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野外劇団「楽市楽座」2023年炎の鳥をみにいった【生きる・生まれる・死ぬ】

宝島から10年?毎年のおたのしみ

箱崎の放生会ではじめてみてからもうだいぶたった。生き延びてる。
親子3人〜夫婦2組4人組〜夫婦2人とメンバーチェンジ(?)をしながらもずっとずっと楽しませてくれる野外劇団楽市楽座。

演目はいつも「小さな生き物」の視線から見た世界のおはなし。
戦いにNO!といい、歌って踊って幸せでいたいという願いをいろんなキャラクターで表現する。

戦争という「すべてを焼き殺す」行為に激しく怒り、叫び。
原子力やその他の利権に怒り。
芝居を通じて「世の中の悪と戦う(と感じた)」時代もあった。

根底に「不条理への怒り」はずっと燃えてるけれど、ここ数年のお芝居は「生きる」ということにシフトしてる。
この時代を「幸せに生き抜くこと」が1番の「悪への反抗」だというように。

お芝居が始まる前のギターソロが大好き

2人合わせて120歳の主役が演じるのは鶴とツバメ

2人合わせて120歳。
長山現と佐野キリコ。ふたりで作り、演じる。音楽も舞台装置も衣装も。
全て自分たちでやる。それがいちばん理想的な制作だとは解っていてもなかなか難しい。それをやってのける気力と体力に毎回脱帽する。

今回のお話の主役は鶴とツバメ。ほんとうは出会うはずのない季節を超える渡り鳥が恋に落ちる話。女性の鶴を長山現、男性のツバメを佐野キリコがやる配役が大成功。長山現のユーモラスな演技と佐野キリコのアクションやキメが際立つ「歌劇」だった。
出会った2人の過去をまじえて物語は進む。
衣装を大きく変えなくても、椅子やメガネ鼻をつけたり外したりでシチュエーションやキャラクターがわかる。この辺の「ミニマムな演出」は見ているものの想像力をかきたてるからワクワクする。

運命にあらがい、あきらめもする。

「生きる」をテーマにした彼らのお芝居で、こんなにしっかり「死」が描かれたことはなかった。同時に「生きるエネルギー」をダンスで表現するものもなかった。
スペインが舞台で音楽もフラメンコ!回転舞台に靴音が響く。
悲しみを吹き飛ばす音楽の代表格がフラメンコやタンゴだと思う。悲しみを乗り越えるのではなく隣に置いて忘れずに生きる。そんな音楽。
生まれて、親の元で育てられ、親元を離れ、誰かと出会い、恋に落ち。
生きて、生きて、生きて、死ぬ。
多くの人が経験する、楽市楽座も経験した成長と巣立ち。

生きて、生きて、生きて、死ぬ。
人生はただそれだけ。始まりと終わりのあいだに起きるいろんなことを精一杯楽しみ、笑い、涙を流す。
「炎の鳥」は中心に「生きる・生き延びる」というテーマがどしりとあるから、逆におしばいならではの楽しさが満載だった。
その楽しさはもちろん「悲しみをちゃんとそばにおいている」のだけど。

生きること、死にゆくことから目を逸らさずに、すべてを飲み込んでその上で「たのしいこと」を探し、育てていこうと、僕を含めた観客は思うだろう。

子守唄〜おばけのうたはほんとに楽しい大傑作

長山の楽曲を踊りまくるキリコ/かっこいい!

怒りの叫びをくぐりぬけ「生きる叫び」となった楽市楽座。
今回も楽曲が素晴らしい。
ギターよ!と哀愁ただようロマンチックな歌から、足がツルなんていうパンクロック(笑)怖がらせまくる子守唄。
バラエティも、ふたりで演奏するためのアレンジも。
生で音楽を演奏する人たちは必ず見た方がいい。
お芝居とか、音楽とか、映画とかアニメとか、ジャンルはなんでもいいから「食べず嫌い」にならずに。

そしてダンス!決めポーズのかっこよさ。男装の麗人キリコ。
不安定な回転舞台で過去最高のダンス!
ガンガンに投げ銭が飛ぶ。

いえーーーーーーい!

お金を投げるのは年に一度のお楽しみ!

今回、お客さんは割と初めてのかたも多かったようだ。
最初はとまどう投げ銭。
「人にお金を投げるなんて!」
って思うかも。とくにこの国は「チップを弾む」っていう文化はあまりなく、「お金を人にあげる=施す」みたいな変な感じがあるけど「いいものを見た、食べた」らお金を払うの当たり前だから気にしないでどんどん投げて(笑)折り紙に百円や五百円を包んで投げるの、ほんとに楽しい。お芝居に参加してる気がする。

来年は今の旅芝居を始めて15年だそう!
あなたのまちの近くに楽市楽座が来た時のために、百円や五百円を貯金しておこう!

人のゆくえはやがては銀河

最後に自分の作ったうたをちょっとだけ紹介させてほしい。
この「炎の鳥」を見ていて「ああ、そうだよ」と思ったので。

始まり終わるその間に もらったものを落としてゆく
落としたものを誰かが拾い 僕が歩かない道を進む
人の行方はやがては銀河 どこかの未来で会えるだろ
人の行方はやがては銀河 穏やかな言葉背負っていけ

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