しくなった。プライドのある人だったから、アルバイトなんて無理だったんだと思う。でも、生活のためにアルバイトを長時間していた。それから、おかしくなってきた。  ママの彼氏が私に迫ってきて、家から逃げたのは一週間前。マ

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          超短編ファンタジー「魔法のノート」

          超短編ゴシック「ディベート番組」

           魔女はいるのか。このテーマにおいて、オカルト研究家の小池昭典と否定派の橋本浩介は、テレビ番組で討論することになった。 「魔女はね、いるんですよ。何故かと言いますとね、たくさん動画が出てるんですよ。探せば、たくさんね」  小池が言うと、 「私もその動画見ましたよ。全部、作り物ですから」  橋本は余裕たっぷりだ。 「なんなら、証拠を見せましょうか?」  挑戦的な小池に、橋本はにこりと笑って、 「うん。見せてみなさいよ」  と、やはり余裕の表情。  小池は、足元のカバンから瓶を取

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          超短編ゴシック「ディベート番組」

          超短編SFファンタジー「救い」

           救われないと思っていて、ときどき死を考えるというのは、自分の未来において自死するという選択が選ばれている世界が存在する、と僕は考えている。未来はいくつも分岐していて無数に存在しているというけれど、その中の1つに僕の自殺遺体が発見されている世界が存在することを想像しても、今の僕にはそれは必然としか思えない。だって、ときどき死ぬことを考えるから。  あまりに苦しくて、感情が沸き起こって怒り狂っているときは死なない。だけども、そのあとに来る冷静さが衝動を交えて死の世界に引き込もう

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          超短編SFファンタジー「救い」

          超短編「噂」

           私の家の向かいに住む五十代の男は、録音機で録音したのか、または自分で音源を制作したのか解らないが、騒音を鳴らし続け、私は夜も眠れない毎日を送っている。  精神疾患を患っているのかどうかは定かではないが、近所でも有名な問題のある男で、私が三十五年のローンを組んで買ったこの家とおよそ三メートルほどしか離れていない男の戸建ての間で、私と男は何度かトラブルになったのだ。  そもそも私は何もしていない。本当に何も悪いことなどしておらず、ただ窓を開けて換気をしていただけだ。それなのに男

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          超短編「噂」