20231020-1027「お父さん(俺)は子どもたちのヒーロー」


20231020

『悪い子バビー』をシネリーブル梅田で。冒頭30分は家庭内暴力の末、死そのものを理解していないが故の殺しの連鎖でもう見ていられなかったが、それがきっかけでバビーが解放され生の扉を開く皮肉。その扉は音楽という初めて出会う存在へと続いていてハプニング的にバビー自身もバンドに加わり、これまで受けた数々の侮蔑の言葉をバビーがそのまま発することで詩となり、芸術へと昇華され、聴衆をアジってぶち上げる様は感動的。それはバビーが言われたことを反復して会話を成立させていたからで、その反復はライブの再現性と相性が良く、バビーが輝ける場所としてライブのシーンが機能していた。

10/21

幼馴染とエキスポシティへ。マクドの外の座席で寒がりながら月見バーガーを食べ、ゲーセンに行った。NetflixドラマのONE PIECEのアクリルスタンドのガチャガチャをやると、ジェイコブ・ロメロ・ギブソン演じるウソップが出た。真剣佑のロロノア・ゾロが欲しかったが、これは喜んでいいほうだと思う。

幼馴染は3時間半の映画に備えて、マクドでホットコーヒーを飲み、コンビニで買ったモンスターエナジーを一気飲みしていた。眠くならないようにだったり映画を観る体力をつけたかったようだけれど、2時間半越えの映画を観る際に気をつけるべきなのは、どれだけ尿意をもよおさないでいられるかである。カフェインはできるだけ避けたほうがいいし、それだけ短時間で水分を取るのもよくない。しかもオージーレモネード味を飲みながら「俺、シトラス苦手やねん」と言う。もうぜんぶ知らねえ!勝手にしろ!

12:15から『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』を観た。IMAXでフリーメイソンの会員だと告白するデ・ニーロに木板で尻をしばかれるディカプリオが見られてよかった。あのシーンはやばすぎる。冒頭のスローモーションでオジール族の喜び、栄光のはじまりを高らかに宣言し、ラストの朗読劇とマーティン・スコセッシ本人の登場は、悲劇を誠実にえがくことを諦めたかのように、事実を淡々と述べる。この差が3時間半の長尺の映画で描かれたことに驚きをおぼえる。

エンドロールがはじまった瞬間、急いで席を立ち、スクリーンを横切る幼馴染が暗がりで見えた。ほらみろ!尿意だ!尿意だ!

上映後に駆け込んだ喫煙所で、幼馴染と感情が抑えられないディカプリオの物真似(嬉しいことに新作に出演する度に更新される。笑)をしばらくしていた。こういうことができるから、たまには誰かと映画を観に行きたくなる。

幼馴染がモノレールで帰ろうと駅に向かうとガンバ大阪サポーターが雪崩れ込んで来たので、自転車の俺と一緒にいけるとこまで徒歩でいこうということに。結局ちょうどいいバス停を見つけるまで、エキスポロードをビルケンシュトックで走っていた。

10/22

しまもと古本さんぽへ。広島の書店で『パスタで巻いた靴』と出会い、港の人を知り、港の人の本を新本で数冊置いてくださっている店主さんがいた。かなり嬉しい。一緒に来ていた妻に話すと「作家やなあ」と言われた。娘たちは別のお店で工作していて、そこの棚をのぞくと『現代詩手帖』北園克衛特集が500円で、そこまで珍しい号ではないが、とりあえずこういうのは買っておく。

待賢ブックセンターの鳥居さんもいた。5歳の娘は「バビロニアの羊飼い」からはじまる渋めの星座の図鑑を選ぶ。2歳の娘は絵本『あれこれたまご』を。長谷川書店にも寄って、5歳の娘がめちゃくちゃ欲しがった鳥の図鑑を購入(また図鑑!)。家に帰り、付録のDVDを観た。シルスイキツツキの彫った溝。

夜は『金は払う、冒険は愉快だ』刊行記念大宴会へ。川井俊夫さんに「もしこの本が映画化されるなら、川井さんの役は誰が良いですか?」と質問したら「『凶悪』の頃のピエール瀧」と言っていて笑ってしまった。やばすぎる。そんな道具屋いるのか?と一瞬思うもちゃんと目の前にいるから怖かった。笑

ここには書けないようなような話ばかりだったからもう書きようがないが、川井さんの生き方が滲み出た文体は過剰にダークになりそうなものだけれどそうはみえないのは、ぶっきらぼうというか不器用でありながらもとびきりのサービス精神を持ち合わせているのと、ホラーとアクションが好きというエンタメ志向な感覚からくるおしゃべりな性格が由来しているのだと知れてよかった。

