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マイペースな家族の話

母はマイペース。
寝坊するでもなく家を出るのが遅くて、車で送ってもらう習い事に間に合ったことが半分くらいしかない(僕がマイペースなのも一因ではある)。
親戚の結婚式に滑り込みセーフで到着したこともある。

先日、母方の祖父が亡くなった。
僕は急いで岡山に帰省し、通夜に出席。
通夜が終わって、僕は母を遅刻させまいと翌朝のスケジュールを立てた。

8:15 出発(車)
9:00過ぎ 到着
9:15〜10:00 立飯(葬儀の朝の食事)
10:00最悪の場合の集合時間
10:30葬儀

ここからは葬儀当日の朝のお話。

7:30。マイペースの血を受け継ぐ僕、起床。リビングに行くとパジャマの母が小皿を見せてきて、「アーモンド食べる?」と聞いてきた。小皿にアーモンドが7粒入っている。「立飯あるからええわ!」と言ってもいいところだったが、マイペースの血を受け継ぐ僕、アーモンドぽりぽり。アーモンドを食べながら思う、「これ、危険なパターンかもしれない」。

8:15。本来なら家を出る時間。8:15ちょうどに靴下を履き終えたマイペース僕、着替え完了。母は見当たらないが着替えているのだろう。

8:20。「なぁなぁ、思うんじゃけどな、」話しかけてきた母、パジャマを着ている。「ひぇ〜〜〜!」と声を出す僕。マイペースの総本山、母。

8:30。マイペースの血を受け継ぐ僕、「ラヴィット!」を見始める。「かあさーん、岡山県の特集しとるー!録画しとくなー!」。親が親なら子も子である。

8:50。35分遅れで出発。父は直後に仕事のため軽トラを運転。マイペース僕は法定速度×0.8の速さでしか走れないため、母が運転、僕助手席。

9:00。平日雨降り田舎なので車混みまくり。全然進まない。このままでは立飯はおろか、最悪の場合の集合時間の10:00に間に合うかも怪しい。「立飯間に合わんかも。朝ごはんたべてくりゃよかったなぁ」と母。もっと間に合ってないだろ、などと野暮なことは言わず、「最悪間に合わんくてもアーモンド食べたから大丈夫!」とポップな僕。

9:05。軽トラの父からハンズフリーで通話。「高速乗ってもええけどどうする?」いつもなら母のマイペースさ加減にカリカリしていることもある父が冷静に最高の代替案を提示。僕感動。「えー、乗らんでも間に合うんじゃねん」というマイペース母。珍しく焦りながら説得する僕。

9:10。赤信号になったので前に止まっている父の軽トラまで駆け寄ってETCカードを受け取る。ダッシュで母の車の助手席に戻る。高速の入口まで残り500mのこと。

9:45。無事到着。立飯にありつく。


何かを達成したわけでも綺麗な景色を見たわけでもない。むしろ高速代数百円×2台分を失っただけの話。けれど、これが、これこそが僕の家族だよなと思った。

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