【チームの葛藤 (課題・対人関係)の区別とチームの凝集性及びアウトカムへの影響】A Longitudinal Studyof Team Conflict, Conflict Management, Cohesion,and Team Effectiveness
概要
問題と目的
(マネージメント手法にのみ関心がある)
チーム成長理論による対立の意味
チームの成長理論 (Team Deelopment Theory) は、チーム内の対立と葛藤をチームメンバー同士が良い関係を形成するための重要な要素として指摘している
断続平衡モデル (Gersick, 1988,1989) によれば、 チームが生き残れる中間点で対立を管理することが、チームが初期の惰性を克服するメカニズムとなる。中間点で対立を管理すると、チームは修正した問題解決戦略による結束を高め、強いチームアイデンティティを形成できる (科学的事実というよりは理想論や成功事例による理論だと考えられる、我々の立場から意味をなす理論かどうかよみすすめる)
Tuckman (1965) のステージモデルによれば、対立はチームメンバーの価値や展望の表現によりしばしば早期に生じる。チームは各自の役割を明確にし、リーダーから独立し、連携するための嵐の時期を通過する必要があるとされる。一度対立を克服すると、高次元の凝集性とチームの効力を発揮するメンバー間の信頼が形成されるとする。
また、Chang, Bordia & Duck (2003) によれば、チームの成長モデルに共通する要素は、より強い凝集性や成熟したステージに進む前に対立が生じると指摘している (この理論の共通点は昔馴染みがあるが、現実の職場に焦点をあてるとこうしたスポーツドラマのような展開が生じる職場は1割未満だと考えられ、他は契約により邪魔だと感じた瞬間に切り捨てるようになっている)
上述したモデルは、対立と凝集性が効果的なチーム形成に及ぼす影響と重要性を指摘しているが、多くの先行研究は二つを独立した要因として通り上げ成長に関する相互作用を明らかにしていない
したがって本研究では、対立管理、凝集性及びそれらの相互作用を明らかにし、理論の実証のギャップを埋めることである
チームの対立と先行研究
対立の情報処理による観点から、対立による最初の利益は、チームの凝集性が激化して減少することで消えてゆくとしており、対立は最小限に抑制されるとする。メタ分析も、課題に関する対立 (task conflict) と関係性に関する対立 (relationship conflict) はチームのパフォーマンスと満足度を抑制する (DeDreu and Weingart, 2003)
課題の対立は、チームの意思決定を通じてチームの凝集性のようなよい結果を導くという指摘もある。この指摘の重要な点は、課題の対立が関係性の対立に発展する可能性があるため、関係性の対立を最小限に抑えることであるとされる (Amason, 1996) (引用文献の一つに、functional/disfunctional conflictとあり、これは有意義だと考えられる)
しかし、このような課題の対立と関係の対立の定義や、それぞれとマネージメントがチームの凝集性や効果的なチームに及ぼす影響も明らかにされていないため、本研究では前向きの研究により調査する
本研究でのリサーチクエスチョンは以下にまとめられる
早期の課題の対立はのちの凝集性をもたらすか
チームの関係性の対立のマネージメントは、チームの葛藤とのちのチームの凝集性に影響を及ぼすか
チームの凝集性はのちのチームの満足度、生存可能性、パフォーマンスを高めるか
チームの課題・関係性の対立と凝集性
チームの対立は多面的
課題の対立は、“disagreement among group members about the content of the tasks being performed, including differences
in viewpoints, ideas, and opinions”で定義される
関係の対立は、“interpersonal incompatibility among members, which typically includes tension, animosity, and annoyance among members within a group”で定義される (Jehn, 1995)
凝集性 (結束と訳す場合も) は、"he tendency for a group to stick together and remain united in the pursuit of its instrumental objectives" で定義される (Carron, Brawley & Widmeyer, 1998)
チームが早期に対立するとき、彼らは似たような考えを持つもので連帯し、言いかえれば集団内で考えの異なる者同士で対立する「Storming」の時期を迎える
次に、対立が高次元の結束で解消される「norming」の時期を経る
その後、チームが効果的に機能し、問題解決を行う「performing」の時期を経る
上記の対立と結束の理論は、対立をさらに課題の対立と対人関係の対立に区別していない
本研究では、課題の対立と対人関係の対立はチームの凝集性に異なる影響を及ぼすと考えている
しかし、双方の影響を加味した凝集性への影響を調査していないため、メタ分析では対立がチームの凝集性に負の影響を及ぼすという結果が報告されている (DeDreu & Weingart, 2003)
それでも、先行研究では関係性の対立がチームの影響に負の影響を及ぼすとされており、DeDreu & Weingart (2003) は、関係性の対立は注意や感情という資源を消耗してしまうためであるとしている
また、防衛行動を促しオープンなコミュニケーションが抑制されるためともしている
しかし、多くの研究は課題の対立はチームの凝集性を抑制するとしているものの (DeDreu & Weingart, 2003)、ポジティブな関係を示唆するものもあり、難しい課題が与えられるほどチーム内で問題を解決するためにそれぞれの展望が述べられる (Amason, 1996; Folger, 1997; Peterson & Behfar, 2003)
その結果、声を上げたものは集団の意思決定に迎え入れられる (Peterson & Behfar, 2003)
(これはあまり見ない仮説なので面白い)
対立のマネージメントとチームの凝集性 (結束)
本研究では、チームの対立のマネージメントは、オープンに話し合い、違いを解消するよう試みることである (Jehn, 1995)
