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読書感想文 朝井まかて 最悪の将軍

 この作家さん、好き。

 生類憐みの令が悪政であることは私でも知っている。犬公方と言われた徳川綱吉の勅であることも知っている。その綱吉が、妻であり御台所たる信子が、かように考えていたとは。フィクションなのかノンフィクションなのか、どちらとも解釈し得る展開と人に対する洞察力は興味深いものがある。
 加えて、私がこの作家さんを好む理由は何と言っても切れ味の良い文章。サバサバと短いのに、情報と心情が必要なだけ盛り込まれていて感情移入出来てしまう。無駄がないだけではない、私の無駄に長い文章とは対極の、憧れと言う類のものかもしれない。例えば…と、したことのない引用をしたくなるような心を打つ表現が少なくとも2つあったのだから。
 以前に輪舞曲という本を読んで朝井まかて氏を知り、また読もうと思って手にとったのがこの本だった。時代小説であるが故の内容の難しさを最初は感じたが、読み進めるにつれ段々と引き込まれていって読書が楽しかった。私の女性作家苦手意識を払拭させてくれそうなインパクトを与えてもらった。
 この本を手元に残したいとは思わない。しかし、朝井まかて作品はまた読みたいし、出来ればもう少し現代に近い内容を読んでみたいと思う。

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