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フィンランドの”インクルーシブ教育”

今回は8日間にわたるフィンランドの教育視察についてまとめていきたいと思う。今回は個人テーマを”インクルーシブ教育の在り方”に絞り学校視察をし、その中で得たことを発信!


教育学部に在籍しているとフィンランドの教育は優れているという話はよく聞く話であり、有名な話では学校にソファーがあるといったことである。
フィンランドという国自体”平等””教育・福祉”というブランディングがされているため、その国の教育方法というものに非常に興味があった。

フィンランド教育での特別な支援とは

根底フィンランドでも日本と同様、特別な支援を必要とする人(slow learner)に必要な支援を学校として提供している。
具体としては支援のレベルを3つに分けており、以下となる(名称は正確ではなく教えてくれた先生の言葉を抜粋)

  1. 全ての生徒

  2. 特別なサポートが必要な生徒

  3. より一層のサポートが必要な生徒

 全ての生徒には、学習面でゆっくりであれば追加の授業や課題などで補填すること。身体面であれば先生がスクールカウンセラーなどに相談して専門的な立場からの支援へアクセスする足掛かりを作ることが行われている。
 特別なサポートとしては少人数の取り出し指導が行われ、先生が別につき授業が行われる。
 より一層のサポートとなると、地域の中心にある大きな学校に行き、執り行われることが多い。先生との1 on 1の授業などもその一つである。

話を聞いていて感じたのは、すべての生徒がサポートされる対象である意識が根底にあることである。
何もないことが普通であり、サポートを受けることは何かハンデを持っているかのような、なんとなく負のイメージが日本には未だあるような気がするが、フィンランドではそのハードルがない、または軽減するような努力をしているように思う。(たとえば学校勤務の心理カウンセラーの先生が各クラスすべての在籍生徒に対してSSTの授業を行っている等)
一方で市内の大きな学校でないと一番サポートを必要としている人に十分なものがいきわたらないというところには日本と同じところを感じる。

図書館にて

Oodiの図書館の様子

プログラム初日は図書館で現地市民へのインタビューをするという内容であった。お話しできた人の中に息子さんが特別支援教育を受けていた人がいて実際の教育の一端を教えていただいた。

フィンランドの特別支援教育において学校のサポートは多岐にわたる。1人の生徒に対して関わる人数は多く、担任・サポーター教員・主任・カウンセラー・医療関係者・学校長とほかにもまだ複数人が関わっていた。保護者・教員間の相談会は頻繁に行われており随時内容に合わせてサポートを変えていた。

いかに学校で過ごすことに対してポジティブな支援が入っていたかを発見した。
このインタビューの裏でこのプログラムに参加した別の友人は”多様性”について現地学生と話していた。

Q, フィンランドではdiversity(多様性)や人権についてどこで学ぶのか
A, 主体的に学ぶシステムがあった、両親から教えてもらうこともあった。
でも結局みんな Same People なのにわざわざ学ぶ必要があるのか

プログラム参加者のインタビューより

”same people”という考え方がもしベースとして浸透していたら”インクルーシブ教育”というものの考え方も違う可能性があるのではないかという仮説をもとに
2日目以降の視察における個人テーマを以下に設定した。

  1. インクルーシブ教育とはどのような教育と捉えているのか

  2. インクルーシブ教育の実現に向けた具体的行動とは

1. インクルーシブ教育のとらえ方

これに関しては小学校で特別支援教員として勤務している先生への質問から見えてきた。

Q,  インクルーシブ教育という考え方はこの学校にあるのか
A,  大いにある。フィンランドは進んでいると思う。
インクルーシブ教育とはすべての生徒が一緒の場所にいられることである

一緒の場で授業を受けることがインクルーシブ教育のある形という点においては日本と大きな差はないように感じた。
しかし先生は続けて
子どもはそのまま変わることなく、学校や先生などの環境が変わることでそれを実現することがインクルーシブ教育の実現に必要なことである
とも言っていた。

この言葉は同先生が言っていた
生徒は各々の道があり、グループとして見る指導はしない。個人的に合わせた指導が必要である。Flexibility (柔軟さ)が教育には求められる。という考え方につながった。

私の肌感ではあるが、日本の教育ではいかに生徒が環境になじめるように指導するという事が教育に求められているような気がしていて、そこに違いを感じた。

2. インクルーシブ教育の実現に向けた具体的行動

8日間のプログラムの中で幼稚園から高等学校・専門学校まで合計5校の学校を視察したが、それぞれの学校に学校設備や授業方法で特徴があった。

特に学習環境という面では小学校での環境整備が印象に残っている
通常の教室の中にパーテーションがあったり、パーテーション付きのソファー、椅子も日本の学校のような椅子やキャスター付き、したが不安定になっているものなど多様なものが混在していた。
教室の後ろにはイヤーマフが置かれており、机上における簡易衝立も必要によっては机に設置できるようにしてあった。

イーサルミの教室の様子

授業を受けるにあたって自分が集中できる環境を整えられるようなものを常備してある印象である。
うわさに聞いていたように廊下にソファーがおいてありそこで学習をする生徒も見られた。

学習方法という面では
そもそもの教室人数が多くても20人というところ、そこからより小グループに分かれるところ、特別な支援を必要とする生徒には4.5人ほどのグループで学習することや、先生との1 on 1レッスンが行われることもある。一斉授業の中でも各々の進度に合わせた追加教材の提供、複式学級の施行などがある。
学年を横断するという考え方でいうと衝撃だったのは不登校対策の一例であった。

Gread7.8(日本で言う中学生)の生徒が自分の学年に登校できないとき、代わりにGread1.2(小学生1.2年)のクラスに登校する対応がとられている。そこで家で何をするか話す時間を週に2.3回つくっている

現地学校の先生の話より

どの学校でも行かないより、該当学年でなくてもいける学校に行く方がよいいう考えのもと行われていて、これは先に述べたFlexibilityの考え方に繋がっている。

どの方法も先生の観察眼あってのことだと思うし、それ以上に日本のような大人数を一斉に相手するとなると不可能に近いものである。(実際先生も一クラスで見られる最大は16人と断言していた。)

インクルーシブ教育を考える過程の中で無意識のうちに障がいのあるなしなどの線引きが行われているのではないかという持論が膨らんでいる。
それと同時にこの8日間を通して、グループ分けではなく一人一人が違うから人を何かでくくることは難しい。だからこそすべての人が同じ環境で集まり学ぶ環境を作ることにインクルーシブ教育という考え方は重きを置いているのではないかとも考えた。

海外の教育を見た今、日本の教育を改めてみてみたいという気持ちが高まっている。

あの時感じた何かバチっとはまる感覚が文字に起きないのがもどかしいけど、なにか教育に従事している方に届き、見学やディスカッションの機会につながることを一意に願っています。


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