緩やかに、でも芽生える想い

 テニスは受け身スタートだった。
体型を見かねた職場の先輩が、『何か運動した方がよかろう』と勧めてきたのが『テニス』だった。
体育会系の理不尽な上下関係や無駄なストイックさもなく、同好会とはいえ色気もない。
でも、緩やかな感じがよくて続いている。
ハッキリって下手です。
サーブ打っても入る確率はイチローの打率よりも低い。
それはストロークもそうだし、ボレーがちょっとはマシなくらい。
そんな調子が一年近く続いてるのに辞めないでいるのは不思議なものだ。
普通だったら、すぐにでもラケットを買わされてひたすら打つべしなものと思ってたが、初日早々に『今は買うな』と来て、未だに借り物でやっている。
続ける意思は満々にある。
これはこれで楽しいんだけど....な感情が芽生えている。

『もっと上手くなりたい....』

ごく当たり前のことだ。
初心者でも、サービスエースやらリターンエースが決まれば嬉しい。
ラリーが続くとやってる喜びはとめどもなく上がる。
打ち合いの末に激闘を制するなんてのは憧れる。
試合形式ともなれば、勝ちたくなるのが人情というもの。
勝ってもダブルス組んだ相手の腕で勝てたようなものだから、本当に嬉しいのかと問われると、答えは否になる。
申し訳ない気分が満々。
当然負ければそれが底知れぬ敗北感が重石となってダークサイドに叩き込まれる。
上手くなるにしても時間がかかる。
だとしたら、職場のコーチに頼りっきりという訳にも行かなくなる。
相手の時間を奪うこと、無駄に突き合わせることは避けたい。

『上手くなったらもっと楽しい、勝ったらさらに楽しい』

それはわかってる。
そして、さらに欲目が芽生える。

『いろんな人たちとやってみたい』

職場の人たちだけではマンネリ化するのは必定になる。
気楽にやろうといわれても、実は最年少者のぺーぺー。
相応に気を遣ってしまうのである。
ましてやレベルが違い過ぎる。
そうなると選択肢は決まって来る。
『テニススクールにこっそり通う』になる。
先延ばしにしてきたけど、鉄は熱いうちに打つに限る。
それこそラケットの持ち方や振り方からみっちりと教えてもらうために。
そして集中的に、数多くボールを打って感覚を掴み取るために。
ただし、それでもちょっと事情が変わって来ると思う。
変わった事情の話は別の機会にということで。。
何はともあれ、門は叩かないといけない。
『これは裏切りではない...ただ...テニスをより深く知りたいのだ』と言い聞かせて。

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