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【感想】エンジニアリング組織論への招待 ~不確実性に向き合う思考と組織のリファクタリング

社内で良書と話題だったので手に取りました。かなり読み応えがある本でした。タイトルに「エンジニアリング」というワードがありますが、エンジニアだけを指している言葉ではありません。PMやPOなどシステム開発に携わる全メンバーに刺さる本な気がします。

全体まとめ

システム開発の経験がある方ならこんなモヤモヤを経験したことがあるので
はないでしょうか。

なぜ、いつまでも堂々巡りの議論をしてしまうのか。
なぜ、 上司と部下のコミュニケーションは失敗するのかなぜ、イケてるはずのアジャイルやリーンがうまくいかないのか。
なぜ、プロジェクトは炎上し、 スケジュール通りに終わらないのか。
なぜ、技術的負債が問題となるのか、 その正体はなんなのか。
なぜ、経営者とエンジニアの認識が食い違うのか

エンジニアリング組織論への招待

共感できた方はこの本を手に取ってみると良いのではないかと思います。上記のモヤモヤは「わからない」ことに対する不安です。
「わからない=不確実性」をどう扱うかを本書では深く掘り下げていきます。

「わからない」ことが悪い事ではありません。方針を決める段階で細かなことは決まっていなくてもその後より具体的にしていけば良いのです。

明確な答えが本にあるわけではなく、どう不確実性と付き合うかということが書かれており、時代を選ばず勉強になる本だと感じました。

各章の要約ではなく、読んでみて勉強になった思った項目を掘り下げて感想を書きたいと思います。

コントロールできるもの/できないもの

このようなモヤモヤはよく聞く不満なのではないでしょうか。

「自分の上司が自分の仕事をあまり評価してくれない」 「嫌いな同僚が同じ チームにいる」 「新入社員が「ゆとり」で全然仕事ができない」など、 居酒屋で毎夜 繰り広げられているような様々なケース

エンジニアリング組織論への招待

わたしも友人から職場の愚痴で同じようなことをよく聞きます。このような日常的に発生するモヤモヤは大抵すぐ解決しません。「我慢」しようと思っても1度感じたことは心の中を支配して、思考を止めてしまいます。

たとえば、「上司が自分の仕事を評価してくれない」というケースであれば

【コントロールできない】
・上司の自分に対する内心での評価
・上司の評価基準
【コントロールできる】
・上司の評価基準を詳しく聞くという行動
・上司の評価基準に合わせた自身の行動の変化
・上司を変えるための異動などの行動
・自分の仕事を上司に詳しく説明するという行動

エンジニアリング組織論への招待

上記のように「コントロールできるもの/できないもの」を意識し、他人を変えるのではなく自分の行動を変えることが心を楽にしてくれます。

自ら考える人材を作るためのテクニック

自ら考える人材をどう作るのか?という疑問と同時に自分が自ら考える人材なのか・・?についても考えさせられるトピックでした。

会社の中で自律的に動けない人間であっても、他のコミュニティでは自律的に行動しているケースもあります。ここで思うのは、会社で自律的に動けないのは組織の構造が関係しているのではないかということです。

また、もともと自律的に提案をして熱意を持っていた人間であっても、繰り返し提案が無限に却下され続けると熱意を失い何をしても無駄だと依存型になってしまうこともあります。

このような組織的な負のスパイラルをなくし「自ら考える人材を作る」テクニックがメンタリングです。

本書ではメンタリングに関するテクニックがいくつか紹介されているので、興味ある方は2章をぜひ読んでいただきたいと思います。

「悩む」と「考える」の違い

メンタリングを進めていくにあたって、メンターはメンティが「悩んでいる」のか「考えている」のかを判断することが重要です。

「悩んでいる」というのは、頭の中に様々なことが去来し、ぐるぐると思考が巡り続 け、もやもやがとれない状態です。非常に苦しい上、生産的では
ないので「頑張っている」ように感じるわりに結果が伴いません。

一方で、「考える」ときには、メモ帳やホワイトボードなどに課題を書き出し、分 解したり、 抽象化したり、具体化したりといったことや、次に進むために必要な情報 を書き出して調査したり、様々な事例や論文を調べたり、数値分析をしたり、関連す るアイデアをクリップしたり、 本を探しに行ったりと、何かと忙しく行動をとってい ます。

エンジニアリング組織論への招待

これは「確かに。」と感じました。どちらも頑張っているのに結果や中身が全然違うので「悩んでいる」のか「考えている」のか意識し、悩んでいるのならすぐに他のメンバーに相談したりメンティが「悩んでいる」ときに相談しやすい雰囲気作りが大事だと感じました。

空っぽのコップにしか水は入らない

傾聴することの大事さを感じたトピックです。

あなたが話を聞いて一瞬で思 いく解決策は、彼自身ももしかしたら思いついているかもしれません。 解決策が思 いついていても、頭の中が 「迷い」「不安」などでいっぱいに埋め尽くされてしまっ 「ているので、「悩み」 になっているのです。そのような状態では、あなたの言葉はメンティに響くことはなく、受け取られないでしょう。

エンジニアリング組織論への招待

確かに、困っている人がいたらすぐに自分が思う答えを言いがちでした。しかし、悩みで自分のコップが満タンの人が解決策を聞いてもすんなり受け入れられないのではと思いました。(自分にも経験があります)逆に、解決策を提示されなくても話を聞いてもらえただけでスッキリしたという経験もあります。

だからこそ、悩んでいる人にはすぐに回答を言うのではなく傾聴して「話すしてもらう」ことで悩みを整理することが大事なことだと思いました。

アクノレッジメントとストーリーテリング

メンティとどう向き合うか?と考えたときに「褒めて伸ばす」や「共感する」ことの大事さはすんなり理解できると思うのですが、ここで取り上げられている「ストーリーテリング」については意識したことがなかったので、気づきでした。

ストーリーテリングは、メンターからメンティーに対しての自己開示です。メンター 自身の経験から迷いや不安がどう乗り越えられてきたのか、どのように考えてきた のかなどを 「自分を大きく見せる」ことなく伝えることで、メンティー自身も乗り越 えられると感じ、 メンターからも自分と同じ人間であるという理解を獲得することが できます。

エンジニアリング組織論への招待

とあるように「自己開示」が大事なんですね。自分語りにならないか少し心配な反面、自分が教わる側ならメンターの経験を聞いてみたいとも思いました。

終わりに

本当はもっと自分の気づきになったトピックがあったのですが、長くなったのでこのあたりで終わりたいと思います。

自分は普段エンジニアをしているので「コミュニケーションの不確実性」や、「メンタリングの技術」について刺さる部分が多かったですが、本書は幅広い不確実性について触れているため立場によって刺さる箇所が変わる本だなと思いました。

著者が出演しているラジオでエンジニアリング組織論への招待について語っています。より理解が深まったので本を読む前後で聞いてみることをお勧めします。


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