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【心理的 (心理学的) 安全性が組織に及ぼす効果】Psychological safety: The history, renaissance, and future of an interpersonal construct.

概要

心理的安全性は、職場などの特定の状況で対人関係のリスクの結果に対する人々の認識を示している。心理的安全性は、1960年代に先駆的な組織心理学者により初めて研究され、1990年代にルネサンスを迎えて現在に至っている。
組織心理学研究では、音声、チームワーク、チーム学習、組織学習などの現象を理解する上で、心理的安全性が重要な要素であることが知られている。心理的安全性の性質を理解し、それに寄与する要因を特定し、それが個人、チーム、組織に及ぼす影響を調査することに焦点を当てた、概念的・実証的な研究が増えている。
本論文では、先行研究をレビューして統合し、将来の研究の方向性を提案する。
まず心理的安全性研究の初期の歴史を簡単に概説し、次に現代の研究を個人、グループ、組織レベルの分析で考察する。

(研究ではないが手始めによむ)
(わかってきたがもう少しよむ)

問題と目的

  • 心理学的安全性は、職場のような特定の文脈で対人的なリスクを負った結果としての人々の感じ方をさしている

  • 心理学的安全性は、組織において人々がどのように共有された目標を達成するために協力するか理解するための重要な要素と考えられている (Edmondson, 1999)

  • 例えば、従業員が情報や知識を共有する理由 (Collins & Smith, 2006; Siemsen et al., 2009)、組織改善の方法を率直に話す (Detert & Burris, 2007; Liang et al., 2012)、新たな製品やサービス開発のイニシアチブをとる (Bear & Frese, 2003) などの理由を説明する

  • ほかにも、心理学的安全性は、チームと組織の学習 (Bunderson & Boumgarden, 2010; Carmeli, 2007; Carmeli & Gittell,2009;
    Edmondson, 1999; Tucker et al., 2007) 及びパフォーマンスの向上につながる (Carmeli et al., 2012; Collins & Smith, 2006; Schaubroeck et al., 2011)

  • 心理学的安全性は1960年代に初めて言及された

  • 基本的に、不確実性や変化に伴う対人関係のリスクを減少させるものとして指摘された (Schein & Bennis, 1965)

  • 本論文では以下、心理学的安全性研究の初期の歴史を簡単に振り返り、その後、探索方法を記載する。次に、個人、組織、グループレベルの分析で現代の研究を検討し、知見を評価し、論争やギャップに注意を払う

  • 次に未解決の疑問と今後の研究で探求すべき方向性を特定する

歴史

  • 心理学的安全性の愛年は、組織を変えるために必要な要素に関する探究にルーツがある

  • 初期の議論は前述したとおりであり、その後Schein (1993) が、心理的安全性は人々が期待や希望に反するデータを提示された際に生じる防衛や学習への不安に打ち勝つのを手助けすると指摘した

  • そして、個人は共有のゴールに焦点付け自己防衛に走るのではなく問題の予防に取り組めるとした

  • (すなわち、組織や上司あるいはチームメイトが問題に直面した際に、組織として問題を直視して打開するためにディスカスできるか、それとも名誉職の肩書をもつものやそれに固執するものによくあるように、捏造改ざんなどの不正に手を染めたり、社会に公開できないような倫理違反を行ったり、あるいは法令違反に足を踏み入れ隠ぺいするような結果になるということである)

  • (読者の一部は不正・倫理違反・法令違反を行っているだろうから、まず自らそれに気づき、改める勇気をもっていただきたい)

個人レベルの心理的安全性

仕事に関するもの

  • Kark & Carmeli (2009) によれば、心理的安全性はバイタリティーを介して創造的な仕事に影響を及ぼした

  • Siemensen et al (2009) は、心理的安全性と情報共有の関係が、自信が強いほど弱まるというモデレート効果を証明した。すなわち、自信があると心理的安全性に乏しくても情報共有するが、自信がないと心理的安全性に乏しいと情報共有しにくくなるという条件を示している

提言などに関するもの

  • リーダーシップは心理学的安全性を介して提言行動に影響を及ぼす (Detert & Burris, 2007; Walumbwa & Schaubroeck, 2009)

  • 近年、Liang et al (2012) は提言行動を、職場環境を改善しようとするものと、組織に害を及ぼす可能性のある既存または差し迫った慣行・インシデント・行動にかんする禁止を求めるものに区別するよう提案し、心理学的安全性が禁止を求める提言と関連することが明らかになった

