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食の魔法

その時はいつも先頭で
見つけるのがすごく楽だったと言っていた
開会式の時から目立つのだ


普段は背の低い方から並ぶのに
その時だけは順序が逆
なにせクラスでも1、2を争う高身長
毎回先頭だった


私の両親は共働きで
普段は祖父母といる時間が長かった
母親に至っては飲食関係だったこともあり
土日は普通に仕事だった


ただ運動会の日だけは休みをとって
場所取りを父親に任せ
早朝からせっせとお弁当を作ってくれた


普段は休みの日にいない母
休日にいるのはとても新鮮で
目立つのが不得意だった私も
その時だけは目立つところにいて見てほしかった


競争やダンスでしっかり見せ場を作った後は
家族6人でお弁当を囲む
いつものたわら形のおにぎり


おかずにはきゅうり・うずらの卵・ウインナーの順で爪楊枝で刺したもの
ミートボールに唐揚げにポテトサラダ
横で食べてる弟はすごい勢いで頬張ってる
私も普段は細い食だけれども
この時ばかりはついつい食べすぎちゃう


午前の競争の結果や普段の学校生活のこと
みんな笑顔で食べながら話すとついつい時間の経つのも忘れる
午後からのプログラムも頑張れる
そんな癒しと力をもらえる母のお弁当は
あの時の私にとって「魔法のお弁当」だった

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