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栞に書かれた短いお話は、確か、大好きな人に花束を渡したいのだけれど誰かに見られるのが恥…

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栞に書かれた短いお話は、確か、大好きな人に花束を渡したいのだけれど誰かに見られるのが恥ずかしくて、わざわざふたりで月まで行って花束を渡した、というようなお話だった気がします。ところで、僕が失くしてしまったその栞は、本から本へ旅しながら、今どなたの手に渡っているのでしょう。

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  • プーランのパン屋さん日記

    プーランのパン屋さん日記です。

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What's the story about Puran

「洗濯するけど一緒にやろうか!?」 サラの声がする。 「んー?」 「だから洗濯!あんたのも一緒にやろっか!?」 「あー、いい、いい、まだ着替えないと思う」と言ったあとにプーランは「ありがと、サラ」と付け加える。 プーランはさっきまでの空想を思い出す。 週に一度、わたしのお店にくるおじいちゃん。必ずバタークロワッサンとブラックコーヒーを注文して、ひと席だけあるテーブル席に座ってゆっくりクロワッサンを食べて、ゆっくりコーヒーを飲んで、ありがとうとおじぎをして帰ってく。 わたし

    • 今夜、ファミレスの片隅で。

      22時。 もうかれこれ1時間も彼は私に喋り続けているのよ。 私はうんうんと相槌をうちながら聞いているけど半分以上は頭に入ってないわ。 どうしてこの人はこんなに喋り続けられるのかしら? たまに「そうなんだ」とか「フーン」とか言うと話を聞いている風に見えるでしょ? だからそんな片言の言葉を織り交ぜてるの。もちろん、半分以上、聞いてないけどさ。 「どう思う?」 ふいに彼はカウンターを入れてきた。 あ、まずい。 聞いてなかった。 どんな話の展開だったっけ?まぁどうでもいい

      • 辛いなぁって言わせてあげよう。

        塾に行かれない。 習い事に行かれない。 視力が悪くてもメガネが作れない。 黒板が見えずらい。 親はダブルワークで疲れ果て、子どもの勉強をみてあげられない。 勉強が分からなくなる。 部活のユニフォームが買えない。 ひとり体操着で大会に出る。 恥ずかしい。 どうして私だけ、と思っても、そんなことお母さんに言ったらお母さんを苦しませるから、歯を食いしばって我慢する。 そうして学校に居場所がなくなる。 家では幼いきょうだいの面倒をみるために留守番をしている。 親は昼も夜も生活のた

        • ブレイディみかこさんのお薦めコラム

          ブレイディみかこさんのコラムがWedgeに掲載されていて、読んでいたらいろいろと考えさせられました。 テーマはジェンダーとエンパシー。 アイスランドには、女性のストライキというものがあるらしい。女性が一日、仕事も家事も放棄するというのだそうで。 女性が働かないと新聞の厚さが半分になるそうで。 女性が家事をしないと、男性がスーパーマーケットで調理が簡単なソーセージを買うので、売り切れるそうで! このストライキによって、女性への感謝を感じて、女性も男性もイーブンに生きようと

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        • プーランのパン屋さん日記
          7本

        記事

          動いている心を掴んで。

          1億円の寄付も、100円の募金も、その寄付という行動の中に循環している、社会を変えてどこかの誰かを助けようという温もりは同じ。 数百円や1,000円、2,000円の寄付の中で流れている利他の心。 その心が社会を変えているという温かい事実。 何億円というクラウドファンディングは目立ちますね。 ものすごい金額を寄付している人もいるでしょう。 本当に素晴らしいこと。 気をつけないといけないと思うのは、少額寄付を軽んじないこと。 そこに動いている共感を感じ取ること。 動い

          動いている心を掴んで。

          プーランのパン屋さん日記〜何かをわすれてしまいそうで。

          季節が冬から春に変わる時、少しだけこころがゆらめく。 いれかわっていく。 そのいれかわりのせとぎわで、何かをわすれてしまいそうで。 ゆらゆらゆらめきながら、でもあたらしい季節が始まる、ちょっとほっとする感じがする。 でも季節のいれかわりはどこなんだろう。 いつもわからないうちにいれかわっていく。 ちいさな子がお店にはいってきた。 「いらっしゃいませ!」 その子は、にこっとうなずいて「あんぱんふたつください!」と言った。 「はい!」 プーランはショーケースからあんぱんをト

          プーランのパン屋さん日記〜何かをわすれてしまいそうで。

          私たちはこの社会で一緒に生きてるだけ

          ダイバーシティー、ジェンダーレス、ボーダーレス、多様性、共生社会というようなことを話す時、 「マイノリティーの人たちを理解し受け入れましょう」 というメッセージにするのは酷く間違っていますよね。 とても差別的で、それこそジェンダーギャップ指数(※)が上がり格差が広がる打ち出し方。 私たちはこの社会で一緒に生きてるだけ。 大多数(マジョリティー)が自分たちは普通でスタンダードであり、マイノリティーの人たちが異物であるという前提を置くと、あの人たちはちょっと変わっていて「普通

          私たちはこの社会で一緒に生きてるだけ

          自分のここがだめだ、とか、あの人はここがちょっとね、とか。

          あらゆることはプラスのエネルギーに変えられる。 そのために心が安定していることが必要かもしれないけど。 悲観的な発想を、今日を最後に捨てよう。 自分のここがだめだ、とか、あの人はここがちょっとね、とか、絶対うまくいかないとか、また嫌なことが起きるかもとか、 それは全部はポジティブに言い換えられるよ。 自分はここを今がんばってるとか、あの人のそういうところが実は大切な部分なのかもね、とか、もしかしたらうまくいっちゃうかも!とか、きっと楽しいはず!って。 そうしてポジティブに言い

          自分のここがだめだ、とか、あの人はここがちょっとね、とか。

          心配ごとはなぜ的中するのか?

