ピカチュウ

「名探偵ピカチュウ」に見る全体設計の妙。

※一部作品のネタバレに触れる点がありますので、お気をつけください。

公開直後に書いていれば良いものを2週間も寝かしてしまった、、が、
非常に感銘を受けたのでやはり記録に残しておこうと思う。

公開から2周目、G.W.で興行収入を大幅に伸ばした「名探偵コナン」「アベンジャーズ」を抑え、動員首位に躍り出た「名探偵ピカチュウ」が好調だ。

自分はポケモンど真ん中世代ではあるのだが、そこまでガチファンという訳ではない。むしろ一般的なポケモン好きよりも更にポケモンに対する経験値は低いくらいだ。(とはいえポケモンが如何にグローバルで見ても日本のIPとして素晴らしい発展を遂げてきているかは理解しているつもりだ)

そんな前提がある上で、昨年本作の予告編が登場した際には、ウェブのニュースでは一斉にこんなタイトルが踊った。

ピカチュウの声がまさかのおっさんに!?


ポケモン知識がそこまでない自分にとっては、この予告編を観て、かつあのかわいらしいピカチュウの声が、こんなおっさんになってしまって、大丈夫なのだろうか、と相当に映画の成功を危惧し不安になったのを覚えている。

※とはいえゲーム版の「名探偵ピカチュウ」では、名探偵役のピカチュウの声はもともとおじさん声なので、ゲームに忠実に作ってきている訳らしいのだが、自分を含め、大半の非ポケモンファン、同ゲームファン以外はそこまで把握している人はいないように思う。

この”おっさん声”により映画が話題になった点はあったと思うが、自分も含めそれにより映画を不安視する声は感覚的に少なくなかった様に思う。

しかしながら、本作品のすごみはまさにそこだったのだ。

この映画をヒットさせる上で、ポケモンファンだけでなく、非ポケモンファンを取り込むことは必然であるわけだが、(作品を観た方ならわかると思うが)今作では最後の展開でまさに、おじさんであった必然性をストーリーとして大変上手に見せつけてくれるのである、しかも感動的に。(詳細はぜひ映画にて)

今作の素晴らしさは、キャスティング(=おじさん配役)というエッセンス自体が、公開前の作品の話題化づくりとして十二分に機能しただけでなく、ストーリーの中にキャスティングの妙を巧妙に組み込むことで、プロモーションもストーリーの読後感も段違いに桁が上げられている、そうした全体のデザイン/設計力だったのではないだろうか。

この様なケースは他の作品ではあまり観られないのではないかと個人的には感じており、その点が非常に秀逸だったのでは、といたく感動した。そして何より、当初のおっさん声に対して不安を抱いた人ほど、最後の展開により一層心を打たれる(してやられた、という)様にできているのだ。

自分がまさに不安に思った所もあり、まさにしてやられた。
ほんと素晴らしかったピカ。

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