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短編『お散歩』

「ジン、お散歩行こうか」

 ポメラニアンのジンは、狂喜乱舞で僕の周りをぐるぐる回る。 

「ジンはお散歩が大好きだな」

 僕も思わず笑顔になる。ジンは、早く早くと、落ち着かない。首輪にリードを取り付ける。

「カチッ」

 しっかり固定されているのを確認する。一度、首輪にリードがしっかり付いておらず、ジンが大逃走する事件があった。なので、今日もしっかり確認。うん、大丈夫だ。

 ジンは彼女の実家で飼われている犬だ。最初の頃は僕が顔を見せるだけで、ずっと吠えっぱなしだった。彼女の両親の提案で、ジンと仲良くなるために、散歩好きのジンと散歩することになった。

 ジンと僕の距離は、あっという間に縮まった。今では本当に仲のいい友達のような関係だ。散歩途中でも、僕のリードの動かし方一つで、僕がジンにどっちに行って欲しいか伝わるようになった。

 そんなジンとも、友達から家族になる時がきた。僕が彼女の実家に婿養子に入ることになったのだ。

「ジン、これからよろしくな」

 ジンは、嬉しそうに尻尾を振りながら、僕の腕の中に飛び込んできた。そして、微笑みながら僕とジンを眺めている彼女と彼女の両親に、僕は姿勢を正して言った。

「これから、みんなを幸せにするために、一生懸命、頑張ります」

 みんなが、うんうんと頷いた。

「カチッ」

 ん?なんだか音がしたな。それに、なんだろう。首の周りが、なんだか、窮屈に感じる。

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