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【小説】さよなら だいすき また来世


 「次に会うときまでには決めておいてね」

 そういったのは誰だったか。僕は何を決めておけばいいのか。次会う時とはいつのことか、頻繁に会う間柄の人はそういないが。

 たまに夢をみる。夢の中で僕はどこかの公園にいる。何歳ぐらいの頃だろう。僕は夢中で砂山を作っていて、あとはトンネルを作れば終わり。崩れないように、慎重に、息を止めて掘り進む。反対側から掘り進めてくれる相手はいなかったが、気にせず自分で反対に回りこんで両方から掘り進めた。そうしてトンネルが開通し満足して顔をあげたとき、誰かが砂山の向こう側に立っていた。ぱっと目が合い人がいたことに驚いていると、小さく口が動いて「次に会うときまでには決めておいてね」と言っていた。言っていたというのはおおよそ僕に対して言葉を発したような声量ではなかったからだ。独り言か、本当につぶやいただけ、零れ落ちただけといった小ささで、僕は自分にかけられた言葉だと思っていなかった。

 だが何度か夢に見るうちにもしかして僕に対しての言葉だったのか?と思うようになっていた。なぜなら彼女は僕のことをじっと見ていたからだ。彼女の瞳は確実に僕をとらえていたし、僕も見つめ返していた。見つめ合っていた時間が数秒あった。それでいてこぼれたあの言葉だから、もしかしてあれは僕に言ったのか?と思い始めたのだった。



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