【あやなのサウナ比較文化学】byこばやしあやな

フィンランド在住の自営業者。コーディネーター、通翻訳者、文筆家、フィン語講師として快活…

【あやなのサウナ比較文化学】byこばやしあやな

フィンランド在住の自営業者。コーディネーター、通翻訳者、文筆家、フィン語講師として快活に仕事し遊んでいます。著書に『公衆サウナの国フィンランド』『クリエイティブサウナの国ニッポン』、訳書に『究極のサウナフルネス』。いつの間にやら「サウナ文化研究家」としてのお仕事依頼がメインに。

マガジン

  • 🇲🇦モロッコحمام(ハマム)編

    2019年5月、北アフリカのモロッコに現代まで息づく蒸気浴文化モロッカン・ハマムのフィールドワークを兼ねて各街を1人で巡った際の、取材・体験・考察記事シリーズです。

  • 🇱🇹リトアニア Pirtis(ピルティス)編

    リトアニア共和国に根付く蒸気浴文化【Pirtis(ピルティス)】についての、2020年夏のフィールドワークに基づく取材・体験・考察記事シリーズです。

  • 🇬🇪ジョージアაბანო(アバノ)編

    コーカサス地方のジョージアに根付く温水浴文化【აბანო(アバノ)】についての、2016年夏のフィールドワークに基づく取材・体験・考察記事シリーズです。

  • 🇲🇽メキシコTemazcal(テマスカル)編

    2024年1月に新婚旅行を兼ねてメキシコを旅したときの、プレヒスパニック時代から先住民族が受け継いできた蒸気浴文化テマスカルの見聞&体験録です。

  • 🇰🇿カザフスタン Монша(モンシャ)編

    カザフスタン共和国に根付く蒸気浴文化【Монша(モンシャ)】についての、2018年初夏のフィールドワークに基づく取材・体験・考察記事シリーズです(未完)

最近の記事

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【あやなのサウナ比較文化学】執筆への思い

昨日に引き続き、こんにちは! 祝・脱一日坊主!! さて昨日は、「サウナ」をめぐって、ここ2年のわたしの人生にどんな劇的な変化が起きたのかについて書きました。そして、あらためてnoteを再開させてこれから書き綴っていきたいテーマがある、と予告したところでいったん筆を置いて公開しました。 タイトルにあるので、もったいぶることでもないからさっそく報告しますが、この度シリーズとして定期的に書いてゆきたいなと思っているのは、 【あやなのサウナ比較文化学】というテーマなんです。

    • メキシコTemazcal旅【番外編③】マヤ族が崇める地底の水風呂セノーテめぐり

      これが、メキシコ編のほんとの最終回。 最後は、メキシコ南東部(ユカタン半島)の地底に無数に点在する、マヤ族が雨の神の宿る泉として崇めてきた神秘的なCenote(セノーテ)の沐浴紀行です! 地盤が崩壊すると現れる、地底空間の巨大な泉セノーテとは、長年の溶食によって石灰岩の地盤下が空洞化し、その陥没穴に地下水が溜まってできた泉のこと(※つまり泉と言っても湧き水ではない)。日本の秋吉台(秋芳洞)などと同じ、カルスト地形の一種です。 カリブ海に面した常夏エリアのユカタン半島の地底

      • メキシコTemazcal旅【番外編②】 大自然のエナジー漲るトラントンゴ洞窟温泉

        メキシコ入浴旅の番外編第2弾は、首都メキシコシティから車で4時間ほど北上したイダルゴ州の山間地にある、屈指の秘境トラントンゴ洞窟温泉(Grutas Tolantongo)をご紹介します。 サボテン山の奥地にて、轟音で飛沫と湯けむりを立たせるワイルド温泉テマスカル内でも焼け石に火山岩を使っていたように、中部メキシコは屈指の火山地帯。当然、私たち日本人が愛してやまない天然温泉も各地に沸いていて、メキシコ人たちの慰安旅行先になっています。 なかでもトラントンゴ温泉は、40度弱の

        • メキシコTemazcal旅【番外編①】 都会のレトロな街角公衆サウナ、バニョス

          メキシコの伝統的な蒸気浴文化「テマスカル」の膨大な報告記に最後までお付き合いくださり、どうもありがとうございました。 実はメキシコには、テマスカル以外にもまだまだバラエティ豊かな入浴文化が息づいているのです!! 今回からは【メキシコ・サ旅番外編】として、入浴オタクの私たちが現地でテマスカルと同じくらい満喫してきた、首都圏のBaños(メキシコ版公衆サウナ)、イダルゴ州のTolantongo温泉、そしてユカタン半島に点在するCenote(地下冷泉)について、ダイジェストで紹介

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        【あやなのサウナ比較文化学】執筆への思い