          心配ごとの9割は起こらない。 とよく言われる。 確かにあれこれ心配を重ねて悩んだ挙句、杞憂に終わることも多い。 とは言え、心配ごとがいつもズバリ的中して、はぁぁ…、と重い溜息をつく人がいる。 この違いは何なのか。 心配ごとの9割は起こらない と、 心配ごとはなぜか的中する このふたつにおいて、起きていることは実は同じである場合が多い。 それを「心配ごと」としていたのもその人で、「心配ごと」が起きたことにしたのもその人で、「心配ごと」を起こさなかったのもその人だから。 言い

          心配ごとはなぜ的中するのか?

          栞さんのブランニューデイズ(後編)

          次の土曜日。いつも通り登は来館した。 「おはようございます」 図書館職員はあまり元気よく挨拶をしてはいけない。私は出来るだけ淡々と挨拶をする。 「おはようございます」登もいつもどおり。 登はしばらく館内をめぐり、数冊の本を持って読書席に座った。 倉沢さんが肘で私をこづく。 私はカウンターから抜け、返却本の配架を始め、じりじりと登に近づく。 登はまたフランス料理の本を読んでいる。 ふぅっと息を吐き、私は登に近づく。 「と、遠山さん、フランス料理お好きなんですか?」 本

          栞さんのブランニューデイズ(後編)

          栞さんのブランニューデイズ(前編)

          出勤して最初の仕事は夜間にポストに投げ込まれた本の整理だ。 10冊ほどの単行本や雑誌を抱えて机に置き、本の中に挟まったものや汚れがないかをチェックする。 ん。 新しめの単行本をめくろうとすると小口の部分にコーヒーをこぼしたような汚れがあった。すかさずカバーのそでを見る。 はぁ〜。私は溜息をつく。【汚れあり】のシールは貼っていなかった。この貸出期間中についた汚れだ。後で借り主に電話をしないといけない。 市立図書館の司書として嘱託採用されて半年以上経ったけど、この仕事はいつ

          栞さんのブランニューデイズ(前編)

          ささやかなひかり vol.1

          年の瀬。 Chromebookでこれを書いている。 先日チャレンジした、ことばと広告さんの企画、 #モノカキングダム 僕がエントリーしたお話は、 -- 「お父さんは?」 中学校は夏休みに入って、 -- と始まるのだが、 この、 「中学校は夏休みに入って、」の部分、 「中学校は」 にするか、 「中学校が」 にするか、最後まで悩んだ。「は」と「が」の助詞1文字の違いなのだが、この1文字で主人公の中学生のキャラクターが大きく変わる。 「中学校が」にすると、彼女の生活のメインは

          ささやかなひかり vol.1

          いつかのメリークリスマス(後編)

          職場の最寄り駅の構内を抜け、反対口に出て、さらに戸名くんはスタスタと歩き続けて、小さな路地に入ったところで止まった。 「じゃあここで」 焼き鳥居酒屋「三太」。 「は?クリスマスイブに焼き鳥屋?」 「だめ?クリスマスと言えば鶏肉だろ」 はぁ、何かもっとオシャレな..と言いかけたが、別に恋人でも何でもないしと思い直した。 お店に入ると焼き鳥のいい香りがした。 私たちは二人席に向かい合って座る。 「生でいい?」 あたしを何だと..?と思いながら「生で」と答える。

          いつかのメリークリスマス(後編)

          いつかのメリークリスマス(前編)

          トイレから出ると、ちょうど喫煙エリアから出てくる戸名くんと出くわした。 あちゃ、見られた。 はぁ.. クリスマスイブに残業してるの、見られたくなかった.. 私の所属する課は2階、戸名くんの課は3階なのだが、喫煙エリアは2階にしかないからこういうことになる。 もう19時半、予定がないのはバレバレだ.. 私が「お疲れ様です」と言うと、戸名くんは「お疲れ」とぶっきらぼうに言って階段を上がっていった。 席に戻る。 もうフロアのほとんどの人が帰宅していて、残っているのは私と数

          いつかのメリークリスマス(前編)

          キンコン時計

          「お父さんは?」 中学校は夏休みに入って、すっかり寝坊癖のついた私は十時過ぎに起きて、あくびをしながら聞くと、 「なんか映画観るとか言って出かけたわよ」とお母さんが言った。 「ふーん、一緒に行かないの?」 「なんで?」 「なんでって、夫婦じゃん」 「夫婦だからっていつも一緒に出かけなくたっていいでしょ」 「まぁそうだけど、そんなもん?」と私が聞くと、 「付かず離れずくらいがちょうどいいのよ」とさっぱり答えた。 私は何だか子ども扱いされた気分になって、「あっそ

          キンコン時計

          五月のゴール

          僕はゴール付近からビデオカメラを構えていた。男子が終わり、女子の第1レース。娘は第一レーンだ。 「位置について!」 「よーい!」  パン! 小4競技、60メートル走、6人が一斉にゴールに近づいて来る。 「半分過ぎて疲れてきてからが勝負だよ!中盤からさらに腕をよく振って!」前日に、僕は誰にでも言えそうなアドバイスを娘に送っていた。中盤を過ぎ、娘はさらに加速してくる。 (それだ!) カメラを持つ僕の手にも力が入る。一位二位を争っている。最後までスピードは落ちない。後半さらに伸

          五月のゴール