ほぐれつ

2019年6月、日本中が東京オリンピック直前で賑わっている。一年前、世界中の占い師が「2020年は世界的なウイルスの流行によってオリンピックが開催されない。」と予言。占い師とスポーツファンによる大規模な署名活動の末、一年早くオリンピックが開かれることになった。

街中に五輪マークが溢れていて、それを見た僕は少しイライラしていた。僕は物心ついた時から五輪マークを見ると、解(ほど)きたくなってイライラするのだ。

アテネ大会の時、まだ僕は小学校低学年で、初めて五輪を解(ほど)きたくなった。母親と2人でお出かけしている時に広告の五輪が目に入って、なぜか分からないけれどむずむずした。あのマークの輪っかをバラバラにしたいなと思って、でも解(ほど)くなんて言葉がすぐに出てこなくて、母親に「取りたい」と言った。母親は僕が被ってる帽子を取った。五輪を解(ほど)きたいストレスと伝わらなかった悔しさで僕は「違う!」と言って泣いてしまった。

4年に一度イライラする期間が訪れ、なす術なくイライラしていたが、リオデジャネイロオリンピックの時、五輪マークを頭の中でコップの水に付けてみると少し五輪マークが解(ほぐ)れた。きれいに解(ほど)けなくても解(ほぐ)すことができたら気持ちが少し和らいだ。

東京オリンピックの時期はリオデジャネイロオリンピックの比ではなく五輪を目にすることが多い。コップの水一杯では対抗できないだろう。僕は頭の中で五輪を色んなものに浸してみた。

まずは、五輪を味噌汁に入れてみた。乾燥した五輪は味噌汁を吸ってふやふやになって彩りを添えた。

続いて大きめの五輪を頭の中の海に持って行って2日放置することにした。ふやふやを超えてぶよぶよになった五輪は海にぷかぷか浮いて5人用の浮き輪になった。8月になったら中学から仲良しの友達4人を呼んで海水浴をしよう。あいつらきっと二つ返事で飛んでくるぞ!

東京オリンピックを経て、僕は五輪の加工をできるようになった。今僕は頭の中で五輪を薄く長く削って天日干しをしている。数日したらその五輪かんぴょうを収穫する。それを5年間繰り返して、2024年にはその収穫地で栃木オリンピックを開く予定だ。

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