描写。5月11日(土)
――― シズクは革手袋の指先を口で咥えて外し、その指を掲げて。
エルティールは背中を丸めて腰を落とし、歯をむき出しにして。
ロンズデーは凄惨に頬を吊り上げ、拳を鳴らして。
クラレスはにこやかな笑みを張りつけながら、ステッキで石畳の地面を突いて。
(柳之助『バケモノのきみに告ぐ、』より抜粋。)
1.小説作品の観察
文章の収集をしています。小説のある箇所を気に入ったら、ノートに書き出して文章をコレクションするのです。
その後、じっくりとその箇所を読んでみます。
すると、自分にはない表現があることに気が付く。
そして、自分が表現するとしたらどう書くかを想像します。
僕はこういった行為を「小説を観察する」と言ってます。
2.作品からの抜粋
冒頭に書かれた場面はノーマン・ヘイミッシュという少年と関わる四人の女性たちが、互いを敵視している様子です。
彼女たちは「アンロウ」と呼ばれる者で、異能に目覚めたバケモノとされています。
見た目は人間なのですが、「カルテシウス」という組織からは危険な存在と見られているのです。
3.この文の凄いと思うところ
四人が敵対している様子が詳しく描写されています。
それぞれの武器や戦法が書かれていて、緊迫感が伝わってきませんか?
シーンを分けると、こうなります。
1.シズクは革手袋を外す。
2.シズクは指を掲げる。
3.エルティールは腰を落とす。
4.エルティールは歯をむき出しにする。
5.ロンズデーは頬を吊り上げる。
6.ロンズデーは拳を前に突き出す。
7.クラレスはにこやかな笑みを見せる。
8.クラレスはステッキを石畳の地面に突く。
以上のことをすると、ぼくだったら違った書き方になります。
4.「こわきすすむ」だったら、こう書く
四人は敵対している。
それぞれの持ち味である武器や戦法を、相手に見せようとしているのだ。
こんな感じになります。
具体的に何をしているのかは分かりませんが、非常にすっきりとしている文章だと思います。
これまでの記事でぼくの文体をお見せてしてきましたが、
ぼくの文体は、とても「すっきり」と「さっぱり」としていますね。
具体的ではないので描写はされていないのですが、読んでいてとても清々しい気持ちになります。(作り手としてはですが・・・。)
これが得意技として見てもらえたら、うれしいですけどね。
5.結論
具体的な描写と、さっぱりとした描写をお見せしました。
そんな感じです。
以上、今日の報告でした。
ではまた。