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総合失調症

母の病気である。
5年ほど前に一度かかり、病院や施設に入り大変な思いをした。
父は懸命に母と向き合い、一時は母はまともな状態に戻った。
介護度5から1まで回復したのだから、普通の生活があと一歩というところだったのだ。
しかし、施設内の人間関係からか、ものの1ヶ月でまともな状態でなくなった。
 母は携帯を持っている。
施設の中から、父や私にひっきりなしにかけてくる。
時間など気にしない。
まともな頃はコミュニケーションツールとして施設も承諾していてくれたが、最近の使用をみると取り上げられるのも時間の問題か。

心の病はどうする事もできない。
いくら「言ってることがおかしいよ」と言っても取り合ってくれないから。
感情が無くなってくる。そのうち父や私の顔もわからなくなるのだろう。

私は数年前に母が総合失調症にかかり、私を認識しなくなった時、冷静に考えて母は亡くなったと頭を変換していた。
自分の息子に対し、ありもしない戯言を叫び、罵声をあげる母は私の知るクレバーな母では無かった。
悲しみも起きる間も無く、私は父を心配した。
健常者が引っ張られてはいけないと思ったのだ。

私も父も今の母からすると、最低最悪の人間なんだそうだ。ありもしない女や隠し子がいて、絶対許さないと叫んでいる。
父も私もそんな荒唐無稽な話はどこかのテレビ番組を見て混濁しているのだと、母に言っても取り合わない。果ては、裏切られたと電話口で泣き出す始末。

今は手もつけられない。

父と私は母の総合失調症という敵と再び戦いはじめてしまった。

父は86、母は84。
父には穏やかな生活をして欲しい。
母は落ち着くまで施設から病院に移されるだろう。

歳を取り、最期が近づく人間に穏やか時間を神様は与えて欲しいものだ。

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