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「試合の明暗を分けた11番」20-21 PL 第28節 アーセナル×トッテナム・ホットスパー レビュー

アーセナルにとって最も勝たなくてはならない試合。ノースロンドンダービー。ホームスタジアム、エミレーツでの試合となれば尚更である。前回アウェイでの対戦時は、モウリーニョ術中にはまり敗戦。今節はリベンジの意味でも絶対に勝たなくてはならない。アーセナルは10位、スパーズは7位。勝ち点差は7。アーセナルはここで負けるとスパーズとの勝ち点差は10に開き、プレミアリーグの順位でもEL出場権の獲得すら危うくなってしまう。繰り返しとなるが、絶対に勝たなくてはならない試合である。

プレミアリーグでの前回対戦時レビューはこちら

■ チーム概要

【HOME】
・アーセナル(監督:ミケル・アルテタ)
フォーメーション:4-2-3-1
【AWAY】
・トッテナム・ホットスパー(監督:ジョゼ・モウリーニョ)
フォーメーション:4-2-3-1

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互いにミッドウィークにELを戦っており、中2日と過密日程で挑む今回のノースロンドンダービー。両チームともに怪我人も少なく概ねベストメンバーを揃える。しかし、アーセナルは先発予定だったオーバメヤンが規律違反ということでスターティングメンバーから外れることに。代役はラカゼットに託された。

■ 前半①:相手に自由を与えたスパーズの守備

ここ数試合、ビルドアップでのミスからいくつか失点を重ねており不安のあるアーセナル。しかし試合開始からスパーズの前線プレスは弱め。以外にもモウリーニョはアーセナルのビルドアップの脆さを突いてこなかった。

プレスがなければ自由にビルドアップを実行できるアーセナル。いつもと同様、CBとCHの4枚を軸にビルドアップを行いSBを高い位置へ。主にビルドアップの出口となるのは、左寄りのラカゼット右寄りのウーデゴール。気を利かせたポジショニングで後ろからボールを引き出す。ミドルサードからは、両SB、両SHと連携しながらボールを前進。何度も再度の深い位置まで攻め込むことに成功していた。

特にアーセナルの左サイドは、スパーズにとって驚異となっていた。スミス=ロウがハーフスペースからスパーズの右SBドハーティの視界から消えるように裏のスペースへランニング。そこへティアニーやジャカから鋭いパスが何度も供給されスパーズの右サイドを崩していた。

■ 前半②:相手に自由を与えないアーセナルの守備

相手のビルドアップに対して特に対策を講じなかったスパーズ。反対にアーセナルは積極的に前線からプレッシングを行い、スパーズのビルドアップを阻止しにかかる。

スパーズのビルドアップは、2CB+2CHと比較的アーセナルと似た形。ただ、アーセナルはジャカ、トーマスと2人が臨機応変にCB間やCB脇へ落ちてサポートするが、スパーズは基本的にホイビュアがビルドアップをサポートする形。しかもあまりCBラインへは降りずにできる限りCHのラインでボールを受けることを試みる。

これに対してアーセナルは、ウーデゴールがCBからホイビュアへのパスコースを切りながらプレッシング。それをスイッチに周りもポジションを上げてビルドアップで自由を与えない。

はじめの決定機は、この守備から生まれる。15分、ウーデゴールのプレッシングからボールを回収。そのままトーマスからスミス=ロウへ。バイタルエリアでパスを受けたスミス=ロウが右足を振り抜きミドルシュート。ボールはGKロリスの手を超えたもののポストに阻まれゴールとはならず。しかし、ウーデゴールの守備からアーセナルは良い流れを作ることが出来ていた。

■ 前半③:互いに輝いた背番号11

17分、スパーズにアクシデント。ソン・フンミンがハムストリングの負傷によりピッチを退く。交代で入ってきたのは、背番号11のエリック・ラメラ。ラメラはトップ下に入り、ルーカス・モウラが左SHへ。

スパーズのプレスがゆるくビルドアップを自由にできるアーセナル。守備でも引き続き前線からのプレスで簡単にボールを回収。アーセナルが試合を支配する。しかし、ファイナルサードまでボールを運べるものの、なかなか中央は崩しきれず、サイドからのクロスに活路を見出すがなかなか決定機までは至らない。

そして30分、この試合で初めてスパーズがしっかりとボールを保持する局面が訪れる。右サイドのベイルから逆サイドの左SBレギロンまで大きくサイドチェンジ。これをレギロンがワンタッチで中へ折返し。中央でルーカス・モウラが落としたボールを背番号11エリック・ラメラが華麗なラボーナでシュート。これがトーマスの股を抜けてゴール右隅へ。GKレノも反応しきれず、スパーズがわずかシュート1本で先制に成功した。

スーパーゴールで先制されたものの、アーセナルは崩れずに引き続きビルドアップと前線の守備から試合のペースを手繰り寄せる。36分には、この試合再三崩している左サイドからグラウンダーのマイナスクロスをラカゼットがスルー、後ろから走り込んできたセドリックがこれをシュートするもポストに阻まれる惜しいシーンもあった。

