拝啓 好きだった人へ
私を好きだったことはありませんか。
いつか教えてくれた思わせぶりな題名の曲。何回スキップして、何回リピートしたかな。
別にもう好きじゃないよ、その音楽。でも、いつまでも作業用BGMにはなりそうにない。
別に大した会話はしていない。だから、何気ない会話が大した会話になってしまったんだ。別に特別な時間も過ごしていない。だから、何気ない時間が特別になったんだ。
少ない思い出に色を付けてしまって、好き戻りしてしまうだけなんだ。
別にもう好きじゃないよ、その思い出。でも、更新されないページに何度も塗り絵をしてしまうんだ。
人生で本気を出した恋が三回なら、なぜことあるごとに日常に登場してくるのは君一人なんだ。
別にもう、あなたは好きだった人に過ぎない。でも、「一度でも私を好きだったことはありませんか」その答えだけが知りたくなる。
拝啓、好きだった人へ。
その答えを「時効だから」って、少し恥ずかしそうに話しませんか。ただそれだけで、教えてくれたあの音楽はなんでもないプレイリストに紛れて、少ない思い出に好き戻りはしない。
欲を言えば、もう一つ聞きたい。なぜ夜更けに突然この音楽を送ってきたのか。
『好きだった(はずだった)』
こっちのセリフだわ。
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