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山と山小屋が共にある姿/北アルプス・北穂高岳_毎日新聞

毎日新聞朝刊に隔月連載している「わくわく山歩き」(2019年1月~)は、日本の山のなかから毎回1座選び、紹介するエッセイです。その山にまつわる私個人の思い出や、登ったときの印象も織り込んであります。
noteでは、各回の編集後記のようなもの、本編の紹介を記していきます。

2019年7月8日の「わくわく山歩き」は、北アルプス南部にそびえる北穂高岳でした。「北穂」(北ホ、キタホ)の愛称で親しまれている山です。

北穂高岳は、私にとってはたまらなく好きな山であり、山頂直下にある北穂高小屋は四半世紀ほど前に取材で通った、いわば「古巣」のような山小屋です。

涸沢から北穂南稜を登るときに眺める景色
ここからの前穂高岳北尾根が、私にとってはいちばんしっくりくる山姿

紙面には、北穂に通った時間のなかで、眺めたたくさんの景色のことも描きました。小屋開けの4月下旬、梅雨の頃、盛夏、ひと雨ごとに季節が深まっていく秋、小屋閉めの11月上旬。それぞれの季節に味わいがあります。
北穂へ行くには、雪が詰まった北穂沢、夏道が開くと南稜、同行を得たときは東稜から通うことが多かったです。

このときは、ふたりの友人と一緒だったので東稜から

記事の最後に書いた、北穂高小屋二代目主人・小山義秀さんの言葉は、随分前のものだけれど、北穂で過ごした時間と、彼方此方から北穂を眺めたときの思いと共に、ずっと私の心の中にあります。
私にとっては、山小屋を営む上で根幹に置くべき理想的な言葉であり、私のあらゆる考え方の礎を作ってくれた言葉でもあります。
義秀さんの言葉、ぜひ読んでいただきたいです。
*その後、義秀さんの言葉は、矢部華恵さんがパーソナリティを務めるラジオ番組「山小屋ストーリーズ」の後編の最後でお話しました。コチラもぜひお聴きください。
前編はコチラ、後編はコチラ

2020年8月6日の日の出。日の昇る位置は、常念岳から蝶ヶ岳のあいだを変動
厨房で宿泊者の朝食を作りながら眺めることが多い

また、記事に書いた「なべさん(写真家の渡辺幸雄さん)の岩」がどこにあるか、横尾谷を歩きながら、見つけていただけると嬉しいです。

「なべさんの岩」から眺めた北穂高岳。
ここに来ると、「ああ、帰ってきた」という思い

なんと……若い頃に書いた拙い文章が、webに残っていました。
長年北穂高小屋の支配人を務めている足立敏文さんに、滝谷で遊んでもらったときの話です。これも、北穂高小屋に通うなかでの物語です。
コチラ 
*文字化けがあったら、リロードしてみてください。

夏の終わりに、小屋の脇からの眺め
滝谷に雲がわくとドラマが生まれる

四半世紀近く前になりますが、当時、北穂高小屋と私は、あくまで取材を受ける側とする側という関係でした。
小屋開けから小屋締めまで2年間通い、それこそ命にかかわる濃密な時間を共有しながらも、私は敢えて距離を保っていました。

取材相手に近づきすぎてはいけない、という思いが強かったです。

北穂高小屋の窓
食堂には小さな花瓶に活けた花があります
以前、北穂高小屋に務めていた矢崎恵美さんが、従業員になる前から
切り花をもって北ホに上がっていました
山の上で切り花?と思うかもしれませんが
小屋の前からの絶景は、天気によっては眺められない日も山ほどあるんです

連載が終わってから、私はオカシイほど、北穂に登るタイミングを逸しました。どう付き合っていいのかわからなくなりました。
それでもことあるごとに登っていたあるとき、義秀さんに「理由がなくても登るのが山でしょ」と、足立さんに「少なくとも年1回は来るように」と言われ、泣きそうになりました。

山と小屋に会いたいときに、会いにいっていいのかなって素直に思えるようになったのは、連載が終わって10年ほど経ってから。
そんな長い時間、思いやりを与え続けてくれた北穂高小屋に感謝です。

新聞記事(本編)「山小屋が溶け込む山」は、コチラで読んでいただけます。
「わくわく山歩き」バックナンバー2019年1月~2020年3月 →コチラ
2020年4月~現在 →コチラ


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