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ものづくりのやりがいと、わがままの話(44回)

僕は子供の頃から色々な材料を使いものづくりをしてきた。
その中でも金属のような「硬い素材」を使ったものづくりが特に気に入っている。


どちらかというと柔かい布や、粘土細工は苦手で、硬くて頑丈なものを色々な機械を使って切ったり、曲げたりしていると、「ねじ伏せてやった」という達成感がある。

材料の切断一つとっても、1ミリ違えば綺麗に仕上がらないし、加工をする時は火傷をしないように丈夫な長袖長ズボンと分厚い手袋、それに目を保護するための仮面を被る。
ガスや電気はもちろん使うし、時には吸い込むと有害な薬品も使う。

そこまでしてやっと金属に言うことを聞かせることができる。

硬くて重たい金属と自分が力比べしている感覚にやりがいを感じる一方、とてもわがままなものづくりだなと感じる。


以前農業をしている人と話す機会があった。
農作物の生産はその年の天候やまわりの環境に左右される。

うまく植え付けができても台風が来ればパーになるし、程よく雨が降ってくれるわけでもない。
時には暑すぎたり寒すぎたりと、人間の手には及ばないことに振り回される。

自然相手に力比べをすることはない。

万事を尽くして自然に任せ、後はなるようになる。
そう考えないとやっていられないそうだ。

金属をミリ単位で削ったり、たくさんの電気を使う工具で無理やり切ったり貼ったりする僕のものづくりは、人間のエゴなのかなと思う時がある。


鉄は精製した状態だと素材として不安定で、周りにある酸素と結びついて酸化鉄になることで安定する。
自然界ではこの酸化鉄の状態で存在するので、錆びることは自然なことなのだそうだ。

自然な状態から遠ざけ、人の力で形にする僕のものづくりと、自然とうまく付き合っていく農業だと全く捉え方が違うし、自分にはできないなと思う。

僕はもの作りに関してはわがままなんだと思う。

いつか畑作りなんかも体験してみたい。
その時には自分の非力さや、傲慢さを突きつけられるんだろうなと思っている。

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