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新型車を徹底解析してホンダの今を読み解く【WR−V】

1.なぜかとても気になる車

昨年の暮あたりからかYouTubeをはじめネットで盛んに見るようになり、最近TVCMも見るようになったホンダの新型SUV、WR−V。実は私一昨年4月にホンダのフィットe:HEV 4WDを購入して、初めてホンダ四輪のユーザーになりとても気に入って乗り回しています。そして以前SUV欲しいhttps://note.com/sukaenjin/n/n62b12586263b で書いたZR−Vを契約しました。ZR−Vのことは別途詳しく記事にしたいと考えていましたがあれよあれよと時は流れ、ホンダから新たな衝撃が来たわけです。
別にZR−Vをキャンセルしたくなったわけではありません。比較するとWR−VはZR−Vにはあるものが圧倒的に不足しています。
多くの方が指摘する4WDを皮切りにハイブリッドシステム、電動パーキングブレーキ、シートヒーター、ハンドルヒーター、停止までいけるオートクルーズコントロール、全方位カメラなどなど優劣を論じるとスペック上ZR−Vに勝てるところがラゲッジルームの容量ぐらいしか見当たりません。しかしとても気になるのですWR−Vが、気になって気になってお世話になってるホンダディーラーに年末の超多忙時にカタログいただいて話を聞きに行ってしまったほどです。
なぜ気になるのか、ここしばらくネットに上がっている情報を収集してわかってきました。そのあたりを整理して記録に残したいという思いが強くなり以下に記事として書いていこうと思った次第です。

2.今までのホンダになかった本格インドカレー・ライステイスト

WR−Vのデザインについて昔のホンダが帰ってきたと称賛される声も聞きますが、ホンダのテイストは昔から割りと一貫してバタ臭い欧米っぽさにあると思っています。ただし欧米メーカーのデザインをまるっきり真似てしまうのではなく、よく咀嚼して消化してから出力するので一見すると元ネタがわからない「他にはないものを造る」ということになっているのだと思います。
ZR−Vもそのグリル形状からマセラティみたいとの意見もありますが、マセラティのレバンテ、グレカーレよりも全体的なフォルムとしてはメルセデス・ベンツGLAのほうが似ていると思いました。どちらにしても近年のヨーロッパの流れを上手く取り込んだデザインだと思います。
対してWR−Vは水平基調と四角い(スクエア)なフォルムはホンダの最近のデザインの流れから外れ、他のモデルと全く異なるデザイン文法を採ったことが見て取れます。私はトヨタランドクルーザーの無骨なテイストを感じます。WR−Vを生産するインドの環境に最適化させて設計したのではないかと推測します。インド製で思い起こされるのはまずスズキ、四輪ではバレーノ、二輪ではジクサー、ホンダは二輪のGB350、どれも実際に見ると骨太で無骨。安物っぽいのではなく安いんです、それでいてどんな高級車が隣に来ても全く遠慮することのない骨太の輝き、実際インドではストリートを自信たっぷりに縦横無尽に走り回っているのではないかと思います。そんなオーラは今までのホンダ車では感じたことがありませんでした。
これは食べ物に例えるならばここ数年で日本でよく見かけるようになった本格インドカレー・ライス。こういったカレー屋さんは実はインドではなくその隣のネパールから来ているようですが、日本にはないテイストそして洋食とも違う独自のテイストを提供してくれています。しかし日本人からしたら本格インドの味と思わせるカレー・ライスは実は結構日本人向けに調整されたものらしいです。一時期毎週飲みに通っていたインドネパール料理屋さんで教えてもらいました。WR−Vもインド本国では車名はエレベイトですし日本向けに色々調整してあるのも本格インドカレー・ライスと通ずるものがあると感じます。

