ステラおばさんじゃねーよっ‼️85.情念〜人魚の慟哭(どうこく)① 意識の海
👆ステラおばさんじゃねーよっ‼️84.海洋散骨旅〜それぞれの旅立ち② お祖父(じい)ちゃんは、こちら。
🍪 超・救急車
ーーー予想だにしなかった、祖父・【夏男】との鳥海島での遭遇。
さらに夏男や季(とき)から聞く、【人魚伝説】の真相。
そして伝説の発端となる事件に、カイワレの【肉親】らが大いに絡んでいたという事実。ーーー
なにかに導かれ、ふたりがあの島を目指したのは間違いない。
きっと悠一朗や喜久榮の情念に、呼ばれたのかもしれない。
カイワレはふと、そんな気になる。
船は北へ走り、鳥海島は視界からとっくに消えてしまった。
ふたりがあの島から離れれば離れる程、得体の知れぬ奇声がふたりを追いかけ襲ってきた。
…ギィャウェーム!
ギィャ、ウェーム!!…
その奇声は、ひどい耳鳴りと激しい頭痛でふたりを苦しめた。
その波形はとてもいびつで、哀しみと憎しみの匂いを漂わせていた。
⭐︎
得体の知れぬ奇声は、何かの生命体であるに違いなかった。
だが奇声による耳鳴りと頭痛で、ふたりはそれを特定する余裕などなかった。
いつの間にふたりの心は拿捕されて、奇声を発する生命体が支配する意識の海に沈められた。
一気に沈められていくふたつの心は、頭上にてらてらと揺れる海面へ浮揚しなきゃと足掻いてみても海面からはどんどん遠くなり、光がだんだん薄れていく。
じたばたせずにこのまま底まで堕ちた方が楽だ。
この船のエンジンが停まるまで、身をちいさくしふたりはやり過ごすしかなかった。
意識朦朧のなか、カイワレと知波は自然と手をつないだ。
手をつなぐと意識の海でつながっているせいか、ふたりは以心伝心の状態だった。
カイワレは意識の海の中で、
もしやあの奇声って、人魚の慟哭(どうこく)?!
俺らを哭いて引き止めようとしてるんじゃ…。
と知波に問うた。
知波は応える。
人魚の慟哭を耳にした者は生気を吸われ絶命するって、夏男さんは言ってた。
生気はぎりぎりまでなら奪われても仕方ないけど、生命(いのち)だけは奪わないで…。
ぐったりと座席に身を投げ出すふたりは、悠一朗と喜久榮を想った。
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