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幼児教育≠早期教育

 便利な世の中になったもので、#ハッシュタグを付けると、より検索にヒットしやすくなって、より見知ってもらえるのだそうです。
 先ほど、初めての記事をこのnoteで投稿した際も、「#幼児教育」というハッシュタグを付けることができました。

 ところで、noteのサイト上で、この「#幼児教育」で検索かけた記事を読んでみると、「幼児教育」をいわゆる「早期教育(就学前の段階で、例えば漢字や四則演算を教える教育)」と勘違いした内容が散見されます。
 この手の勘違いは、保育士さんにされることがあります。10年ほど前、「認定こども園」の創設が話題になっていた当時の研修で、保育所に「幼児教育」の機能をもたせたものが「認定こども園」という説明に、会場の保育士さんが懸念を示されるのです。どうも、「幼児教育」=「早期教育」と勘違いされている方が多かったようで、私が下記の説明をすると納得しておられました。同様の勘違いは、2018年に『保育所保育指針』が改定され、幼稚園での「幼児教育」に足並みを揃えることになったときにも起きていました。

「幼児教育」とは?

 『保育用語辞典』では、「幼児教育」とは、幼児を対象とする教育のこと」と説明されています。

「幼児教育」
 幼児を対象とする教育のこと。幼児とは広義には出生から小学校就学までの乳幼児すべてを意味するが、厳密には乳児を除いた1歳以降就学までの幼児を指す。したがって、幼児教育という用語は、教育の対象に即して教育の態様を規定したことばであり、内容的には就学前教育と一致する。就学前教育は教育の時期に重点を置いて、幼児教育は教育の対象に重点を置いてそれぞれ規定した言葉である。

『保育用語辞典 第5版』2009年

 ところで、「初等教育」と言うと、日本では一般的に小学校で行われている教育のことを指します。「中等教育」であれば中学校、「高等教育」あれば高校となります。
 では、幼児を対象とした教育を行うところはどこでしょう?
 同じ「学校」という括りで考えると、それは「幼稚園」ということになります(「幼稚園」は法に定める「学校」です)。
 つまり、「幼稚園(最近では保育所、認定こども園も含む)で行われている教育」が「幼児教育」ということになります。

幼児教育の基本、についてのお話

 では、幼稚園ではどのような教育を行っているのでしょうか?
 実は、幼稚園では「遊び」を通して教育を行っています。決して、漢字や四則演算といった小学校の内容を先取りする早期教育は行っていません。
 上述のように、幼稚園は「学校教育法」に定める「学校」です(ちなみに保育所は「児童福祉施設」)。なので、そこで行われる活動は、小学校や中学校等と同じように、「教育活動」という位置付けです。小学校や中学校等が教科学習を通して教育活動を行っているのに対して、幼稚園では遊びを通して教育活動を行っています。
 
では、ここで言う「遊び」とは何でしょうか?
 『幼稚園教育要領』という幼稚園教育の基本が定められている法律によると、「遊びとは、幼児の自発的な活動である」と定義されています。

『幼稚園教育要領』の解説書。幼稚園の先生たちは、穴が開くほどこれを読んでいます。

 つまり、幼稚園では、子供たちが自分たちで行ったことを通して、教育活動を行っているわけです。
 とは言え、いろいろなことを体験して、こんな風に育ってほしい、と計画していても、自然発生的にそのような(自発的な)活動が生まれるとは限りません。そこで、先生の出番がやってきます。
 例えば先生は、教室の前に水を撒いて、水たまりを作ります。こうしておくと子供たちは、「今から泥遊びをして遊びましょうね」なんて言わなくても、自分から泥遊びを始めます(この水を撒くことを、専門用語で「環境構成」と言います)。
 或いは、「明日はこいのぼりを作るよ」と言って見通しをもたせたり、先生自身がモデルになったりすると、子供たちは「自分もやってみたい!」と思い、自発的に取り組みます。遊具や道具の正しい使い方を教えることや、幼稚園生活での約束ごとを伝えていくことも、自分で生活を送っていくことに繋がります。
 そんな訳で、幼稚園に入園してきた子供たちは、遊びを通して様々なことを学んでいきます。特に最初の2週間は、4歳児の場合、幼稚園生活での約束ごとや、遊具や道具の正しい使い方を学びます。園内探検をしながら、固定遊具の使い方や、入ってはいけないところを知ったり、ハサミ・のり・クレパス・粘土で遊びながら、正しい持ち方や扱い方を教わったりします。
 このようなことを最初に学んでおくことで、子供たちは幼稚園内の施設や遊具や道具などを使って、どんどん自分たちで遊ぶようになります。そしてそこから、また新たな体験や学びが生まれていきます。

 幼児教育が特徴的なのは、このような学びが子供たちにとって無意識のうちに行われているところです。
 子供たちは、「今日は正しいハサミの使い方を身に付けるぞ」と思って遊んでいるわけではありません。ハサミで短冊状の折り紙を切って遊んでいたら、ハサミの1回切りができるようになっていた、という感じです。

 個人的には、そんな「無意識に働きかける教育」にやりがいと面白さを感じています(^_^;)
 子供たちは幼児教育を受けて、主に非認知能力(意欲、発想力、社会性など数値化できない能力)を育んでいきます。そのために我々教師は様々な仕掛けや働き掛けを行っていくのですが・・・それはまた今度、紹介できればと思います。

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