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レビュー in Kyoto

OSK日本歌劇団のレビューに寄せさせてもらいました。


楽しすぎた。南座の唐破風にぶら下がるミラーボール、曲が始まると格天井や桟敷の欄干に光が反射してめちゃくちゃ綺麗だった。

緞帳が降りた状態で、男役トップスターさんのご挨拶から始まる、レヴューというものが、自分はやはり大好きだ。
京の都を舞台にくり広げられる恋模様、華やかな歌とおどりのレビュー、美しい、圧巻の一言だ。

光源氏と宮中の姫君の織りなす恋絵巻、戦乱の中己の剣と信義に生きながら、恋することを止められず、生死に引き裂かれるそれぞれの時代の男と女。
へぼ侍で主役を好演していた翼和希くんが牛若丸。紅葉の五条大橋を背景に歌い恋を繰り広げる。吉井勇先生作詞のゴンドラの唄を伸びやかに歌い上げるのはさすがレヴューらしい演出。
新選組と龍馬の一糸乱れぬ剣舞、群舞は圧巻の迫力。見事、見事。皆さま、この前は薩摩隼人の士族たちじゃなかったですっけ?は言わないお約束。

芸事と仮初の恋の駆け引きに生きる花街の男女は、未来へと続く京の恋絵巻だ。
大物の役者、名妓舞妓たちが舞台に立つこともある南座の、川島織物の緞帳をバックにトップスターの楊琳さまが
「舞い踊る 歌い続ける 生きてゆく」と花道出たからかに歌いあげるお姿は、美と芸事に生きる美しき舞姫たちへの応援歌だ。

南座のお土地柄、遊びにいらしたり、お客さまに連れられた舞妓ちゃん達が、簪のひとつも後れ毛の一筋も乱さず一心にお舞台に見入ってらっしゃるのも、客席すら歌劇の一場面のように錯覚する。

狩衣姿の光源氏や、水干姿の牛若丸の足元がヒールのブーツなのや、燕尾服の紅い口紅のお化粧の男役さん。少女歌劇にしか許されぬ不思議な衣装の様式はやはり何ものにもかえがたい美、舞台の上の約束事の様式美がある。

ヒップホップやラップ風の歌詞、チアダンスもあり、目まぐるしく展開するレヴューは楽しいの一言に尽きる。白燕尾服にステッキの男役さんの群舞とても素敵。濃い紫色のドレスの娘役さんたちも素敵。指先の本当の爪の先まで計算されたような音楽が血管と神経を通っているような美しいダンス、リズム。優美さの中にきれのある力強く朗らかなダンス。

歌劇団のテーマソング「桜咲く国」で大団円なのだが、回るミラーボールに煌めく唐破風格天井、朱塗りの欄干。灯る南座の紅い提灯。

西洋のテアトル然としている大劇場や芸術劇場では目にすることの出来ない、これぞ松竹の、モダンでハイカラな明治大正の人々が夢見た少女歌劇だろう。

桜色の傘が花開く踊りも可愛らしい。皆さまおどりもダンスもお歌も綺麗だった。

最後のトップスターの楊琳さまのご挨拶
「歌劇というものを、レビューを、好きになってください、楽しんでください、愛してください」
「その為にわたくし達は精進して参ります」

近頃、芸事の世界の在り方や、他の歌劇団さんに世間の厳しい目や心配の声が寄せられている中で、誰も傷つけずに、それでいて歌劇をレビューを愛する人間、携わる人間、憧れる人々を勇気づけ励まし、心置きなく応援させてくださるお言葉に、万雷の拍手だった。
本公演で卒業される娘役の実花ももちゃんもとても可憐で素敵だった。

涙に飲まれてご挨拶に詰まってしまった実花ももちゃんを応援する声が南座の大向こうから飛んだ。芝居小屋らしい声の響き客席の卒業生の同期さんが手を振ってらっしゃるのも、こちらまでとても嬉しい気持ちになった。

トップの楊琳さまが腰に腕を回してお舞台の中心、最前列にももちゃんを立たせてご挨拶してくださったのもとてもとても素敵だった。

少女歌劇がレヴューが好きだ。これからも舞台の幕が上がり何度も夢を見させてほしい。

緞帳が上がるとそこは、桜咲く国であり、すみれの花の恋の季節であり、時に若き日の学問の神が生きる平安京の応天門であり、夢と信義を剣に託した男たちが命を懸ける薩摩の田原坂である、夢の舞台だ。


お勉強にいらしていた研修生さんか、他歌劇団の生徒さんか、凛とした中にも若々しい可憐さの残る男役さんとすれ違った。

どうかどうか、美しきお舞台に幸せに生きてくださいますように。少女歌劇とレビューが永遠に愛されますように。

吉井勇先生にお礼とお願いもしてきました。

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