3.WR−Vの日本市場へのローカライズ

ホンダのデザインに一貫性がないように命名の法則にも一貫性がなくこのモデルとは別のインドネシアで製造販売されるまた別のWR−Vが存在するややこしさ。インド製日本仕様のWR−Vはほぼヴェゼルと同じ大きさの車格、今回の新発売の報に対してこの大きさに対するネガティブな意見も結構見かけました。しかし私はこのサイズこそホンダが売りたい層に向けてのベストサイズの提案だと思います。
「WR−V」というネーミングは日本にはインド製「エレベイト」を持ってきていますが、インドネシア製の全長約4mの更にコンパクトな「WR−V」を名乗る別モデルが存在します。このインドネシア製モデルを日本に導入してほしいという声も多いようですが、インド製モデルのサイズとデザインの方が日本市場にふさわしいとホンダが判断し日本のユーザーに提案したのだと思います。
全長4mクラスは年々肥大化するボディサイズに疑問を覚えコンパクトサイズこそ狭い日本にはジャストとの考えに適合するかと思われますが、日本の道を走行するのに重要なのは長さよりも幅です。インドネシア製モデルも幅は1.78mとインド製モデルの1.79mと10cmしか差がありません。埼玉県、茨城県、千葉県の田園や河川敷道路を走っているとよく出くわすのが速度抑制のために幅員を1.9mに絞ったポール付道路、これはたいてい柔らかなゴム製などではなくコンクリート製や鉄製のガチで車を傷付けてくるタイプなのでサイズによってはミラーを折りたたんで慎重に走行する必要があります。近年の幅1.9近い大型SUVはミラーを折りたたんでも通れないかもしれません。車幅1.7m未満の5ナンバーサイズは日本のインフラをそれに合わせて造りあげていく効果がありましたが、世界標準で見た場合、それこそガラパゴス的に取り残されていく原因にもなっています。今やアメ車はもちろん欧州車や日本メーカーの海外生産車でも5ナンバーサイズに適合する車は稀です。
今後は車幅1.8m未満であればコンパクトと言われそうです。そして長さ4mは正直荷室にゆとりがあるとは言い難く、荷物をたくさん積んでレジャーに出掛けるSUVとしての使い勝手はスポイルされてしまうと思います。そして今のホンダには珍しい角張った押し出しの強さを感じるデザイン、ホンダがインドモデルを日本市場に導入しようと考えた理由はこのあたりにあるのではないかと思いました。
そしてこのインド製「WR−V」は、開発当初から日本市場への導入を考慮していたと感じます。販売前からのプロモーションへの力の入れよう、開発者がこのクルマに込めた想いがしっかりとアナウンスするところなど、日本人へクルマに対する新しい価値観への提案を見て取れます。
そして細かくて見落としてしまうところですがインドはガソリンのオクタン価がだいたい95と日本のレギュラーガソリンで規定するオクタン価89以上よりも高いのにしっかりレギュラー仕様にしているところにホンダの良心を感じます。最近は海外メインで販売する車種はバイクもクルマもハイオク仕様のままが多いです。これは点火タイミング等のエンジン制御を日本専用に変えるのに開発費用が掛かるのを嫌ってのことと推察されます。今までの日本車にはないオーラを纏いつつもちゃんと日本にローカライズされていることをもっと評価されるべきと思います。

4.WR−Vからの現代日本人へのメーッセージ

このカタログの裏表紙には「自分の「好き」をどこまでも追いかけよう。」と書かれています。私はこの言葉に目頭が熱くなりました。クルマの世界にはヒエラルキー(序列)が昔から存在していて若輩者は大きくて乗り心地の良いクルマには乗れない不文律のようなものがありました。各メーカーにはフラッグシップ(旗艦)と呼ばれる存在があってホンダではレジェンド、日産ならシーマ、トヨタならセルシオ、マツダならルーチェ、スバルならアルシオーネ、三菱ならデボネア、スズキでも時代は下りますがキザシというメーカーの技術の粋を集めた頂点に君臨するクルマが存在しました。
近年のSUVブームを通り越してのなんでもかんでもSUV化の流れにはこのヒエラルキーの崩壊が強く関わっていると私は考察しています。
先に挙げた各メーカーのフラッグシップは全て現在は存在せず、代わりとなるモデルをフラッグシップとしてメーカー自ら宣伝している場合もありますが、昔はミドルクラスだったモデルをフラッグシップとするのは違和感を覚えますし、一般人はフラッグシップの認識も無くなってきていると思います。
WR−VはホンダSUVラインナップの末っ子のように日本のメディアでは言われますが、本国インドでは高級車というポジション、そのため同じホンダのヴェゼルやZR−Vと並べても格の違いは分からないように思います。これはスズキのインド製バイク、ジクサーに試乗したときに初めて感じたのですがクラス(階級)という概念を破壊する骨太な存在感と圧倒的に信頼できる安心感、この製品そのものが閉塞した現代日本人に対する力強いメッセージを発していることを感じ、感動すらしてしまいました。
どちらが上とか下とか偉いとか高級であるかとか本来人間にとって関係ない。他人との比較の中でしか価値を見いだせない人生よりも、自分の「好き」を追求して生きるほうがはるかに幸せな人生でしょう。ZR−Vの「異彩解放」という自由と新しさを感じるクルマからのメッセージに惚れ込み購入契約をしましたが、このWR−Vからは自由さと力強く後押ししてくれる明るいパワーを感じます。
特にインドというのは人口が世界一となり急速にその存在感、影響力を増している元気さがあります。インドのカレーも映画も人を元気にさせるパワーが溢れていてWR−Vにもそんなパワーを感じます。
正直、今ものすごく欲しいです。お金があればZR−Vと並べてとことん使い倒してみたいと考えてしまいます。

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