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ちょっと思い出しただけ

仕事終わりに目黒シネマへ行った。
「ナイト・オン・ザ・プラネット」
ロサンゼルス、ニューヨーク、パリ、ローマ、ヘルシンキ。それぞれの街で、5人のタクシー運転手が客を乗せる。同じ地球という星の、同じ夜空の下、5つの人間模様を載せて、タクシーは走っていく。

そして今年公開された映画の2本立てだった。

受付で、監督の次回作のフライヤーが配られていた。家に帰ってからフライヤーを見て気づいた。あれ?この人ーーー。部屋の中にいるその人がふと目に入ると、そのまま視線が奪われ、私は過去に遡る。

公開されたら、必ず見に行こう。
いや、見たいような、見たくないような、見たくないような、見たくないような、、、。



出会ったあの夜、私たちはイベント終わりに代官山蔦屋書店のカフェで、終電まで話していた。「1人で来てる人はすぐ帰っちゃう人が多いから、いてくれてよかったよ」付き合ううちに、そう明かしてくれた。
「優れた問いとは優れた答えより重要」と教えてくれた彼は、「何を語るかよりも何を語らないかの方が大事」と言う私に、「何を映さないのかを大事にしてるのと同じことやね」と言っていた。

目黒シネマで監督は、映画と配信の違いについての質問に対し、こんなことを語っていた。
「僕たちは、映画館で上映されることを前提に音楽をつくり、映像を撮る。帰り道、前の彼女のSNSをチェックしてしまうとか、それを含めて映画を観るということだと僕は思っています。」

私はなんとなく、監督は人を無意識に傷つけてきた人なんだな、と思った。全くそれは悪いことではないし、貴重なことだけど。

そんな話を聴いた次の日、私はその監督の次回作のフライヤーで、あなたと出会った夜のことを思い出す。

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