イベントに向かう前に寄ったラーメン屋は不思議だった。店への入り口が分からず困っていたら、格好良いお兄さんが現れ、案内してくれたのだが、そこは中華バルで、土地柄的に騙されて連れて行かれたのだと警戒していたら、昼はラーメン、夜は中華バルでラーメンもやります、とのこと。醤油ラーメンを頼み、Kindleをひらいたところでお兄さんに話しかけられる。これからトークイベントを観にいくのだと言うと、作家は凄いという話になり、あなたも?と聞かれ、詩人ですと答えると、自分はそういう素養はない、でも友人と美術館に行って感動することができた、絵の前で泣いている女性がいてそのことに感銘を受けた、と色々話してくれたのは良いのだが、俺がラーメンを食べているあいだも話しかけてくる。お兄さんは自分がラーメンをつくり、提供し、俺が麺を啜り、スープを飲みほすまで、喋り続けていた。ここ最近食べたラーメンで一番美味しかったから許すけれど、そういうふうな接客ならば今度はお酒をのみにいこう。気になるメニューもかなりあったし、シメにこのラーメンが食べられるのは魅力的。

10/23

仕事。

10/24

仕事。
夕方に葉ね文庫へ。近況報告をして、短冊には購入した本にちなんでこう書いた。

今日、ここで二〇〇年前の詩人と共鳴した。
原稿に影響するかもしれないが、蘇るな!
どうせなら生き返れ!小ロマン派の帰還。俺と乾杯。

10/25

蔦屋書店京都で東浩紀『訂正可能性の哲学』と多和田葉子『パウル・ツェランと中国の天使』購入。

ジャズ喫茶METROで2時間ほど読書。Daichi Yamamotoがファラオ・サンダース「Harvest Time」をかけていた。詩人の澤村とも喋れたし、西岡さんのコーヒーはおいしい。この3人に会うために、METROでの格好良い姿を見るために、初回から欠かさず行っている。METROがジャズ喫茶になるってそもそも格好良すぎる。

夜は梅田に移動し、ジョージ×麗日×黒嵜想『町山智浩とライムスター宇多丸は、映画語りをどう変えたのか?』【前篇】刊行記念トークイベントへ。トークは面白かったし、色んなひとと再会できて、森脇さんのこないだのトークの続きともいえるような詩の話が聞けたし、福尾さんと日記の話ができたのは嬉しかった。

10/26
仕事。
長谷川書店に行って喋る。せっかく家の近くにこんなに良い書店があるのだから、俺と同じ北摂に住んでいるひととトークイベントがいつかできたらなと思っている。

10/27
イオンで『ドミノ』を観る。クリストファー・ノーラン的な映像やトリックなのに、どこか2000年代の刑事モノのテイストで、それでいて予算がそこまでかかっていないという作品をあの『グラインドハウス・イン・プラネット・テラー』や『シン・シティ』の監督が撮ったのは本当に素晴らしくて、この悲劇の主役たるベン・アフレックが追う側から追われる側に変わると同時に表情が柔らかさを取り戻す、その中心には家族の不在が取り払われた安堵があり、目的の達成へ向けた決意、それが見てとれる顔面に沈み込まない確かさと肉体が呼応している佇まいゆえに、ラストはただそこにいるだけでバットマンより圧があった。

5歳の娘のお迎えへ行くと、保護者リレー振りに先生に会ったのでまだ身体が痛いと話したら、ちょっと困るほど感謝された。保育園の子どもたちが言うには、保護者リレーの盛り上がりを見て、走りたがっているお父さんが増えているとのこと。でもこれはたぶん、子どもが親に来年は走ってほしいとお願いしているわけで、アンカーのお父さん(俺)の走りが格好良かったからだ、お父さん(俺)は子どもたちのヒーローだったのだ、と熱弁されてしまった。照れを通り越して少し困惑。俺はヒーローだったのか?写真判定でギリギリ追い抜かれなかっただけでもし追い抜かれていたらこの評価はなかったのだろうか。普段から写真映りが良いから助かっただけだ。これはたまたま。ラッキーポエジーボーイ素潜り旬。

そういえば、俺がゴールした時、後ろにひとが来ているだなんて気づかなかった。余裕で2位。そう思っていた。だが実際には、いた。それもほぼ横並びになる形で。あと1mあったら抜かされていただろう。それなのに、気配すら感じなかった。歓声で足音や息遣いなんて聞こえない。後ろを振り返らない限り無理だ。気づきようがない。リレーを走る数日前に見たニュース。リレーの代表チームがゴール直前にパフォーマンスをして、その瞬間に抜かされた。ネットでは馬鹿にするようなコメントばかりだったし、俺もこんなどんくさいこと起きるんだと思った。でもアンカーを走ったいまなら、簡単に起きうることだとわかる。あれは気づかないよ!なんなら俺もゴール直前、安心して少しスピードを落とした気がする。全力で走り抜けたわけではなかったような…ああ、こわい。運が悪かったら俺はヒーローじゃなかったのだ!助かった!俺はヒーロー!

過去は決して夢ではない。

スーザン・ソンタグ『私は生まれなおしている』より「8/23/61」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?