(これがマネージメントの方法だということではなく、このマネージメント方法による研究だととらえる。ほかのマネージメントに関する関心があるならこの研究結果を適用できない)
先行研究では、積極的に管理する方法と、異なる個人の対立マネージメント行動を記述するものもあり、例えば順応accomodating、回避avoiding、妥協compromising、協力collaborating、競争competingとして記載されている (DeChurch & Marks, 2001)
オープンコミュニケーションはTグループから始まり、その結果は不明確であった
しかし、チームの対立マネージメント研究では、直接対立に対応するとオープンで健全で建設的な空気が長期間持続するとされている (DeDreu, Weingart & Known, 2000; Montoya-Weiss, Massey & Song, 2001)
また、相互の信頼や個人的な関係性の質の向上をもたらすとの報告もある (Van de Vliert, Euwema & Huismans, 1995)
対立マネージメントのモデレーション
Murningham & Conlon (1991) は、成功しているカルテットは課題の対立を明示的な方法ではなく暗黙的に扱い、課題の対立が基盤にある状態を維持していた
成功しているカルテットは、非機能的な課題の対立についてはタイムアウトやクールオフピリオドを設けて対応していた
すなわち、課題の対立への過度に明示的なマネージメントは、チームの対立解決方法・規範を破壊して不必要に対立を強調し、関係性の葛藤にまで発展して凝集性を壊す可能性がある
チームの凝集性 (結束) とメンバーの満足度、存続可能性およびパフォーマンス
グループメンバーの満足度やチームの効果は、Tグループによる高い安心感を得ようとする観察に始まり、安心感を基盤にして高い生産性が生じること、人間が愛着を基盤としていることからグループ凝集性が安心感を生み満足度や生産性につながること、その結果として存続性につながることがモデル化されている
方法
対象者と方法
53の大学生チーム (職場じゃないのか、、)
(学生の場合は、チーム対立やいじめという形で表出されるが、職場の場合は解雇など退職に追いやられて生活できなくなる意味でプロセスの強さがちがう。本研究は大学生チームを対象とするものであった)
各チームは3-6名で構成
各チームの年齢、性別、GPAに差はなかった
各チームはコース内で、あるトピックの研究を行うために、トピックを選択し、研究を行い、レポートを書き、セメスター終了時に発表する必要があった
その間に、T1 (課題開始から2か月後) で課題及び関係性の葛藤、そのマネージメントを測定し、T2 (3週間後) にチームの凝集性を測定し、T3 (課題終了時) にメンバーの満足度、生存性、パフォーマンスを測定した
チームの対立、対立マネージメント、凝集性、パフォーマンスはチーム内でディスカッションして決定
満足度及び生存性は、個人に質問
測定内容
プレディクタ:
課題の葛藤 (alpha = .89)、関係性の葛藤は (alpha = .94)、7-point Likert scale (1-7)
葛藤マネージメント (Cosier & Dalton, 1990) (alpha = .79)、7-point Likert scale (1-7)
メディエータ:
課題の凝集性3項目 (Widmeyer, Brawley & Carron, 1985)
社会的凝集性3項目 (Seashore, 1954)
alpha = .93、7-point Likert Scale (1-7)
アウトカム:
チームの満足度 (個人変数) (Van der Vegt, Emans & Van de Vliert, 2001; Chatman & Flynn, 2001) 7-point Likert scale, alpha = .96
ICC (1) =.24, ICC(2) =.62であり、グループの満足度平均値を用いることとした
チームの生存性 (DeStephen & Hirokawa, 1988) 7-point Likert scale, alpha = .89
ICC(1) = .81, ICC(2) = .52であり、グループの満足度平均値を持ちることとした
チームパフォーマンス (0-100)
分析
階層的重回帰分析
仮説1-3では、ステップ1で二種類の対立、ステップ2で対立マネージメント、ステップ3で二種類の対立とマネージメントの相互作用項を投入
仮説4a-4cでは、ステップ1で二種類の対立、ステップ2で対立マネージメント、ステップ3で凝集性
仮説5のメディエーションは、Baron ' Kenny (1986) に基づき、①プレディクタがアウトアムと相関し、②プレディクタがメディエータと相関し、③メディエータがアウトカムと相関し、④メディエータを統制するとプレディクタトアウトカムの関連がなくなることで示した
結果
平均値、標準偏差、zero-order correlation
仮説1-仮説3の検証
課題の対立、関係性の対立は、凝集性 (結束) に影響しない
対立のマネージメントによって凝集性 (結束) は促進される
関係性の対立は、対立のマネージメントがなされない条件の下では、のちの凝集性 (結束) を抑制する (下図左)
課題の対立は、対立のマネージメントがなされない条件の下では、のちの凝集性 (結束) を促進する (下図右)
(とても面白くて、対立のマネージメントが対立の結束に及ぼす影響を調整していて、課題の対立の場合は関係性に影響がでないならば自律的な解決を促すほうがチームの結束力が高まる)
仮説4・5の検証
グループの凝集性 (結束) は、のちのパフォーマンス、満足度、チームの生存性を高める
課題の対立、関係性の対立とアウトカムの関連をグループの凝集性がメディエートするという仮説については、プレディクタがいずれもチームの凝集性 (結束) と関連しないため、支持されなかった
しかし、対立とマネージメントのインタラクションについていえば、チームの凝集性は、対立とマネージメントのインタラクションとアウトカム (生存性と満足度) の関連をメディエートする傾向があった (p<.05, p<.10 respectively)
文献
Amason, A. (1996). Distinguishing the effects of functional and dysfunctional conflict on strategic decision making: Resolving a paradox for top management teams. Academy of Management Journal, 39, 123-148.
