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読書感想文 東野圭吾 殺人の門

 人を不幸にする嫌な人の長い話、612ページ。

 あいつが主人公をはめた手段は、不幸の手紙、賭博、ネズミ講、詐欺、美人局、株の不正取引。主人公は小学生の頃からことごとくあいつの口車に乗せられて痛い目を見続けているのだが、読んでいるこちらとしては、「あーどうして騙させるかなー」「こんなの上手くいく訳ないのにー」「いい加減気付いてくれよー」と都度やきもきさせられる。なのに主人公は騙され続けるから、読者は胸糞から600ページ近くも抜け出せないことになる。
 こんなにやきもきしてイライラしてしまうのは、どこか他人事とは思えないからかもしれない。ここまで酷く騙されたことはないけれど、もしあいつみたいなやつが身近にいたら、知らぬ間に騙されているのだろうか。私が当事者だったら、読者としての私のように客観視できるだろうか。現実の私は不安を感じていたのかもしれない。発表から20年以上の時を経ているはずだが、現在報道される詐欺とリンクしているようにも感じられる。そんなリアリティがある悪を書くことができる東野圭吾氏はやっぱりすごいという結論にしようと思う。私がすべきことは、詐欺にかからぬよう普段から警戒を怠らないことだと学んだ。
 最後の伏線回収は見事だった。途中で離脱しようかと思ったりもしたが東野圭吾らしさが待っていた。最後まで諦めなくてえらかった、私。
 この本を手元に置こうとは思わない。しかし、私の知らない東野氏を知れたし学びもあった。やっぱりとっておこうかな、記念に。
 

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