徒然物語80 現金主義
大規模な通信障害が発生したらしい。
おかげで電子マネーに紐づいた決済ができないらしく、多くの人が改札前で立ち往生している。
キャッシュレス化の弊害が最も顕著に表れている風景に感じられた。
ふっふっふ…
何を隠そう、私は現金主義、切符派なのだ!
だから、通信障害なんて無縁なのさ!
おまけに帰りの切符もすでに購入済みだから、あの無駄に並んでいる切符売り場に並ぶ必要もないね!
文明の利器におぼれた皆さん、さようなら~
男はそう、心の中で叫び、切符を改札機に入れ華麗に構内に入っていく。
…かに思われた。
ボグッ
「うぐっ…」
太もも付近に鈍い痛みを感じて、思わず悶絶する。
どうやら、改札バーが開かなかったようだ。
「くっなんで…」
太ももをさすりながら、周囲を見渡す。
「お兄さん、すみません。自動改札機、故障中なんです~」
駅員さんが申し訳なさそうに、小走りで近づいてきて、そう言った。
「あっそうなんですね~すみません…」
先ほどの優越感はどこへやら。
周囲の目を気にしつつ、駅員さんの待つ窓口へ急ぐ。
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