  • また、Detert & Edmondson (2011) は従業員が提言を行わない背景にある思考をImplicit Voice Theories (IVTs) とし、心理学的安全性がIVTsを抑制し (つまり提言を抑制する思考を抑制する)、さらには心理学的安全性はメディエーターではなく提言の先行条件であることを示した

  • ただし、IVTsは心理学的安全性と独立して提言を抑制する効果を持つことも示されている (Detert & Edmondson, 2011)

(少なくとも、まずはこのIVTsの抑制や心理的安全性が担保されて従業員が組織に建設的なあるいはprohibitiveな意見を述べることを組織や団体が求めているか示されているデータが必要となる

組織レベルの心理的安全性

組織パフォーマンスに関するもの

  • Collins & Smith (2006) は、コミットメントを基盤とするHRの実践を行い、組織の信頼、協力、共有規範の風土はすべて企業のパフォーマンスに影響を及ぼし、その影響は知識労働者間のアイデアと知識の交換の組み合わせにより部分的に媒介されていた

  • またBaer & Frese (2003) は、イニシアチブと心理学的安全性は企業のパフォーマンスと関連し、それらはイノベーションのプロセスと企業のパフォーマンスの関連をモデレートした (したがってパフォーマンス向上を目的とする組織改革を行う際には心理学的安全性の形成がアウトカムに影響を及ぼす)

組織の学習に関するもの

  • Carmeli et al (2009) は、企業における失敗からの学習、心理学的安全性、および質の高い労働関係の関連を調査し、質の高い労働関係は心理学的安全性と相関し、心理学的安全性はアウトカムである失敗からの学習との関係を媒介した

  • Carmeli & Gittel (2009) は、上述したのと同様の結果を反復して示した

  • Carmeli (2007) は外部・内部ソーシャルキャピタルが心理学的安全性を媒介して失敗からの学習に影響を及ぼすことを示した

  • Catalodo et al (2009) はシングルケース研究ではあるものの、組織の変革に際し、変化が定着するためには、変化のプロセスを通じて従業員が自分の心理学的な状態が保証されていると感じる必要があるとしている

  • (量的に示された研究では、組織が失敗から学習するためには心理学的安全性が促進条件となることを示している

集団レベルの心理学的安全性

先行要因としての心理学的安全性に関するもの

  • Huang et al (2008) は、心理学的安全性がチームの学習を媒介してチームパフォーマンスを促進することをしめした。同時に、実験・討議・意思決定を通じたオープンなコミュニケートを行える能力がチームパフォーマンスの成否を決めることも示した (とあるがこれは学会発表資料のため参考にならない)

  • Tucker  (2007) は、心理学的安全性は、How学習を媒介してチームの成功に影響を及ぼすことを示した

  • 一方、Choo et al (2007) は、心理学的安全性は創造的な知識に影響を及ぼすが、学習行動には影響を及ぼさず、ひいては品質の向上に影響を及ぼすことを示した。すなわち、心理的に安全な環境は、多様な発想、創造性、リスクテイクを可能にし、探索的かつ深化的な学習への参加を動機づけることでチームパフォーマンスを促進する

  • Tucker (2007) は看護師を対象に調査を行い、設備や情報の欠落などの運営上の失敗は驚くほど一般的に生じており、心理的安全性と問題解決効力感の双方が、そのような失敗の減少を目的とする改善行動に影響を及ぼすことを明らかにした

  • Mu & Gnywali (2003) はアメリカの学部生を対象に調査を行い、課題の葛藤知識の発展に悪影響を及ぼし、心理学的安全性がそれを緩和することを示した。つまり心理学的安全性が高いと、グループパフォーマンスに対する学生の認識が大きくなり、パフォーマンスの葛藤による悪影響が軽減されることが示された (学生調査なのであまり深追いしない)

メディエータとしての心理学的安全性

  • Faraj & Yan (2009) は、バウンダリーワーク (渉外行為) が心理的安全性を形成すること、その際には課題のあいまいさと資源不足が条件になることを示した

  • Edmonson (1999) は、工場の従業員を対象に、組織の要因とチーム学習の関係を媒介すること、チーム学習はチームのパフォーマンスを自記式及び管理者・顧客評定のいずれも予測することをしめした