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        • 🇲🇦モロッコحمام(ハマム)編
          0本
        • 🇱🇹リトアニア Pirtis(ピルティス)編
          6本
        • 🇬🇪ジョージアაბანო(アバノ)編
          5本
        • 🇲🇽メキシコTemazcal(テマスカル)編
          10本
        • 🇰🇿カザフスタン Монша(モンシャ)編
          1本

        記事

          メキシコTemazcal編⑤現代のナワ族が受け継ぐテマスカル儀式の実態【後編】

          いよいよ、メキシコTemazcal報告記もこれが最終回です! これまでは、背景知識やウンチクばかりを詰め込んだ内容だったので(それらも他所では読めない貴重な内容だった自負はありますが…笑)、最後は、私自身が何度かのテマスカルを体験して感じたことや、個人的に印象に残ったことを中心にお話します。 中米と北欧の原住民族の、思いがけないシンクロまず、私にとってかなり衝撃的で印象に残っているのが、ホアンさんたちがテマスカル内で太鼓を叩きながら歌ってくれた、ナワ族に伝わる歌のいくつかが

          メキシコTemazcal編⑤現代のナワ族が受け継ぐテマスカル儀式の実態【後編】

          メキシコTemazcal編④現代のナワ族が受け継ぐテマスカル儀式の実態【前編】

          テマスカル考察シリーズもいよいよ佳境。かつて中央メキシコ一帯を支配し、アステカ神話の世界観を構築したナワ族の末裔たちが、今日どのような様式や観念を引き継いでテマスカルを実践しているのか、前後編にわたって具体的にご紹介します。 もちろん先導師によって内容や解釈が変わる部分も多いので、内容すべての細かな描写はしません。前編(今回)では、いくつかの重要な基本作法に込められた意図(象徴)を解説。そして後編(次回最終回)は、私たち自身の主観的なテマスカル体験記&感想文で、一連の報告記

          メキシコTemazcal編④現代のナワ族が受け継ぐテマスカル儀式の実態【前編】

          メキシコTemazcal編③浴室のタイプ別構造と蒸気のつくり方

          今回は、テマスカル浴室の構造タイプやそれぞれの温め方・蒸気のつくり方について、写真中心で解説します。焼け石に水をかけて蒸気をたてるという基本作法は、皆さんよくご存知のロウリュと変わりませんが、浴室のレイアウトには、フィンランド・サウナと似ている浴室と、全く異なる浴室とが存在しました! テマスカル浴室の基本構造と、温め方&入浴法テマスカルの外形には、きれいな半球のドーム型、屋根部分だけほぼフラットな円柱型、木の枝で造られたフレームに皮や布を被せるテント型、空間に四隅がある箱型

          メキシコTemazcal編③浴室のタイプ別構造と蒸気のつくり方

          メキシコTemazcal編②浴室を司る、個性豊かな神々とシンボリズムの世界

          前回の記事の最後に表明したとおり、ここから先は、民族や時代によってさまざまな流派がある(と言えるかもしれない)メキシコ・プレヒスパニック時代の蒸気浴文化の中から、temazcalliという言葉を生んだナワトル語の話者ナワ族が今日まで継承・実践してきた、本家テマスカルの世界観や実際の入浴法を浮き彫りにしてゆきます。 アステカ神話が土台となったテマスカルの世界観ナワ族(のなかの自称「メシカ」たち)が、最後に栄華を極めた舞台がアステカ帝国であったことは前回も述べました。そしてそれ

          メキシコTemazcal編②浴室を司る、個性豊かな神々とシンボリズムの世界

          メキシコTemazcal旅①文明滅亡後もテマスカルを手放さなかった先住民族たち

          いよいよこの記事から、中米メキシコに伝わる蒸気浴文化の「テマスカルとは一体なんなのか」という本題に切り込んでいきたいと思います! が、初回は例によってやや偏執的な言葉のルーツと歴史に関するお話です。 ナワトル語由来の「テマスカル」は、どんな意味?前回の準備編の最後にご紹介した、今回の私たちのフィールドワークに全面的に協力くださったナワトル語話者の先導師ホアンさんに尋ねたところ、テマスカル(Temazcal、ナワトル語での正確な発音は”temazcalli”)という言葉はメキ

          メキシコTemazcal旅①文明滅亡後もテマスカルを手放さなかった先住民族たち

          メキシコTemazcal旅 準備編|情報収集&施設選びの極意

          さっそくすみません。本記事からテマスカル旅で得た知見をレポートしていく予定だったのですが、本題に入る前に、急遽【準備編】を設けることにしました。そもそも現代メキシコでどんなテマスカルが体験できるのか、どうやって自分の趣向や目的に叶う施設を探すべきか…について、先に整理しておく必要があると思ったからです。 テマスカルをネット上で予習するのは実に難しい中米メキシコやその南隣国に伝わる蒸気浴室テマスカル(Temazcal)。いざ現地へ旅立つまでに、この謎に満ちたメソアメリカ版サウ

