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「遠ざかる上位チーム」20-21 PL 第30節 アーセナル×リヴァプール レビュー

インターナショナルマッチウィーク明け、第30節は9位のアーセナルと7位のリヴァプールの対戦。互いにチャンピオンズリーグ出場権獲得を目指して4位を狙う両チーム。アーセナルとしては、ここで勝ち点3を勝ち取れなければ4位は現実的ではなくなる。正念場となる一戦。

プレミアリーグでの前回対戦時レビューはこちら

■ チーム概要

【HOME】
・アーセナル(監督:ミケル・アルテタ)
フォーメーション:4-2-3-1
【AWAY】
・リヴァプール(監督:ユルゲン・クロップ)
フォーメーション:4-1-2-3

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アーセナルは負傷や休養などで今までのメンバーと少し異なるスタメンに。サカ、ダビド・ルイス、スミス=ロウは負傷で欠場、ジャカはインターナショナルマッチウィークでの疲れを考慮してメンバー外に。ここまで中核を担っていた数名がここに来て欠場という不安を感じるメンバー選考に。対するリヴァプールはフィルミーノが復帰、ファン・ダイクなど主力のCB長期離脱により不安を抱えていた後ろのメンバーも安定し、ファビーニョを本来のアンカー起用に。ジョタを休ませたぐらいで盤石に近いメンバー選考となった。

■ 前半:攻守で圧倒するリヴァプール

アーセナルは試合開始からボールを保持。ゲームの流れを掴みにかかる。が、ボールを保持できたのは、開始から5分ほど。その後はリヴァプールのインテンシティの高いトランジションでボールを奪われ続け、両サイドを深く押し込まれる展開が続いた。

SHに起用されたオーバメヤン、ペペも守備に下がらざるを得ない状況を作られ、前線にはラカゼットのみ。ボールを回収できたとしても前線のラカゼット一人ではボールをキープすることがままならず、陣地回復すらさせてもらえない状況に。

ボールを保持できなければ守備で打開の糸口を掴みたいアーセナル。しかし、前線のプレッシングはリヴァプールに簡単に無効化される。リヴァプールの2CBは距離を大きくとってプレッシングが届かない位置でビルドアップ。中央に高いキック精度を誇るGKアリソンが存在していることも大きい。アンカーのファビーニョも無駄に降りてくることなく、最小限の人数でアーセナルの前線プレスを無効化しビルドアップに成功していた。

前線でボールを収められるリヴァプール。
前線でボールを収められないアーセナル。
プレッシングで相手のビルドアップを封じるリヴァプール。
プレッシングで相手のビルドアップを封じられないアーセナル。
攻守に渡ってリヴァプールがゲームを支配し、アーセナルを圧倒する。

ただ、リヴァプールはファイナルサードでのプレー精度が低く、決定的なシーンまでは至らない。アーセナルはそこに救われるような形で前半をなんとか無失点で終える。しかし、前半終了間際にティアニーが負傷交代。さらに厳しい状況へと追い込まれることになる。

■ 後半:試合を大きく動かした采配

ハーフタイムを挟んで心機一転、巻き返しにかかりたいアーセナル。しかし後半もボールを保持できたのは始めの数分のみ。その後はボールを失い、前半と同様に終始攻め続けられる展開に。ただ、数少ないボール保持の機会からチャンスを生み出したシーンもあった。54分には前線プレスからボールを上手く回収してボールを保持。右サイドを崩して最後はチェンバースのクロス。これが相手に引っかかりシュートまでは至らず。アーセナルとしては、これを継続して行きたかったところだろう。しかし、その後もゲームはリヴァプールが支配する。

58分にはセバージョスを下げてエルネニーを投入。中盤での守備強度アップ、ビルドアップでのボール保持が狙いか。しかし、この采配も試合の展開を変えるまでには至らず。61分にはリヴァプールが左SBのロバートソンを下げてジョタをワントップに投入。フィルミーノがトップ下に入り、ミルナーが左SBへ。4-2-3-1のシステムに変更。この采配が試合を大きく動かすことに。

ジョタ投入から3分後、GKアリソンからのロングフィードをアーセナル陣地でボールキープ。右サイドへ展開したあと、A.アーノルドからの鋭いクロスをジョタが頭で合わせてリヴァプールが先制ゴール。A.アーノルドのGKがギリギリ出られない位置に蹴った精度の高いクロス、またSB-CB間のわずかなスペースに飛び込んだジョタのポジショニングの良さが光ったシーンだった。

67分には、GKレノのロングフィードを前線でキープ出来ずにボールロスト、リヴァプールのショートカウンターに。縦に早い展開で一気にファビーニョからマガリャンイスの裏のスペースへサラーを走らせるパス。マガリャンイスはスライディングでクリアを試みるもサラーがそのままボールをキープ。そのままドリブルで持ち込み、最後はマガリャンイスの前にスッと体を入れてブロックし、落ち着いてレノの股を抜くシュートでリヴァプールが追加点。あっという間にリードを2点に広げる。

81分、アーセナルのビルドアップ。ボールを持つマガリャンイスに対してサラーがプレッシング。そのプレスを回避するべくマガリャンイスは浮き玉で左SBのセドリックへパス。これが中途半端なプレートなり、A.アーノルドが簡単にパスカット。そのままサラーへパスし、サラーから中央へ。マネがトラップしたボールを後ろから走り込んできたジョタがゴールへ豪快に蹴り込んでこの日2点目のゴール。リードは3点に広がった。ボールロストの仕方はもちろん、ロスト後のプレーにチームの大きな差を感じたシーンだった。ボールロスト直後にアーセナルは足が止まり、リヴァプールは流れるように走る。チームとしての意識の違い、練度の違いは明白だった。

試合はこのまま0-3で終了。試合内容もスコア同様にリヴァプールの圧勝となった。

■ 試合結果

Arsenal 0 × 3 Liverpool

■ 得点
64分:ディオゴ・ジョタ(アシスト:A.アーノルド)
68分:サラー
82分:ディオゴ・ジョタ(アシスト:マネ)

■ 交代
45+1分:ティアニー → セドリック
58分:セバージョス → エルネニー
61分:ロバートソン → ディオゴ・ジョタ
77分:オーバメヤン → マルティネッリ
78分:フィルミーノ → ワイナルドゥム
84分:オザン・カバク → ウィリアムズ

■ 試合ハイライト

■ あとがき

リヴァプールの守備に対して何も出来なかったアーセナル。リヴァプールのインテンシティも高く、精度も高いプレッシングを上回るには、個で打開するか、それを上回るポジショニング、パス精度が重要になる。ビルドアップでチーム貢献度の高いジャカ、ダビド・ルイスをこの試合で欠いたことは痛手だったかもしれない。前線でビルドアップの出口になれるスミス=ロウ、サカの不在も痛手だったかもしれない。ただ、彼らが居たとして結果が変わっていたかというと、それだけの差ではないように感じる。

この敗戦でアーセナルは10位に。4位とは勝ち点差が10。残り試合が8試合なので、可能性はかなり低くなってしまった。来シーズンのチャンピオンズリーグへの出場を勝ち取るには、ヨーロッパリーグでの優勝を勝ち取る方が可能性が高そうだ。だが、今回のような試合を続けていて優勝できるほどヨーロッパリーグも甘くはない。

シーズン終盤にきてチームとしての勢いを失いつつある今、アルテタがどのように来シーズンへの道を切り開いていくのか、注目していきたい。


見出し画像 引用元:アーセナル公式HP
ハイライト動画:アーセナル公式 You Tube
フォーメーション画像作成:TACTICALista