そして、43分にアーセナルは背番号11の活躍により同点ゴールを勝ち取る。引き続きこの試合で再三崩している左サイド。今度はティアニーがドリブルでドハーティをかわしてグラウンダーのクロス。これを中央でフリーになっていたウーデゴールがシュート。ボールが相手に当たるもののそのままゴールへ吸い込まれる。ここまでビルドアップでも頻繁にサポートを行ってボールを前進させ、守備でも精力的に走りボール回収のきっかけを作ってきた背番号11が値千金の同点ゴール。これが彼のプレミアリーグ初ゴールとなった。

■ 後半①:支配するアーセナル

同点で迎えた後半、アーセナルはサカが負傷ということでペペと交代。この試合でも要所要所で活躍していたので、怪我が長引かないことを願うばかりだ。

後半も引き続き試合はアーセナルが主導権を握る。アーセナルが攻め込み、相手のクリアボールをCHやCBが回収。守備でも引き続きウーデゴールのプレッシングを軸にビルドアップで自由にさせずボールを蹴らせてまた回収。2次攻撃3次攻撃と波状攻撃を仕掛け試合を支配するアーセナル。

62分、映像が切り替わった瞬間のパスカットだったので予想になってしまうが、スパーズのGKロリスが蹴ったゴールキックをペペがパスカット。そのまま一気に前線のラカゼットへ狭いスペースを通す鋭いパス。これでGKと1対1になったラカゼットがトラップからシュートを試みるもうまく足をミートできず。しかし後ろからシュートブロックに来たサンチェスのタックルがラカゼットに当たったということでファールの判定に。VARでも検証が行われたがそのまま判定はPK。これをラカゼットが難なく決めて遂にアーセナルが逆転に成功した。

■ 後半②:数的優位を活かせない15分間

75分、エリック・ラメラがティアニーの顔を手で叩いたことでこの日2枚目のイエローカードで退場に。華麗なラボーナのスーパーゴールで先制点を挙げたものの、ラフプレーにより退場することになったスパーズの背番号11。これでアーセナルは数的優位の状態で残り15分間を戦えることになった。

この退場によりスパーズはルーカス・モウラを前線に上げた4-3-2のような布陣に変更する。また、アーセナルもこのタイミングでスミス=ロウを下げてウィリアンを投入。

数的優位を活かせるはずのアーセナルだったが、ここから集中が切れてしまったのか疲れが出たのかパスミスを連発し、ここまでの良い流れが嘘だったかのようにリズムを崩していく。82分にはスパーズのフリーキックからケインに頭で決められてしまったもののオフサイドに救われノーゴールに。

アーセナルが自らのミスでリズムを崩したこともあるが、スパーズの布陣変更とパワープレーの割り切りスタンスも影響しているように見えた。4-3-2の3センターにしたことでアーセナルのプレスが噛み合わない形になってしまい、後ろから精度の高いロングフィードを許してしまうことに。また、パワープレーによりDF陣が後ろに押し下げられることでアーセナルが間延びしてしまいボールを回収できなくなってしまっていた。

アルテタは対策としてラカゼットを下げてエルネニーを投入。中央に厚みを持たせることが狙いだろうか。しかし、これでもスパーズの勢いは抑えきれず。89分のゴール前のフリーキックでは、ケインのキックがポスト直撃。そのこぼれ球をサンチェスが押し込むもマガリャンイスが頭でこれをブロック。最大のピンチを救った。アディショナルタイムもスパーズの猛攻は続いたものの、アーセナルがなんとか凌ぎきり試合終了。逆転勝利でノースロンドンダービーを制した。

■ 試合結果

Arsenal 2 × 1 Tottenham Hotspur

■ 得点
33分:エリック・ラメラ(アシスト:ルーカス・モウラ)
44分:ウーデゴール(アシスト:ティアニー)
64分:ラカゼット(PK)

■ 交代
19分:ソン・フンミン → エリック・ラメラ(負傷交代)
45分:サカ → ペペ
57分:ベイル → シソコ
62分:エンドンベレ → デレ・アリ
77分:スミス=ロウ → ウィリアン
88分:ラカゼット → エルネニー

■ 試合ハイライト

■ あとがき

スコアだけ見れば1点差。僅差のスコアだったものの、試合終盤の締めくくりを除けば完勝に近い内容だったように思う。モウリーニョが積極的なフォアチェックの戦術を取ってこなかったのは、アーセナルにとってラッキーだったかもしれない。

互いに背番号11の活躍が試合の明暗を分けた今シーズン2度目のノースロンドンダービー。ヒーローから戦犯にまで陥ってしまったスパーズの背番号11。対するアーセナルの背番号11は、攻守に渡って大活躍していた。攻撃では言わずもがな、守備でも自らのプレッシングから周りへの指示まで、この試合のすべてを彼がコントロールしていたと言っても過言ではないほどのプレーだった。願わくば完全移籍でアーセナルに加わってほしい。そう思わせるほどの活躍だった。

ここで勝利を挙げたものの、順位は引き続き10位のまま。厳しい状況には変わりない。けれど、今はノースロンドンダービー勝利の余韻を楽しもう。


見出し画像 引用元:アーセナル公式HP
ハイライト動画:アーセナル公式 You Tube
フォーメーション画像作成:TACTICALista