ステラおばさんじゃねーよっ‼️59.父の遺骨
👆ステラおばさんじゃねーよっ‼️58.桜の樹の下には〜白骨 は、こちら。
🍪 超・救急車
父との最初の出逢いが、骨になった姿でだなんて思いもしなかった。
元々家族なんていないと言われ、ずっと生きてきたんだから父への思い入れなんてあるはずがない。
けれどなぜか今、父の遺骨かも知れぬ骨を俺はしっかり握りしめ、離さないでいる。
なあ聖先生、あなたは一体俺に何がしたいんだ?!
あなたは当時若く、気が動転してたから父の胸に刺さる包丁を引き抜いてしまった、と言う。
じゃあどうしてすぐに、警察に届け出なかった?
何でひとりで、背負い込もうとしたんだよ!
もうわからなさすぎだよ、聖…伯母さん!!
白骨を固く握りしめ、怒りに打ちひしがれるカイワレ。
それから、得体の知れぬ悲しみがどっと押し寄せてきた。
やはり小鳥遊さん、いや俺の実母にも、あの事件の顛末を語ってもらわないと…。
そう思うと勢いまかせで、カイワレは左手に父の遺骨を握りしめながら右手で文字を打ち、知波へメールを送った。
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@china-ayu-applepie
ご無沙汰しています
元旦に小鳥遊さんが寝込んでいた時歩ちゃんにおせちを届けに自宅へお邪魔しました
連絡が遅くなり申し訳ありません
ところで河愛 聖さんとは姉妹ですよね
彼女の御通夜に来られてすぐに帰られたと受付していた友人らに聞いています
またわたしが捨てられた3歳の頃にあった事件についてもお聞きしたいです
どうか連絡お待ちしています
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知波は、病棟の休憩室にいた。
体調は、仕事復帰してからも良くなる兆しがない。
あのカイワレが、自分が捨てた息子だと思うと立っているのも苦しい。
眠りも浅く、連日さまざまな夢を見ては日記に書き残すが、カイワレにそれを渡す気力と胆力が湧かない。
ふと、聖の言葉が脳裏をよぎる。
「あーあ、やっぱり天罰だ。人生って、ちゃーんと帳尻が合うようにできてるもんなんだねぇ」
薄々いや本当は勘づいてたけど、聖が言った通りね。
あんなにカイワレを求め、自らを売り込み、遭おうとした自分はまるで道化師ねと、うつむき唇を噛んだ。
【@kaichanさんよりメッセージがあります】
机で揺れるスマホに、通知が浮かんだ。
知波はスマホを両手で押さえ、何も見てない見てない、と自己暗示をかけた。
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「カイワレさん…集めた骨は警察に預けて、真相を待ちましょう。わたしたちが今出来る事は、それしかないのです」
ひかりは冷静にカイワレへ諭すように告げた。
「カイワレさんの指紋は、地権者のものだとうちの弁護士には伝えています。なので警察には捕まりませんが、何らかの事情聴取は受けると思われます。その際は、うちの顧問弁護士にも同席させますからご安心ください。とにかく今はその骨を我慢していただけますか?」
顔も身体も泥まみれになったカイワレは、原始人にしか見えなかった。
カイワレは茫然となりながらも小さくうなずき、かき集めた骨をふたたび穴の中へひとずつ丁寧に戻し始めた。
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泥まみれのカイワレは、しらゆり園でシャワーを借りた。
着替えの服は、園から近い洋服チェーン店で用意し、カイワレへと届けさせた。
ひかりはカイワレの人生が途轍もない、大きな渦の中にあるような気がしてならなかった。
当初、婚約者ポーちゃんの家族という事で協力の手を差し伸べたが、果たしてこの家族問題は解決に向かっているのだろうか。
首を横に振り、ひかりはネガティブ思考に陥る自分を恥じた。
たいしろうさんも、必死に今の状況と向き合い、闘っている。
今は何でも出来る限りの事をやるしかない、ウタの唯一の家族なんだから。
そう思い直し、自らに再確認した。
そしてひかりは誰もいない園の食堂で、中断されるであろう工事の日程調整をするよう、現場監督へ指示の電話をかけたのだった。
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