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ステラおばさんじゃねーよっ‼️㉚懐古〜まさかの再会

👆 ステラおばさんじゃねーよっ‼️㉚懐古〜不思議な余韻 は、こちら。


🍪 超・救急車


「…清(さやか)?じゃなかったごめん、知波だったね」

「聖!やっぱり聖。どうして?なんで入院してるの!?」

「まさか、こんなところで再会するとは夢にも思わなかった。顔色良くないけど大丈夫?あたしは軽い肺炎でね、もうすぐ退院するよ」

ほほえむ聖の表情は、明らかに弱々しい。

聖の病状がかんばしくないのは、火を見るより明らかだった。

「退院?そんな具合で退院できると思えない。わたし、これでもこの病院の看護師だよ?」

「ははっあんたにはこんな嘘、通じないか!ちょっと立ち話はキツくて。座ってもいい?」

聖は力なく答え、廊下のベンチに腰を下ろし、知波も隣りに寄り添った。

⭐︎

「あんたから預かってた例のものね、ついこの間、あの子に渡したんだ。色々タイミングが重なってね。だから少しだけ、肩の荷が下りました!」

「今まで本当にごめんなさい、本当に色々ありがとう。それより聖の体調」

遮るように聖は、言葉を続けた。

「あれを受け取った時、ポロポロ泣いてた。あの子の涙…わたし初めて見たな」

知波は聞くに耐えないようで、しかめっ面になり押し黙った。

聖は少し声を張って沈黙を破った。

「わたしね、スキルス性大腸癌なんだって」

「え!?嘘」

「だから持ってあと3ヶ月ぐらいみたいね」

聖は他人事のように、あっけらかんと言った。

それを聞いた知波は、聖へかける言葉が何も出てこなくなった。

「あーあ、やっぱり天罰だ。人生って、ちゃーんと帳尻が合うようにできてるもんなんだねぇ」

そして知波をじっと見つめて言った。

「多分あの子、あんたを探すと思う」

「探す?わたしを?なんで」

「あんたが産んだ子なんだからわかるでしょ?」

わたしが育てた子だからわかるんだよ、と聖は心の中で呟いた。

「さてと、短い余生を楽しみますか!」

聖は長時間ベッドから離れたせいで身体が辛くなり、ふぅと大きく息をついてからゆっくり立ち上がった。

うなだれて座ったままの知波の膝の上に、ポタポタと涙が落ちた。

それを横目に聖は病室に向かって独り、一歩一歩、点滴台とともに歩き出した。

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