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上野から始まった家電屋が歴史を変えた

歴史の始まりはたった一人の男,長谷川 幸雄(はせがわ ゆきお)が1959年に上野で店を開いた事だ.幸雄は店を開く前,とある家電メーカーに勤めており,テレビの開発を主にしていた.


皆様も一度は教科書で習ったことがあると思われる「三種の神器」を思い出してほしい.

各家庭に絶対なくてはならないものの意味合いを込め,宣言された三種の神器は白黒テレビ,洗濯機,冷蔵庫の3つの事を指す用語であり,1950年代には花形の家電三種類でもあった.


もちろん花形家電のひとつである,テレビは各家電メーカーにとってもなくてはならない看板として,研究開発がすすめられた.


特に1954年から始まった米国のカラー放送をきっかけに,カラーテレビの開発が激化.当時は1秒でも早く新機能を載せた製品を発売することが,シェア拡大につながったので,どこも必死である.(ちなみに日本では1960年にカラー放送が開始)



幸雄はそんな激戦の環境にに身を置いていた.それも,産業スパイとして.



幸雄はとても優秀な社員だった.あまりにも優秀だった.優秀が故,同僚の反感を買ってしまったのだ.その結果,潜伏先の企業に自信がスパイであることがバレてしまった.


それが1958年の冬だった.


当時の産業スパイの扱いはひどいもので,一度相手の会社にスパイであることがバレてしまえばそこでおしまい.どんなに素晴らしい技術を持っていようとも一発で首である.


幸雄も例に漏れず首となり,さまよい歩いていた.


「俺には何も残っていないが,家電に関する技術は確かだ.俺は,家電で食っていくしかないんだ」


そう思いながら歩いてたどりついた先が上野だった.



上野は10年前,戦後の闇市として日本でもトップレベルに規模が大きい場所だった.ただ,1950年代に入ってからは闇市の規制が始まり,徐々に店舗を減らしていった.


その結果,土地が余っていたのだ.産業スパイとして業界に認知されてしまい,どこの家電メーカーにも就職できなくなってしまった幸雄はこの余った土地に目を付けた.


「上野なら,ここなら俺でも店を持てるかもしれない」



そう思った幸雄は全財産を使い,上野に店を構えた.


最初はお金がなかった幸雄は家電の修理業務をメインとしていた.本人も言っていたが,幸雄には確かな腕があり,その腕が評判を呼び人気店になった.


人気店になったとはいえ,修理業しかしていなかった幸雄の生活は苦しい物だった.


「腕は認められたが,全然稼ぎにならないな.家電を売るにも露店だから売れないし,どうした物か」


そんな幸雄が目につけたのが,家電の改造だった.



初めに幸雄が目に着けたのがテレビ.幸雄自身,一番思い入れのある家電である.1960年の当時,カラーテレビの価格は約50万円.白黒テレビは約6万円と9倍近い価格差で売られていた.(ちなみに当時の大卒新入社員の初任給が1万数千円である)


このことに目を付けた幸雄は,白黒テレビをカラーテレビに改造する違法改造を始めた.


幸雄は白黒テレビを6万円でカラーテレビに改造するビジネスを始めると,瞬く間に東京中で有名になる.


一般家庭では手が出せない価格ではあったが,銭湯や少し裕福な家庭では50万を出すことは出来ないが,6万ならということで幸雄の元に依頼が殺到した.


ただ,またしても幸雄は目立ちすぎた.この6万円でカラーになるテレビを良しとしなかったのが,NHKである.


NHKはカラー放送を普及させるため,白黒テレビからの脱却を各家電メーカーにお願いをしていた.そのためにNHK自身が研究した技術を各テレビメーカーに伝授し,売り上げからのキックバックをもらっていた.


このキックバックの費用を使い,日本中でテレビを見られる環境を整えたり,東京タワーを建設していたのだ.(東京タワーは1958年建設)


たが幸雄のテレビが売れてしまうとどうか?そのキックバックを受け取ることが出来ない.


また当時のNHKは白黒テレビとカラーテレビの受信料の金額を変えていた.幸雄が改造したテレビは元は白黒テレビのため,契約が白黒テレビのままできちんとカラーテレビの受信料を払っている家庭からは不満が続出した.



こんな背景があり,NHKとしてはなんとしても幸雄を捕まえることに躍起になっていた.もちろん警察と協力してだが.


東京オリンピックが終わった1964年から本格化敵に動き出したがそのころには幸雄もアメ横を仕切っていた人物と仲良くなり,何とか逃げながらも,カラーテレビ改造をやめなかった.





というところで,今日はキリがいいのでここまで.この後,幸雄は逃げきれたのか?カラーテレビが当たり前になった1970年に始めた事業とは?上野にあるヨドバシカメラが実は?今日の記事は,歴史に名を残せなかったけど,歴史を変えた男,長谷川 幸雄の波乱万丈な人生の始まりに過ぎません.





気になる続きは…書くか未定.全部フィクションだからね.



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