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🇱🇹リトアニア Pirtis(ピルティス)編

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リトアニア共和国に根付く蒸気浴文化【Pirtis(ピルティス)】についての、2020年夏のフィールドワークに基づく取材・体験・考察記事シリーズです。
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記事一覧

リトアニアPirtis旅 導入編

リトアニアPirtis旅 導入編

予告したとおり、【あやなの比較文化学】シリーズ初回はまず、去る2020年7月27日〜8月2日にフィールドワークに訪れた、バルト三国・南西端の小国リトアニアに息づくサウナ文化 Pirtis(ピルティス)についての、さまざまな見聞や体験の成果をご報告していきたいと思います。今回はエッセイの本題に入る前の導入編として、リトアニアという国のいろはや滞在情報についてざっとまとめました。旅のイメージや計画にお

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リトアニアPirtis旅① 鳥とミツバチと蒸気浴 |語源が示す「ぬくもり」の神秘性

リトアニアPirtis旅① 鳥とミツバチと蒸気浴 |語源が示す「ぬくもり」の神秘性

知性にあふれた女性サウナ師との出会い今回のわたしのリトアニア・サウナ旅を終始エスコートしてくださったのは、リトアニアで数少ない女性プロサウナ師、サウナ文化研究者としてご活躍される、Birutė Masiliauskienėさん。国内のサウナ愛好家の間ではラウメという愛称で知られていて、わたしもそう呼んでいます。以前に彼女とわたしを引き合わせてくださったのは、国際サウナ協会会長のリスト・エロマ―氏。

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リトアニアPirtis旅② ロシアは男性主導、リトアニアは女性主導!?|サウナとジェンダーの歴史的関係

リトアニアPirtis旅② ロシアは男性主導、リトアニアは女性主導!?|サウナとジェンダーの歴史的関係

前回の記事では、このリトアニア・サウナ旅の案内人ラウメさんとの出会いと、彼女がまず教えてくれた、リトアニア語のサウナ Pirtis(ピルティス)という語のユニークな語源についてお話しました。そして今回は、彼女の女性サウナ師としての施しの日に密着したときのお話を…と予告には書いたのですが、その前に急遽ひと記事追加、お許しを! サウナ文化とお国柄の関係性、とりわけ男女の果たす役割や社会的立場が、どのよ

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リトアニアPirtis旅③ 心身の触れ合いが生む輪廻の営み|サウナ師のウィスキング体験記

リトアニアPirtis旅③ 心身の触れ合いが生む輪廻の営み|サウナ師のウィスキング体験記

前回の記事では、各国のサウナ文化に、その国家や地域の男女間の役割や優位性が影響を与えているというジェンダー論。とりわけリトアニア・サウナは女性の感性や欲求の色が強く、ウィスキング(※サウナの中で、植物の葉束を使って身体をしばいたりマッサージする行為)の習慣においては、女性だけが経験する出産行為の苦しみと生命誕生までのシナリオが暗喩されている…という、象徴学的な可能性をお伝えしました。今回はいよいよ

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リトアニアPirtis旅④ プロサウナ師とプロサウナ愛好家の養成アカデミー

リトアニアPirtis旅④ プロサウナ師とプロサウナ愛好家の養成アカデミー

これまで紹介してきたラウメさんのように、サウナ浴のホストとして、入浴者にウィスキングやマッサージなどのセッションを提供する「サウナ師」にあたる職業を、一般的にはBath Masterと呼びます。リトアニアでは、理学療法士などのように国家資格があるわけではありませんが、2020年現在Lietuviškos Pirties Akademija(リトアニア・ピルティス・アカデミー)と Internati

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リトアニアPirtis旅⑤ 土着信仰と異文化と時間軸のせめぎ合いの果てに

リトアニアPirtis旅⑤ 土着信仰と異文化と時間軸のせめぎ合いの果てに

2020年夏のフィールドワークを基にしたリトアニアン・サウナ=Pirtis(ピルティス)の取材・考察記事が、④バスマスター養成アカデミーについての記事を最後に、完結の寸前で何年も置き去りにされてしまっていました…。言い訳がましいですが、この数年は『クリエイティブサウナの国ニッポン』の執筆や『究極のサウナフルネス』の翻訳編集などにかまけ、すっかり業務外に「書く」ことに億劫になってしまっていました。。

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