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#52 本の感想2023年7〜10月

2023年7月~10月に読んだ主な本の感想をまとめて。

○『くもをさがす』/西加奈子
移住先のカナダで乳がんを発症した著者。
異国の地では病院での対応がまるで違い、言語の壁や新型コロナウイルスの流行もあり闘病生活は困難を極めます。
あれだけ明るいイメージであった著者が弱気になる瞬間も綴られています。
この本の面白いのはカナダの人たちの言葉を関西弁に訳していること。
カナダでの出来事を自分の土俵で引っ張ってきて表現しているところが、どこか親近感を覚えます。
改めて日本の常識と各国の常識は良い意味でも悪い意味でも違うのだなと思いました。

〇『南鳥島特別航路』/池澤夏樹
日本の自然をテーマにした旅行記。
一般的な観光地とは違い場所が紹介されていて興味深かったです。
白神山地や離島にはいつか行ってみたいなと思っています。

〇『将棋指しがひと息ついて』
将棋棋士のエッセイ集。
自分の生い立ち、家族、趣味のことなどそれぞれの棋士の個性が現れる内容になっている。
さくらももこのエッセイについて書いている石本さくらさん。
子育てと将棋の両立について書いている本田小百合さん。
師匠や兄弟子について書いている武富礼衣さん。
子どもの頃、将棋のライバルだったおじさんについて書いている中村真梨花さん。
子どもの学費の支払いに苦慮したり、徐々に勝てなくなってきたことに悩む北島忠雄さん。
などなど。
将棋棋士の日常は我々の日常とあまり変わらないからこそ、共感できるのだと思います。

〇『本屋図鑑』/いまがわゆい
書店員の日常を描いたコミックエッセイ。
書店員ならではのあるある、仕事内容などが4コマ漫画になっているので読みやすいです。
書店員ってどんな仕事なんだろうと興味を持っている人には是非おすすめしたい一冊。
書店員さんには日々感謝ですね。

〇『棋承転結』/松本博文
24人の将棋棋士の物語。
それぞれの将棋観、人生観を知ることができるのは良いですね。

〇『私たちの世代は』/瀬尾まいこ
小学三年生の頃、感染症の流行がきっかけで不自由な生活を強いられる冴と心春。
母子家庭の冴はイジメにあい、心春は引きこもりになってしまいます。
やがて就活の時期が来て、2人が初めて交わることになります。
公立と私立。母子家庭と両親がいる家庭。人は世代や環境で括られがちです。
でも、世代や環境は関係なく、人は良くも悪くもなるものだと思いました。
困難な状況になったとき、助けてくれる人は必ず出てきます。
『そして、バトンは渡された』でもそうですが、瀬尾さんは固定概念をやさしく覆してくれます。
とても心が温まる素晴らしい小説でした。

○『平成くん、さようなら』/古市憲寿
安楽死が合法化された現代日本を描いた小説。
平成の世代を象徴する人物としてメディアにもてはやされる平成(ひとなり)くんは安楽死を望んでいるが、恋人の愛は受け入れられずにいます。
所謂、富裕層である2人の生活は浮世離れしすぎて、なかなか共感しづらかったです。
ある意味、著者らしい内容だなとも思いました。
今後、こんな時代が来るのかもしれません。


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