          メキシコTemazcal旅 準備編|情報収集&施設選びの極意

          メキシコTemazcal旅 導入編

          サウナ比較文化学旅シリーズ第3弾では、2024年1月の現地フィールドワークをもとに、中米のメキシコ合衆国および近隣国でプレヒスパニック時代(スペイン侵略期以前)から原住民が受け継いできた蒸気浴文化Temazcal(テマスカル)の、知られざる歴史と世界観に迫ります。 日本で手に入りうる情報だけでは謎の多いテマスカルは、現地でみずから体験して、その歴史と今日の姿を確かめなければ…と昔から強く憧れ続けていた入浴文化。いっぽう治安など不安な面も多く、一人でメキシコに乗り込むことをず

          ジョージアაბანო旅④ ローマ風呂が滅びようともジョージア風呂が不滅だったわけ

          やや間が空きましたが、ようやくジョージアაბანო(アバノ=風呂)旅の最終回です。 前回の記事で、ヨーロッパとアジアと中東の交差点ジョージアで、なぜかメジャーな蒸気浴ではなく、日本人同様の温水浴が根付いた発端の理由として、ローマ帝国時代に持ち込まれた古代ローマの公衆浴場での入浴文化の影響力を挙げました。 けれどご存知のように、かつてローマ帝国のすみずみまで伝搬した公衆浴場文化は、帝国の衰退とともに維持が難しくなります(当時のローマ風呂では、そもそも入浴料はほとんど徴収されず

          ジョージアაბანო旅④ ローマ風呂が滅びようともジョージア風呂が不滅だったわけ

          ジョージアაბანო旅③ 温泉大国へ最初に入浴文化を根付かせたのは、あの巨大帝国だった

          「アバノの歴史を紐解きたい」という私の要望を知り、ジョージア文化に精通したフィンランドサウナ協会員さんが、とても頼もしい現地のエキスパートを紹介してくださいました。ジョージアの伝統建築や文化財の修復・再建に携わる、建築家・建築史家のDavid Givishliviさんです。 「ジョージアでは、長い歴史のなかで、なぜ蒸気浴ではなく温水浴が主流であり続けたのですか?」という問いを、出発前のやりとりで直接ダビッドさんにぶつけたとき、彼は「はっきりとした答えを出すのは難しいが、少な

          ジョージアაბანო旅③ 温泉大国へ最初に入浴文化を根付かせたのは、あの巨大帝国だった

          ジョージアაბანო旅② 温泉街の公衆浴場は、女性市民の身繕い&女子会スポット

          今回は、前記事で紹介したジョージアの首都トビリシの旧市街にある一大温泉街アバノツバニ(აბანოთუბანი)に現存するさまざまな浴場の中で、女性が入れる唯一の共同浴場である、დედოფლის აბანო(デドプリス・アバノ)、通称Queen's Bathという、かなりディープなローカル浴場での体験や観察記をお伝えします。 ジョージアの公衆浴場では、個室浴場か共同浴場をまず選ぶジョージアの浴場「アバノ」を訪れる際には、まず入り口で「個室浴場」か「共同浴場」のどちらに入るかを

          ジョージアაბანო旅② 温泉街の公衆浴場は、女性市民の身繕い&女子会スポット

          ジョージアაბანო旅① 温泉に惚れ込んだ国王によって建設された、首都トビリシ

          ジョージアの温浴文化「アバノ」旅の出発点となるのは、やはりまず首都トビリシです。 首都名が公式的に「トビリシ(თბილისი / Tbilisi)」と定められたのは、ソ連時代の1937年以降のことで、古くはティフリス(ტფილისი / Tiflis)と呼ばれる街だったそうです。 温泉の治癒効果に魅せられた国王が開拓した首都現在のトビリシが置かれる地は、古代すでにいくらか集落はあったものの、まだ大部分が深い森に覆われていて、イベリア国王が狩場にしていました(※6世紀ごろまで

          ジョージアაბანო旅① 温泉に惚れ込んだ国王によって建設された、首都トビリシ

          ジョージアაბანო旅 導入編

          リトアニアの蒸気浴文化Pirtisの取材体験記に続く、サウナ比較文化学旅シリーズ第2弾で取り上げるのは、ジョージアに根付く温水浴文化、აბანო(アバノ)です! 街並みから食まで、とにかく”古今東西”まぜこぜジョージアと聞くと、アメリカの州の名前のほうが先に浮かぶ人もまだ少なくないかもしれません。2015年に「グルジア」から「ジョージア」へと正式改称されたこの国の所在は、黒海とカスピ海に挟まれた、通称「コーカサス地方」。 この引き地図を見てもらえば、北はロシア、南はトルコ