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今でも思い出す、傘をさした紳士の話

主張しない善意の話。

これはもう10年以上前。京都に観光に行ったときのこと。

バス停でバスを待つために友人と2人で並んでいたのですが、ポツポツと雨が降ってきました。

その時は確か11月。肌寒くなってきたその日、観光で傘も持って行っていなかったので、バスが来るまで雨に打たれる状況に。
天気予報はいつもどこにいてもあまり見ないので、洗濯物を外に干して失敗したことは数しれず。そういう人間だから雨にもよく打たれる。


それなのに、なぜかあまり濡れない。雨は確かに降っているのに。

後ろに並んでいた見ず知らずのおじさんが、傘を私たちの方に少しずらしてさしてくれていたのです。

自然すぎるその善意に、私たちのためにずらしてくれていたのか、たまたまそうなったのかすら分からずお礼を言えませんでした。
もちろん、おじさんから声をかけられることもなく。

10年以上経った今でもそのおじさんのことを思い出します。


仕事をしていても、上司にアピール上手な方が出世が早いと言われたことがあります。

声がでかい人の主張が通る世の中です。

私はそういったアピールがとても苦手です。

そういえば中学生の時の担任の先生に「きゅうさんは誰が見てるとか見てないとか関係なく、掃除なども手を抜かず真面目にやれる」と何かのタイミングで言ってもらえたことがありました。

評価されるためにしか動かない人になれない不器用さは昔から持っているようです。


私はこのおじさんのように気づかれないほどそっと優しさを捧げることができる、そんな人になれるだろうか。


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