千年 【短歌二十首連作】
めずらしく寿司を手で食うひとといていまどきめずらしいなと思う
桟橋は弱った人をひきよせる銀のぬめりをひけらかしつつ
カーペットのない部屋に住む友人の家で地べたが硬すぎること
アルコール濃度は赤くたかまって指は揺れれば革命家めく
のろのろときみは膝から立ち上がり別れの言葉に廊下がのびる
引き分けねらいで訪れている ほら、ご覧 歯医者も花の世話をわすれる
ハンバーグ寿司でも食べにいきましょう喧嘩腰でもたずさえながら
公園に褒められて伸びる子どもたち、あるいはそうじゃない子どもたち
海底の砂をすくってくるようにきみへ手渡したいものがある
なんどでも角度を変えて訪れる羊や稲の香りを孕み
白鷺を棚田に植える棚田には白鷺がいるほうが良いよね
涯のない純情を持ちあなたにも軟口蓋のあやうさがある
剥がされる心かかえて薔薇も百合もすべてこわれてゆく真っ裸
やわらかくつむじひとつが渦巻いてわたくしからは見えない場所に
左手に公衆電話があったのを妙に覚えている通学路
さびれてる商店街とさびれてない商店街にいるおばあちゃん
体液が肺を浸してゆく病 千年を桜が渡って行く
消えてゆくものばかりあるアスファルト 常夏なんてもったいないね
二千年先にも届くなんてことあっけらかんと言えるあなたは
出逢おうよ 菜の花香りたつ中のこれが春だったっけって独り言
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読んでくださってありがとうございます! 短歌読んでみてください