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いくつになっても水彩画は上手くなる

僕が開講している水彩教室に来てくださる生徒さんは、年齢が60~80歳
台の女性の方が大半を占めています。おそらく全体の約70パーセントがこの年齢層だと思われます。
(ご本人に聞いたわけではありませんので、あくまでも推測です。)

その7割以上の生徒さんが、順調な上達のために どのようなお手伝いができるかが、僕の講師としての使命の一つと考えています

その他の年齢の方々に対しても、親身になって考えいますが、アプローチの方法が少し違います。

この年齢層の方々に対しての記事は、またの機会に書きますので、
ここでは、60代以上の方々がいかに楽しく、確実に上達できるかを述べていきたいと思います。


60歳以上の方々が確実に上達するには

60歳以上の方々が水彩画と出会うきっかけは様々です

退職後に趣味として始めたい自宅での時間を有意義に過ごしたいという方々。思考力を維持したい、脳を活性化させたいという方々、あるいは新たな交流の場を求めている方々など、動機や理由は人それぞれです。

どのケースにせよ、水彩は気軽に始めることができ、体力がなくても続けることが可能です。また適度に脳を刺激するという点では最良の選択と言えるでしょう。

しかし、中には、「難し過ぎる」「なかなか上達しない」「もっと若い時に始めるべきだった」と思う方も決して少なくありません。

しかし気持ちを落とす必要は全くありません。
なぜなら、人生経験があるからです。

他の年齢層より豊かな歴史があり、人生の機微を知り尽くしているからです。

年月が紡ぐ物語や微細なエピソードを、絵の具の一滴に込めることができたら、どんなに素晴らしいことでしょうか。

その一筆一筆からは、若者にはない深みと温かさがきっと伝わることでしょう。

水彩画は遅すぎることなど決してありません。新たなるアートの旅が、ここから始まるのです。

ですが、そうなるためには条件があります。
次にあげる3つことを実行してみてください。
確実に上達すると僕は確信しています。

1,目標の設定が大切

年齢を重ねるにつれ、作業のスピードが遅くなり、効率が落ちることは珍しくありません。これは誰にでも起こり得ることですが、ただ何もせずにいるだけでは上達は望めません。

「楽しく描ければそれで十分」という考え方は勿論ありますが、できるなら上達することが良いに決まっています。
では、どうすれば効果的に上達し、楽しく充実した水彩画の世界を楽しむことができるでしょうか。

それは「目標の設定」です。

これを決めずに水彩を習得しようとしても、とても効率が悪いのです。
まるで目的地を決めないで旅行に出るようなもので、道に迷いながら右往左往することになるのが目に見えてしまいます。

目標の設定が何かということですが、「どんな水彩画を描けるようになりたいか?」これを決めることが大切です。そして出来るだけ具体的にです。

例えば、「有名な水彩画家、○○のような水彩画を描きたい」とか、「水彩画らしい軽やかな作品を描きたい」「穏やかで のどかな和風の絵を描きたい」「メルヘンチックで可愛い絵を描きたい」など具体的にイメージすることです。

藤沢教室の生徒さんの作品(70代男性の水彩画)

そうすることで、迷いながら描く時間が確実に減り、効果的な学習が可能になるでしょう。
ゴールを決めるか否かでは、今後の制作活動に大きな差が出ることは間違いありません。

藤沢水彩教室の生徒さんの作品(70代女性の水彩画)

ここで自分がどんな絵を描けるようになりたいか、幾つかの例を挙げますので参考にして頂きたいと思います。

・色を重ね過ぎない軽やかで爽やかな水彩画
・にじみを多用した優しく柔らかな雰囲気の水彩画
・色彩が穏やかで配色が美しい水彩画
・立体感のや遠近感のあるリアルな水彩画
・のどかで安らぎを感じさせる風景画
・おごそかで雅を感じさせる水彩画
・旅先のちょっとした時間に描く、サラッとしたスケッチ
・ゴッホのような情熱的でエネルギッシュな作品
・○○先生のようなメルヘンチックな作品


目標の設定がなかなか決まらないという方は、とりあえず漠然としたイメージでも構いません。とりあえず決めた方が良いでしょう。

目標に見合うレッスンをする

目標の設定が出来たら、次はその目標に向かってどのように進んでいくかを考えます。

例えば「水彩画らしい軽やかな作品」を描きたいなら、重ね塗りを少なくすれば透明感のある作品になるでしょうし、滲みを多用すれば柔らかく爽やかな雰囲気になるでしょう。

「色彩と配色が美しい水彩画」を描きたいなら、色相(色の並びや仕組み)を覚え  混色を楽しみめば、 徐々に望み通りの作品になって行くでしょう。

「安野光正先生のようなメルヘンチックな水彩画」を描きたいなら、彼の作品や画集を何度も鑑賞し、模写をすることで、自然とイメージする作品が描けるようになるでしょう。

安野光雅「旅の絵本」


目標に少しでも近づけたら大きな自信になる

目標に見合うレッスンが一つでも上手く行ったら、大きな自信に繋がるでしょう。小さな積み重ねをして行くことで、いつの間にか上達しているに違いありません。

目標を見失ってしまったら

また、目標の設定は何度でも変更して構いません。人は変化する生き物ですから、時間の経過とともに考え方や気持ちが変わることはよくあることです。
重要なのは、その時々で楽しみながら集中することです。


