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森の恵みをいただきます🍄【YUKI】

毎日清々しい秋晴れに夜は虫の大合唱、朝晩は少し肌寒くなって秋も深まってきましたね。
フィンランドでは北部ラップランドは既に雪が降ったり、南部のヘルシンキでも天気が悪い日は最高気温が10度を下回る日もあって薄手のダウンも必須、今まさにルスカ(紅葉)が街を彩っているようです。

SNSを見ていると今年はキノコ狩り天国のようで、秋の恵みを頂戴しに森にこぞって出かけるフィンランド人が多く、白樺のバスケットがキノコでいっぱいになっている写真をよく見かけます。
北欧の森の夏の恵みがベリーで、秋の恵みはキノコ、私も「キノコ狩り」はやってみたいことの一つです。

森と湖に囲まれているフィンランドは、雨の日が増えると一定の湿度が保たれ森では菌糸類、つまりキノコの生育に適している場所が多いので、夏から秋にかけて黄金色に輝く「カンタレリ(アンズ茸)」や高級食材の「ポルチーニ」などが獲れるわけですね!羨ましい!

フィンランドには約5300種類のキノコがあり、そのうち毒キノコは約50種。 死に至る猛毒を持つものは11種類と言われています。その中でもこんな猛毒キノコも実は珍味として食されているんです。


『Korvasieni』

フィンランド語で耳キノコと言われている、和名はシャグマアミガサダケ(名前にクマって入っているくらいだからヤバさがわかる)。みなさんご存じでしょうか?

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私には映画「インディー・ジョーンズ/魔宮の伝説」のあのワンシーンの食べ物にしか見えなーい!(閲覧注意:該当部分は最後のシーン)

この猛毒キノコ、マーケットでは触るな危険!と書かれて売られていたりします。

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■毒性:採取したものをそのまま食べれば、食後7-10時間を経て、吐き気・嘔吐・激しい下痢と腹痛、痙攣などを起こす。重症の場合には肝障害とその結果としての黄疸・発熱・めまい・血圧降下などが現れるとともに、脳浮腫とそれに伴う意識障害ないし昏睡、あるいは腸・腹膜・胸膜・腎臓・胃・十二指腸などの出血をきたし、最悪の場合には2-4日で死に至ることがある
■調理法:キノコを大量の水(キノコ1 に対し水3 の割合)で茹でる。少なくとも5分以上煮沸してから茹で汁を捨て、大量の水でじゅうぶんに煮汁を洗い落としてから、もう一度5分以上茹でる。
煮沸作業中(あるいは乾燥中)は、作業する空間をじゅうぶんに換気する。煮沸した後の残り汁や、乾燥品をもどしたあとのもどし液は調理に用いてはならない。

非常にヤバいきのこだということがよーくわかりました。
茹でこぼす際に猛毒ガスが発生するので、処理は野外で行った方がどうやら安全のようです。


そんないわくつきのキノコなんですが、以前フィンランド旅行に行った会社の方に「料理好きなYUKIさんに、スペシャルなお土産です!」といただいていていたんです。なかなかないフィンランドのおもしろ土産として、これを選ぶセンス嫌いじゃないぞ!と、知らないものを教えていただいて、むしろありがたかったんですが、まだ怖くて開けられずに数年眠らせていたのです。

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今回は勇気を出して、この猛毒キノコを対峙する!と題して

「もしかしたらこの世からいなくなるかもしれないけど、それでもいいさ、フィンランドの秋をいただきまーす!!!」

恐る恐る開けてみるとこんな感じの水煮が入ってます。きくらげっぽい。

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意を決して、まずはその水煮をほんの少しだけそのまま口に入れてみました。食感ぷにぷにっとして、歯ごたえはよく火の通った柔らかめのきくらげに似た感じです。水煮は塩が入っているので少し塩気は感じますが、見た目に反してクセもなく、比較的ミルキーなキノコという味でした。
フィンランドでは、このコルヴァシエニをスープにしたり、タルトや、クリームソースにして食べるようです。

食材のお取り寄せ


コルヴァシエニ料理を作るにあたってお取り寄せしたのがカンタレリと、トナカイ!と言いたいところですが、国内でトナカイの肉は北海道産のポロソーセージしかないようなので、エゾ鹿ロースにしました。
フィンランドで食べたことがあるトナカイのミートボールや煮込みも、脂肪分が少ない赤身で女性に嬉しいお肉。トナカイに近い鹿肉はジビエ好きの私でも、さすがに初めて扱う食材になります。

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ヨーロッパの食材を幅広く扱っている東京468食材さんからお寄り寄せ。

鹿肉は塩コショウして少しおいてから、フライパンに多めのオリーブオイルをひいて中火で10分ほど全面をじっくり焼きます。脂身がカリッと焼けたらアルミホイルに包んで、30分ほど余熱でそのままにしておくと中まで火が通ります。意外と簡単です。

ソースは何が合うかな?と悩みましたが、くせのない赤身肉なので、少しパンチの効いたものが合うんでない?と、お肉を取り出したあとの肉汁と脂の旨味が残っているフライパンにニンニクのみじん切りとカンタレリを放り込み、サワークリームで煮立たせてゲランドの塩で味を調えてできあがり!

肝心のコルヴァシエニは、細かく刻んでノーマルにあっさり目のクリームスープにしました。(カンタレリも入れたのでコルヴァシエニは少しだけ・・・浮いてる黒い部分)

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秋の美味しい森のプレートの出来上がり~

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お味はいかに?

まずはスープから。優しいミルクの甘みと共にカンタレリとコルヴァシエニの少し香ばしい風味が喉を通ります。それぞれの食感も楽しみながら、あれ?何か覚えのある食感と思ったら、コルヴァシエニは鮑っぽいかも…!?
お次に北海道の野山を駆け回った蝦夷鹿を実食。獣の臭みが全くなく、牛の赤身と言われても判別できないくらい上質で、カンタレリのサワークリームソースと絡んでガツンとガーリックが利く~。このソースにして正解!やっぱりジビエ最高~♪ いつかフィンランドでトナカイのソテーも作ってみたいぞ!

と、数日前に作ったこの猛毒珍味、激しい嘔吐や痙攣を起こすことなく、私は無事このnoteを書いています。缶詰のキノコはもちろんきちんと処理されたものでしたけど、日本だとフグみたいに毒抜きしてまで最初に食べてみようと思った人は、飽くなき探求心の持ち主だと称えたいです。
このコルヴァシエニは、国内でも春頃になると探せば見つかるようですが、処理してまでも食べるチャレンジャーな人いるのか?

秋の恵みとして、北海道の鹿と初めて食べたヨーロッパとフィンランドのキノコ。どの食材も人の手間がかかっているものだからこそ余計美味しく感じられて尊い。私の舌の冒険レベルがまた一つ上がりました⤴。

Kiitos ruoasta.

お次はマイキにフィンランドのキノコ狩りについてパスを回しま~す!

#フードエッセイ #キノコ料理 #フィンランド #秋の恵み #ジビエ #カンタレリ #Finland #食で冒険 #毒キノコ #フードエッセイ


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