Baron, R. M., & Kenny, D. A. (1986). The moderator–mediator variable distinction in social psychological research: Conceptual, strategic, and statistical considerations. Journal of personality and social psychology, 51(6), 1173.
Carron, A. V., Brawley, L. R., & Widmeyer, W. N. (1998). The measurement of cohesiveness in sport groups. In J. L. Duda (Ed.), Advances in sport and exercise psychology measurement (pp. 213-226). Morgantown, WV: Fitness Information Technology.
Carron, A. V., Widmeyer, W. N., & Brawley, L. R. (1985). The development of an instrument to assess cohesion in sport teams: The Group Environment Questionnaire. Journal of Sport and Exercise psychology, 7(3), 244-266.
Chang, A., Bordia, P., & Duck, J. (2003). Punctuated equilibrium and linear progression: Toward a new understanding of group development. Academy of Management Journal, 46(1), 106-117.
Cohen, J., Cohen, P., West, S. G., & Aiken, L. S. (2013). Applied multiple regression/correlation analysis for the behavioral sciences. Routledge.
Cosier, R. A., & Dalton, D. R. (1990). Positive effects of conflict: A field assessment. International journal of conflict management, 1(1), 81-92.
DeChurch, L. A., & Marks, M. A. (2001). Maximizing the benefits of task conflict: The role of conflict management. International Journal of Conflict Management, 12(1), 4-22.
De Dreu, C. K., & Weingart, L. R. (2003). Task versus relationship conflict, team performance, and team member satisfaction: a meta-analysis. Journal of applied Psychology, 88(4), 741.
De Dreu, C. K., Weingart, L. R., & Kwon, S. (2000). Influence of social motives on integrative negotiation: a meta-analytic review and test of two theories. Journal of personality and social psychology, 78(5), 889.
Folger, R. (1977). Distributive and procedural justice: Combined impact of voice and improvement on experienced inequity. Journal of personality and social psychology, 35(2), 108.
Gersick, C. J. (1988). Time and transition in work teams: Toward a new model of group development. Academy of Management journal, 31(1), 9-41.
Jehn, K. A. (1995). A multimethod examination of the benefits and detriments of intragroup conflict. Administrative science quarterly, 256-282.
Montoya-Weiss, M. M., Massey, A. P., & Song, M. (2001). Getting it together: Temporal coordination and conflict management in global virtual teams. Academy of Management Journal, 44, 1251-1262.
Murnighan, J. K., & Conlon, D. E. (1991). The dynamics of intense work groups: A study of British string quartets. Administrative science quarterly, 165-186.
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Seashore, S. E. (1954). Group cohesiveness in the industrial work group. Ann Arbor: University of Michigan.
Tekleab, A. G., Quigley, N. R., & Tesluk, P. E. (2009). A longitudinal study of team conflict, conflict management, cohesion, and team effectiveness. Group & organization management, 34(2), 170-205.
Tuckman, B. W. (1965). Developmental sequence in small groups. Psychological bulletin, 63(6), 384.
Van De Vliert, E., Euwema, M. C., & Huismans, S. E. (1995). Managing conflict with a subordinate or a superior: Effectiveness of conglomerated behavior. Journal of applied Psychology, 80(2), 271.
所管
対立マネージメントを、問題を明確にして積極的に意見を交換し合い、各自の意見の相違を把握して解決を図る方法としてとらえたとき
対人関係の対立は、マネージメントがなされない場合にはチームを破壊してゆき
課題の対立は、過干渉となるほどチームを破壊してゆくことがわかった
これは面白いことだが、マネージメントの方法として一種類では比較検証できない点が納得できない
また、実際の職場はもっと陰湿なので、学生ではなく職場を対象にした研究を知りたい
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