2.優雅なひと時を楽しむ

水彩画は、時間をかけて集中して制作することが多いため、ストレスが溜まりやすくなることは否定できません。
そこで描く時間が贅沢で優雅なひと時になるように心がければ、効果的な学習に繋がっていくでしょう。

優雅に過ごす時間をつくる

例えば、午後のひと時にゆったりとした音楽を流しながら、自分だけのクリ
エイティブな空間を作り上げることができます。
また、お気に入りの窓際に座って、光の差し込む風景を眺め、紅茶でも飲みながら描くことも、優雅なひとときを楽しむ方法のひとつです。

これが習慣化すれば、「水彩画を描くこと=心地よさや満足感をもたらすもの」と自分の脳が判断するようになりし、今よりもずっと楽しく特別なものへと変化していくことでしょう。


3,好奇心を持ちつづける

水彩画を習得していく上で、好奇心を持ち続けることは非常に重要です。

新しい技法やアプローチを試してみたり、異なるスタイルに挑戦することで、クリエイテブな感性が身について行きます。

好奇心は水彩画に対してだけではありません。
世の中のあらゆることに興味を抱くことで、広い視野と深い洞察を培っていけることでしょう。

身近なものに興味を持つ

スーパーで買った野菜が、「今朝のものと 先週買ったものとでは、艶や鮮やかさが全然違う」と、気が付く主婦の方は とても多いと思います。

では次の事に関してはどうでしょう。
例えば空と雲。「今日の天気は?」と何気なく見たりはするものの、それ以上はあまり深く考えないのではないでしょうか。

しかしよく観察すると、空の色が季節や時間帯によって全然違いますし、雲の種類によって陰影の濃さが驚くほど異なります。

毎朝歩いている散歩道ではどうでしょう。
散歩の途中で目にする様々な物や現象を深く感じ取っているでしょうか。
朝ならではの空気の香りに気づいたり、先週は咲いていなかった花が開いていたり、遠くで遊ぶ子供たちの声や小川のせせらぎが聞こて来たり、ちょっと注意深く歩いているだけで、様々なことにを感じ取ることができます。


冷たい飲み物をよく観れば グラスに付いた水滴が涼し気で美しかったり
氷の輝きや水滴がゆっくりと流れ落ちる様子に心を奪われたりすることでしょう。

このように、日常の中にもたくさんの魅力が隠れています。身近なものに意識を向け、瞬間を大切に捉えることで、新たな発見や感動が広ががって行きます。

非日常的な空間に触れる

普段私たちが接している生活空間だけでは、新鮮さという点では少し物足りないかも知れません。そこでいつもは接することない非日常的な空間に身を置くことを提案します。

旅行に出れば大自然や非日常的な空間を満喫できるのは言うまでもありませんが、なかなかそういった機会がありませんので、以下に手軽に楽しめる環境や空間をご紹介します。

例えば美術館に足を運ぶことも、好奇心を育てる手段の一つです。
美術館ではさまざまな作品に出会えるため、異なるアーティストの視点や表現方法に触れることで、自身の制作に新たな刺激を得ることができます。
そして広々とした美しい空間が、脳をより刺激し活性化させることでしょう。

国立新美術館(東京・六本木)

その他、刺激的で創造的、且つ安らぎを感じさせる
スペースを幾つかあげてみます。

大きなテラスのあるカフェスペース
・歴史的な建造物や史跡
・お祭りや地域のマーケット
・ホテルやショッピングモールにある中庭
・フラワーパークやお洒落なガーデン
・水族館や動物園

上記のような場所やスペースは、私たちに新たなインスピレーションやエネルギーを提供し、心の中に安らぎと喜びをもたらしてくれることでしょう。

いかがでしたか?

水彩画を学ぶことや楽しむことに年齢制限はありません。
逆に、年齢を重ねることで深まる感性や経験が、より豊かな作品づくりに繋がって行くと感じています。

年齢にとらわれずに水彩画の世界に飛び込むことで、新たな刺激や発見があり、クリエイティブな感覚を育むことでしょう。

長い記事を最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
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