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頚部側屈および回旋の簡易評価

頚部の側屈および回旋における症状に対して簡易的に評価し、可能性を疑い、対処すべき選択肢を導きます。

その上で必要な知識、考えを解説したいと思います。

まず、側屈および回旋の運動はセットで考えていきます。

なぜなら脊柱は側屈に対しては回旋が同時に起こる構造があり、これをカップリングモーションと言います。

この構造的特徴も踏まえて側屈および回旋の運動には3つの特徴を理解する必要があります。


・カップリングモーション
・肩峰の高低差
・上半身質量中心

この3点ですね。

カップリングモーションは前述した通り、脊柱の構造上起こる側屈ー回旋の複合的な運動のことです。

カップリングモーションについて

頚椎の側屈に対する回旋の動き

頚椎は側屈時に棘突起が対側に回旋します。

頭部が安定した肢位では頚椎が機能的に側弯を呈する場合はC3以下の下位頚椎は側弯の凸側に棘突起が回旋しますが、C2より上位は反対側に回旋することで頭部を地面に対し、垂直に保持します。

カップリングモーションは関節構造、椎間板の恒常性、筋の左右差といった要素から起こります。

そのため、カップリングモーションによる連動性が欠けると

・椎間板機能の障害
・筋の左右差
・関節の変形
などが可能性として浮上します。

カップリングモーションの触察

頚部のモーションパルペイションによるカップリングモーションの触察のポイントです。

頚椎には項靭帯が棘突起の間の窪みに存在します。

項靭帯を避けて側方から指で棘突起に触れることができます。棘突起の動きよりも滑らかに側屈ができるかどうかを意識して触察を行うと良いでしょう。

肩峰の左右高低差

肩峰の左右高低差は頚部の回旋可動域と相関性があります。

肩峰の低い方と反対に棘突起は回旋すると考えられ、それはカップリングモーションによる下位頚椎および上位胸椎の側屈に伴うとされています。

頚部の回旋は肩甲骨の内・外方への動きと比例し、頚部の回旋制限はこの動きの制限によって引き起こされる場合もあります。

頚部回旋が肩甲骨の動きで拡大されるようであれば肩甲骨の内・外方運動を加えることを考えます。

上半身質量中心

頚部の回旋には上半身質量中心と座圧中心が関係することもあります。

上半身質量中心はT6~9辺りと言われ、前面からだと剣状突起付近に当たります。

上半身質量中心は下行性運動連鎖として捉えることができます。
重心位置の変化によって頚部回旋の可動域に変化が見られます。

上半身質量中心の変化

座圧中心は上行性の運動連鎖として重心の変化は頚部可動性に影響があり、日常生活の癖や作業の繰り返しなどに対し、重心の不安定性は筋緊張や代償動作を助長します。


座圧中心と上半身質量中心が安定しない場合、上の写真のように肩の高低差によって代償を起こし、頚部の回旋可動域を助けます。

胸部の側屈を大きくすることで回旋可動域が増大するためです。

このように座圧中心と上半身質量中心といった重心位置の変化も視野に入れておくとマクロ的な視点で可動域を捉えることがしやすくなるかもしれません。

斜角筋の機能

代表的な頚部側屈の筋である斜角筋。
胸郭出口症候群などで注目される筋でもあります。

主な機能はふたつ
①頚部側屈
②上位肋骨(第1-2)の挙上
となります。

斜角筋の機能低下は
・重量物による過剰な伸張
・上肢の持続的な挙上
・横隔膜の活動低下

このようなことで起こります。

また肩甲挙筋と共に上肢の安定性に関与します。

斜角筋は上肢の荷重に対し、上位の肋骨を安定させることで鎖骨を押し上げます。また、肩甲骨は安定位によって鎖骨~胸骨を保持しますが、不安定になるとこのユニットが機能せず、斜角筋にストレスが大きくなります。

これらは筋膜、胸膜とも連結し、運動学的な働きだけでなく、生理的な働きの中でも筋活動が起こっていると想定できます。

斜角筋の簡易的な機能評価

後頭下筋群

後頭下筋群と上位頚椎は頚部の回旋運動に欠かせないユニットです。

後頭下筋群は様々な要因によってタイトになり、頚部痛以外にも頭痛などにも波及します。

頚部回旋制限に後頭下筋群による可動制限がありますが、屈曲することで後頭下筋群の影響を少なくすることで回旋しやすくなる場合があります。

この場合は前述したように、肩峰の高さや上半身質量重心、頚椎の問題などを視野に入れます。


まとめ

このように頚部側屈および回旋の運動は頚部の問題だけではなく、脊柱をマクロ的に評価する必要があります。

痛みがなければ必ずしも最大可動域まで動くことが必要であるわけでもありません。

それらの制限因子を精査することで、別の視点が見えてくることもあります。




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