  • Nembhard & Edmondson (2006) は、ICUのスタッフを対象に、チーム内の職種における位置づけが高いほど心理学的安全性が高まり学習・質の改善活動への取り組みが促されることを示した。またこの職種ヒエラルキーと心理学的安全性の関係は、ICUのチームリーダーによってインクルーシブなリーダーシップが発揮されるほど緩和されることをしめした (補足:ICUで例えば看護師のように役割の位置づけの低いものほど心理学的安全性が脅かされて学習や改善活動が形成されにくくなるが、チームリーダーがメンバーを差別せずインクルーシブなリーダーシップを発揮するほど組織内での位置づけによる効果がなくなってゆくということ)

  • Chandrasekaran & Mishra (2012) は、チームの自主性と心理学的安全性の正の相関は、相対的な探索(プロジェクトにおける活用目標よりも探索目標が重視される度合いとして定義される)とプロジェクトと組織の指標の整合性が両方とも低い場合に示されることを明らかにした。また、最も注目すべき点は、心理的安全性の向上によりチームの離職率が低下し、研究開発グループのパフォーマンスが向上した点であった (重要なことなのに文章が意味わからないので原典を読む→組織に制約されずチームのプロジェクトや目標が優先される条件の下では、心理学的安全性とチームの自主性の間に正の相関があるという意味だった)。

アウトカムとしての心理学的安全性

  • 心理学的安全性は組織間で異なり、また同一組織内でもチーム間でことなる。個人の要因として心理学的安全性に影響を及ぼすものは、気に病む傾向であった (抑制的に作用する) (Edmondson & Mogelof, 2005)

モデレータとしての心理学的安全性

  • 心理学的安全性は、例えば目標の明確さ・学習への意欲と、学習・パフォーマンスの関連をモデレートすることが知られている (Burke et al., 2006; Edmondson 2004)

  • 近年の研究ではさらに、心理学的安全性は、チームの多様性とチームイノベーションの関連をモデレートすることが強調されている (Bradeley et al., 2012; Gibson & Gibbs, 2006; Kirkman et al., 2013; Leroy et al., 2012)

  • 例えば、Gibson & Gibbs (2006) は、地理的な隔離、電気の依存、流動的な構造、国籍の多様性がイノベーションを抑制するが、心理学的安全性がその抑制効果を緩和することをしめした (すなわちイノベートを目的とする際には心理学的安全性が必要であることが繰り返し指摘されている)

  • また、Leroy et al (2012) は、ベルギーの病院職員を対象に、リーダーによる安全管理行動とミスの数の関係を、チームの心理学的安全性がモデレートすることを示した。すなわち、チームメイトがミスや危険な事態に対して発言できる雰囲気が組織やチームの安全管理行動の効果を促進してミスが抑制されることを示している

  • さらに、Bradley et al (2012) は、心理学的安全性が、課題の葛藤がチームパフォーマンスの向上につながる関係をモデレートすることを示した。

(総じて、心理学的安全性は、組織が発展してゆくためのイノベートあるいはパフォーマンスの向上に際し、従業員やメンバーが問題点への言及や批判または創造的な意見をのべられる環境を提供することで寄与していると考えられており、実際にデータで裏付けられているといえる
(したがって、あなたが関与している捏造改ざんなどの不正・倫理違反・児童生徒や従業員の自殺や多くの離退職などが生じている時点で、組織への批判的・または創造的な提言が行われない雰囲気を象徴していると考えたほうがいい
(そして、その心理学的安全性を解体している要因は、例えばハラスメントなのか、労働基準法違反なのか、心理学的契約の破棄なのか、いじめのように法令に触れない範囲の陰湿な人間関係なのかと焦点づけてゆくのが考えやすいと思われる

心理学的安全性の境界条件

Kostopoulos & Bozionelos (2012) によれば、心理学的安全性とチームの学習・チームパフォーマンスの関連は、課題の葛藤によって促進されることが示されている (これは面白い、安全性が担保されていると困難な課題であるほうがチームの学習・パフォーマンスが促進される)

文献

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  30. Walumbwa, F. O., & Schaubroeck, J. (2009). Leader personality traits and employee voice behavior: mediating roles of ethical leadership and work group psychological safety. Journal of applied psychology, 94(5), 1275.

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